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ワンダー7  作者: 二月三月
近接宇宙への挑戦

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からまる紐(4)

 

「あ、ビルワンジル? ちょうど君以外、全員ミーティングルームにいるんで、ちょっと話があるから来てもらえないかな? うん、出発のこととか…、そう…、じゃあ、待ってるんでよろしく」

「ビルワンジル来るって?」ジルフーコが聞いてきた「ビュッフェの女の子たちとヒューリューリーに声かけて来たよ。すぐ来るってさ」

「ありがとう」タケルヒノが答えた「ビルワンジルは農場(ファームゾーン)だから着くまで少しかかるって、彼が来たら始めよう」

「アレは寝てるけどいいの?」

 ジルフーコがミーティングルームのすみのソファで寝息をたてているジムドナルドを指して言う。

「みんな来たら起こすよ」タケルヒノは言った「別に寝たままでもいいけど」

 

「ベルガー、サイユルでやることも一段落ついたので」ビルワンジルが席についたところでタケルヒノが話しだした「今後のことについて、話し合っておいたほうが良いと思うんだが」

「ベルガー、サイユルの軌道を離れるのはいつだ?」

 ボゥシューが聞いてきた。

「この話し合いがすんだらすぐを考えてる。みんなが納得してくれればだけど」

「ヒューヒューは、サイユル行かなくていいの?」

 イリナイワノフの問いに、ヒューリューリーは大きく体を振って答えた。

「することが、ありませんので、行きません」

「なら、いいけど」

胞障壁(セルレス)に行く前に補給したい」ジルフーコが言った「ひとまわり外側の軌道に適当な惑星がある。そこで資源補給して、ケミコさんの補充を完了させたいな」

「どんな星だ?」ボゥシューが口をはさむ。

「太陽系で言うと火星に似てるな。希薄な大気があって、軽元素、重元素どちらの補給も可能で…」

「あ、ごめん」コンソールを横目で見ながら会議に参加していたタケルヒノが、突然叫んだ「僕が頼んで集まってもらったのに申し訳ないんだが、優先事項発生」

 壁スクリーンが船外映像に切り替わる。

「ロケットですか?」

 サイカーラクラがスクリーンを見つめて言った。

「そうみたいだね」タケルヒノが言いながらコンソールを操作する「昨日からサイユルからの呼びかけが、ぱったりやんだので怪しいなとは思ってたんだが」

「私の乗ってきたのとは型が違いますね」ヒューリューリーが体を回す「機体については説明も何もなしで乗せられたのでよくわかりませんけど」

「向こうから何か言ってきてるのか?」

 ジムドナルドがタケルヒノのコンソールに首を突っ込んできた。

「わからないな。プラズマシールド張ったから」

「シールド張った?」

「何か遠ざかって行きますけど」

 サイカーラクラの言うとおり、画面のロケットはわずかながら小さくなっていく。

「違うな」ジルフーコが言う「向こうは軌道に入ってきてるんだけど、こっちが軌道から外れてる。遠ざかってるのは、こっち」

「何故、軌道離脱したんだ?」

 ボゥシューの問いにジルフーコは首を振って答えた。

「知らないよ。操縦してるのはタケルヒノだから、タケルヒノに聞いて」

 自分に向けられたボゥシューの視線に、タケルヒノはスクリーンを指して答えた。

「答えは、あれ」

 スクリーン中央に拡大されたロケットは、突如、先端が膨らんだと見るや、閃光を放って四散した。

「何だ、あれ?」

「自爆?」

「サイユルとしては、攻撃のつもりかと思いますが」ヒューリューリーは体を振って話すが、あまり勢いがなかった「自分の星のことですが、愚かだと思います」

 皆、タケルヒノを向いて、彼の説明を待っていた。

「そんな顔されても、サイユルが何考えてるかなんて僕にもわからないよ」

 すでに遠ざかりつつあるサイユル、そしてベルガーを見つめながら、タケルヒノは言った。

「わかるのは、あれがサイユルの精一杯ってことだ。他に何もできないから、やってみたってところなのかな」

「養育プログラムの連中は大丈夫そうだな」

 ジムドナルドがぼそりと呟き、ヒューリューリーが軽く応じた。

「どういうこと?」イリナイワノフが尋ねた。

「彼らなら、もう少しマシなことができるんだ」タケルヒノが代わりに答えた「降ろしたケミコさんの損害がゼロなのは確認している。政府側から仕掛けた形跡があるが、小競り合いすら起こせてないんだろう。脅しもきかなければ、協力も得られない。サイユルの技術中核を担っているのは養育プログラムを受けた者だけだが、サイユルの政治中枢は、彼らに、もう言うことをきかせることができないんだ」

「サイユルは変わっていくのか?」

「わからない」

 ボゥシューの問いに、タケルヒノはヒューリューリーを見て、答えた。

「僕らは行きずりで、サイユルにもベルガーにもちょっかいを出した。それが良いことか悪いことかはわからない。でも、これからもこんな風にしていくんだと思うよ」

 

 

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