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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人
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閉塞空間(1)

 

 重力区画1へはエレベーターでの移動だ。最初、無重状態で乗り込むと、動き出して数秒で床に着地できる。徐々に重力は強くなり約2分30秒で1Gに、そして重力区画に到達する。

 「1キロメートルあるんだよね」

 「そうだね」

 「エレベーター使えなくなったらどうすんだろ」

 「はしごで昇り降りかな」

 「1キロを?」

 「そうなるね」

 「やだな。それ」

 「いちおうエレベーター三台あるみたいだし、同時に壊れないことを祈ろう」

 

 エレベーターを降りると放射状に通路が伸びるフロアだった。

「さて、どっちに行くかな」ジムドナルドが言った「それとも別れて探検するかい?」

「ヘルメットの翻訳機がトランシーバー代わりにはなるけど」とジルフーコ「別れて探索する理由はなにかあるの?」

「いや、ぜんぜん」ジムドナルドが首を振る「おっかないからな、俺、すっごい臆病だからさ。みんなと一緒がいいな、って、そういうこと」

「臆病かどうかはともかく、みんな一緒ってのは賛成」ボゥシューが言う「何が出てくるんだかわからないし、人数減るのは考えものだ」

「じゃ、そういうことで」

 ビルワンジルが先頭で、いちばん近い右の通路にむかって歩き出した。え、そっちなの? とジムドナルドが声を上げたが反対したわけではなさそうだ。列になって進む、いちばん後ろからついていく。

 

 通路の両側は、等間隔でドアが並ぶ、ドアの前を通り過ぎるとそのたびにドアが開く。

「間取りはみんな同じみたいだなぁ」ボゥシューが開いたドアから首を突っ込んで、部屋の中をのぞく「ちょっと入ってみる?」

 部屋にはデスクとコンソールが二組ずつ、ベッドも二つあった。ソファは三つ。

 パーティションの向こう側には、キッチンとテーブルがある。

「水も出るし、お湯もでる、電磁調理器も使えそう」イリナイワノフが嬉しそうに叫んだ。

「シャワーも大丈夫だ」ユニットバスに湯気がたちこめ、ジムドナルドの声がした。

 サイカーラクラがクローゼットを開けると、いま、皆の着ている船内スーツが数着、下の引き出しには下着類が入っている。

「トイレも使える」トイレのドアを開けて、ビルワンジルが出てきた。

 冷蔵庫を開けたタケルヒノは、うーん、と唸って、残念そうに腕組みをする。

「冷蔵庫は空っぽ?」ジルフーコが尋ねた。

「まあ、そう全部はうまくいかないね」食器棚からコップを取り出したタケルヒノはキッチンの蛇口から水を注ぐ。少し匂いをかぐ仕草をしてから、一気に飲み干した。

「だいじょうぶ、なのかい?」

 ジルフーコの問いにタケルヒノは笑って答えた。

「だいじょうぶ、だと思うよ。この程度で問題があるようなら前途はかなり厳しいし、この宇宙船(ふね)もかなり頑張ってるようだから、見通しはまずまずなんじゃないかな」

「あ、あれ、何?」 ボゥシューが叫んで、開いたままの部屋のドアのむこうを指差す。

 廊下を何かが通りすぎていった。

 全員、部屋を出て追いかける。

 

 三輪の自走ボックスは歩くよりも少し速いくらいで廊下を進んでいく。高さはビルワンジルの腰くらいで、左右よりも前後に長い。

 ジムドナルドが自走ボックスの前に出て通せんぼをする。ボックスはぴたりと止まった。

 ジムドナルドが体をよせて道を開けると、また、進みだす。

「意外と賢いなコイツ」

「とりあえず、ついていってみよう」

 自走ボックスは、ゆるゆると進む。エレベーターホールの前を突っ切って、右の通路に入る。突き当りの自動ドアが開いて、自走ボックスが中に入っていく。

 部屋は、さっきの個室よりもかなり大きく、中央にラウンドテーブルと、それを囲んで椅子が十脚置いてあった。

 テーブルのすみに自走ボックスがたどりつくと、ボックスの天板が開き、同時にサイドから二本の折りたたみ式アームが伸びた。アームはボックスの中身を取り出してテーブルに並べていく。

 やがて、配送物をすべてテーブル上に並べ終えたボックスは、アームを収納、天板を閉めて、回れ右をした。

「どうする? 追いかけようか?」

 もときた道を帰っていく自走ボックスを目で追いながら、ジルフーコが聞いた。

「うーん、それもいいけど」タケルヒノはテーブルのほうに歩いて行く「どちらかと言うと、こっちのほうに興味があるな」

 白濁した溶液の入ったカップが三つと、赤白のまだらなブロック状のかたまりがひとつ。

 部屋のすみの食器棚からスプーンを取り出したタケルヒノは、白濁液のほうを少しすくって味見してみる。

「ふーん」

 大きめのシステムキッチンにフライパンをかけ、調理器のスイッチをオンにする。カップをひとつとって、中身をフライパンに薄く引いた。そして赤白ブロックをナイフでスライスする「これはスパムみたいなものかな」

 数分で、パンケーキとスパムソテーができあがった。みんな、かわりばんこに作っては食べ、三カップのケーキ種とスパムは瞬く間になくなってしまった。

「味はともかく、これで当分の衣食住の心配はなくなったみたい」タケルヒノは言って、皆の顔をぐるりと見回した「個室のほうは数が余ってるみたいだから、誰がどの部屋を使うか決めようよ」

 

 

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