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ワンダー7  作者: 二月三月
近接宇宙への挑戦

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再びセルレスへ(2)

 

「サイユル―ベルガー星系から繋がっている胞宇宙(セルベル)で確認されているものはダーだけです」

「選択の余地は無いってこと?」

「どこに繋がっているかわからない道はあるようですが、行き先がわかっているものはダーだけです」

 タケルヒノの問いに、サイカーラクラは非常にもってまわった言いかたをした。

「そのダーってので、都合の悪いことでもあるのか?」

「別に、都合が悪い、わけじゃないが…」

 ジムドナルドが口を挟んできたが、それに対するタケルヒノも歯切れが悪い。

「何かあるんだろ、そのダーって星に」当然のようにジムドナルドが突っ込む「とっとと吐け。内緒事とか体に悪いぞ」

「第2類量子コンピュータがある」

「第2類? 何だ? そりゃ?」

 ジムドナルドも量子コンピュータぐらいは知っているらしい。第2類で引っかかったようだ。

「第1類は普通に地球で量子コンピュータと呼んでいるやつだ。量子論理で解を収束させるが、基本的には自然数と同じ連続体密度をもつ集合しか扱えない。具体的には、情報キューブとケミコさんの情報核(リーンファニム)が第1類だ。簡単に言うと、超高性能コンピュータだと思ってもらえばいい」

「じゃあ、第2類は、もっと高性能なコンピュータなのか?」

「それでいいような、そうでもないような」ジルフーコもまた、あやふやな言い回しを使う「第2類は実数と同じ連続体密度を扱う。アナログ量子コンピュータとでも言うようなものなので、まったく違うんだ」

「アナログ? デジタルのほうが高性能なんじゃないのか?」

 割って入ったというのに、ここでジルフーコが説明を嫌がる。また、僕か、と嘆き節を入れながら、タケルヒノが説明しだした。

「アナログはアナログなんだが構成の仕方が、たぶん、君の想像しているものと違うんだ。ひどく大雑把な言い方をすると、第2類量子コンピュータは、過去も未来も含めた存在するすべての第1類量子コンピュータを繋いだものだ、というのがいちばん近い」

「コンピュータ全部のコンピュータなのか?」

「そうだ」

「じゃあ、第2類コンピュータ自身はどうなる。何に含まれるんだ?」

「当然、定義から言って、自分自身に含まれる。自分を含む自分を含む自分…、無限連鎖だ」

「俺のいちばん苦手な話しじゃないか」

「ついでに言うと、第2類量子コンピュータはコピーが作れないし、比較もできない。通常のコンピュータと言われているものとまったく違う。第1類なら自然数と同じ連続体密度だから数学的帰納法を使えば、コピーも比較もできるんだが、第2類は無理だ。逆に言うと、第2類は世界に1つしかないとも言えるし、同時に無限個存在しているとも言える」

「そんなものがあるところに行くのか?」

「だから、できれば後回しにしたかったんだ。どのみち行かなきゃならないとは言え、いきなりは、なんというか…」

「絶対に行かなきゃならないのか?」

「それは、そうだ。絶対に行かなきゃいけない」

「よしわかった」急にジムドナルドの顔から険がぬけた「じゃあ、すぐ行こう。ダーで問題ない」

「何だ? 突然」

 ジムドナルドの変わりようには、タケルヒノでなくても面食らうだろう。

「だって、そうだろう」ジムドナルドは言う「先延ばしにしたって、何かが良くなることはないんだろ?」

「それは、そうだけど…」

「だったら、早いほうがいい。こういうときは、向こうがいろいろ仕掛けてくる前にこっちから行くのが上策だ」

 

「次の胞宇宙(セルベル)には、おっきなコンピュータがあるんだって。ジムドナルドが言ってた」

 イリナイワノフはビュッフェでいちごシェークを飲みながら、ボゥシューに説明した。いちご(丶丶丶)はビルワンジルの朝摘みで、ちゃんとしたいちご(丶丶丶)だ。

「ジムドナルド?」ボゥシューが食べているのは、いちごサンデーで、残念ながらいちご以外は合成だ「胡散臭いな」

「胡散臭くはないんです」サイカーラクラはそのまま練乳をつけて食べている「あ、ジムドナルドではなくて、コンピュータのほうです。第2類量子コンピュータというものらしいです」

「第2類? 何だそりゃ?」

「私もわかりません。タケルヒノは説明してくれましたが、よくわかりませんでした」

「そりゃ、そうだ、タケルヒノに何かを説明されて理解できるなんてのは人間じゃない」

「ジルフーコは、わかってるみたいでしたよ」

「だから、人間じゃないんだろ」

「ジムドナルドは、わかってないみたいでした」

「そもそも、アレは別の意味でおかしい」

「全部のコンピュータ集めたコンピュータって言ってたから、やっぱり、おっきいんじゃないかな」

「全部集めたコンピュータ?」

「そう、タケルヒノもそう言ってました」サイカーラクラはボゥシューを見つめて、言った「ねえ、ボゥシューがタケルヒノに聞いてみてくれませんか? 私とイリナイワノフでは無理みたいです」

「いや、やめとくよ」ボゥシューはサイカーラクラの頼みには応じなかった「ワタシに理解する必要があるんなら、タケルヒノがとうに説明に来てるはずだ。そうじゃないところをみると、ワタシにはたぶん、関係ない話なんだと思う」

 

 

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