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ワンダー7  作者: 二月三月
近接宇宙への挑戦

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もつれない紐(5)

 

 イリナイワノフとサイカーラクラが連れ立ってタケルヒノのところにやってきた。

「どうかした?」

 なかなか2人が切り出さないので、タケルヒノのほうから声をかけたのだが、それでも2人はモジモジしている。やっと諦めたイリナイワノフが先に口を開いた。

「あのね、ヒューヒューのことなんだけど」

 もう定着しちゃったのか、少し気の毒だな、とタケルヒノは思った。

「なんとかならないでしょうか?」

 これは、サイカーラクラである。こんな頼み方でなんとかしてくれと言うのはどうかと思う。

「サイユルのことなら、考えていることがあるから…、いますぐに、ってわけじゃないけど…」

 イリナイワノフとサイカーラクラの顔がみるみる明るくなって、やったね、と言い合って、手をつなぐとタケルヒノに背中を向けた。

「おい、ちょっと待ってよ。何するかは聞かなくていいのか?」

 え? と2人は同時に振り向いて戸惑いの表情を見せた。

「だって、聞いたってよくわかんないし」

「何とかしていただけるのなら、それでもういいんです」

 それだけ言うと、絶句するタケルヒノを置き去りにして、ミィーティングルームを後にする2人。

 横でジルフーコがケラケラ笑っている。

「約束しちゃったんだから、なんとかしてね」

 ジルフーコの言葉に、タケルヒノは憮然として返事をしなかった。

 

「あなたもベルガーに降りたいって?」

「はい」ヒューリューリーは壮大に体をくねらせて返事した「ご迷惑かとは思いますが、ぜひ」

「何でまた?」

「他の星に行ってみたいのです」

 あまりにストレートすぎる要求にタケルヒノも腰砕けになってしまった。

「いいですよ」

「いいんですか?」

「ボゥシューの検疫結果次第ですけど、あなたの分は…」

「検疫なら終わったって言ったろ」ボゥシューが横から割り込んだ「めんどくさいから、サイユルとベルガーを一緒にやったんだ。ヒューリューリーがベルガーに降りても問題ない」

 ヒューリューリーは頭部を小さく回している。マイクが拾いきれないらしく、翻訳できないので何を言っているのかわからない。

「検疫に問題ないなら認めます。くれぐれもケガに気をつけて」

「ありがとう」

 ヒューリューリーはそこだけ体を大きく回した。

 

「槍が欲しい?」

「そう」

 ビルワンジルは短く肯定した。

「あれじゃダメなの?」

 ビルワンジルの部屋は、所せましとトレーニングマシンが並んでいるが、一方の壁全部を覆うように、競技用の槍が並べてあるのは、さらに圧巻である。

「あれじゃなくてさ」

 そう言ってビルワンジルはタケルヒノに近づくと耳打ちした。

 え? という顔で思わず声をあげそうになったタケルヒノを制して、しーっ、と人差指を自分の唇に当てるビルワンジル。

「聞いてるかもしれないんだろ? アイツ」

「まあ、その気になれば、どこでも入りこめるからな」

「ちょっと鼻を明かしてやりたいんだ」

「しかし、そんな可能性あるかな?」

「無けりゃ、無いで、こしたことはない。念のためだよ」

「わかった、何とかするよ。ちょっと重くなるけど、いいかい?」

「それぐらいは想定内だ。悪いが、よろしく頼む」

 

「おーい、タケルヒノ」

「お客さん、今日はもう終了です」

「なんだよ~、つれないな~」

 ジムドナルドは無視してタケルヒノの隣に腰掛けた。

「ベルガーにはイリナイワノフを連れてくぞ」

「それはもう、本人に話してある。あとはビルワンジル、ヒューリューリー、ジルフーコだ」

「ジルフーコも行くのか」ジムドナルドは意外だと言わんばかりの顔だ「やっこさん、惑星に降りるのは苦手なのかと思ってたが」

「今回は僕が行けないし、ケミコさんの扱いは彼がいちばん慣れてるから」

「女の子に頼み事されたんだっけ? お前さん、優しいからなあ」

「ボゥシューも宇宙船(ボード)に残すから、1人でも体の異変を感じたら、すぐ帰ってくること。いいか? 君も含めてだぞ」

「感染症の類は自覚症状出たらもうダメだろう?」

「いつまでも地球にいた時の感覚でいちゃだめだろ。脳波さえフラットでなきゃなんとでもなる」

「ほんとかよ?」

「ただ、そのへんは、ボゥシューじゃないとうまくできない。だから彼女は宇宙船(ボード)に残す」

「まあ、そんな危ないマネはしないさ。基本、交渉だけで何とかするつもりだからな。俺の口八丁を信じろ」

「君を信用して良い目見たことなんか、無いんだが…」

「そりゃお前、俺のこと信用したことないからだろ」ジムドナルドは胸を張った「だからさ、いっぺんでいいから信用してみろって、悪いようにはしないから」

 

 


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