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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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セルレス突破(4)

 

「35日間で速度を慣性航行レベルまで落とす。あとは周辺宙域の探索だな。説明終わり」

「それで終わりか?」

 ジルフーコの説明にボゥシューが突っ込んだ。

「終わり、終わり」ジルフーコはヘラヘラしている「光子体(リーニア)以外での初の胞障壁(セルレス)突破なんだから放っておいても誰かが騒ぐ。のんびり行こう」

「いま騒げるのは光子体(リーニア)ぐらいだけど、彼らはそんなに騒いだりしないだろう」

「この間来たうるさいのがいたじゃないか」

「レウインデ?」

「そう、それ」ビルワンジルにとってはレウインデの名前は憶えにくいらしい「また来るって言ってたぞ、アイツ」

「もう来てたけど」

「え?」

胞障壁(セルレス)抜けてすぐはシールド必要なかったんでね」ジルフーコは単なる事後報告といった口調だ「いまはオンにしてるけど、その前に来てるのをケミコさんが目撃してる」

「何しに来たんだよ」

「詳しくはわからないけど、ザワディと遊んでたらしいよ。慣性航行になれば、シールドもまた止めるから、その時はまた来るんじゃないかなぁ」

「そんなんでいいのか?」

「ザワディと遊んじゃダメなの?」

「そういう話をしてるんではない」

「そのへんはまあ、微妙なんだけどさ」タケルヒノが割って入った「情報体(リーンファノア)としても僕らの胞障壁セルレス突破には表立っては否定的な態度は取れない事情があるんだ。僕らが適当に流してれば、あからさまな敵対行動はしてこないよ」

情報体(リーンファノア)なのか?」ボゥシューはあまり納得がいかない「光子体(リーニア)しかみかけないんだが」

「宇宙皇帝陛下が重中性子体(レビファノア)なんだ」ジムドナルドが言った「レウインデの苦労も少しは想像がつく」

「なかなか、やっかいそうだな」

「そうだ、せっかく胞障壁(セルレス)を超えたのにな」タケルヒノは笑った「面倒なことや、やっかいごとは地球にいた時とあまり変わらない」

 イリナイワノフは、ぼんやりと皆の話を聞いていた。情報体(リーンファノア)のことで盛り上がっているみたいだが、あまり話についていける気がしない。ふと傍らを見ると、サイカーラクラが何かやっている。

「何してるの? サイカーラクラ」

 コンソール画面をものすごい勢いで切り替えていくサイカーラクラ、イリナイワノフに止められて、怒るかと思いきや、にこりと微笑んだ。

「いま私たちのいる胞宇宙(セルベル)を調べています。まず主星のスペクトラムから該当する胞宇宙(セルベル)を抽出して…」

 大量の候補列が高速でコンソール内を流れていく。

「さすがにこれでは絞りきれないので、ここから観測可能な惑星のデータで制限します。私たちがいるのは、まだ胞宇宙(セルベル)外縁付近ですから内軌道惑星を正確に観測するのは難しいのですけど、そのへんは少し条件をゆるくして…、あら…」

 サイカーラクラの手が急にとまった。イリナイワノフは心配そうにコンソールとサイカーラクラを交互にみつめる。

「どうしたの? サイカーラクラ」

「いえ、何でもないんですけど」

 サイカーラクラは何度か同じ操作を繰り返したが、そのたびに最終候補は同じ内容で返ってくる。「あの、ジルフーコ」

 サイカーラクラはジルフーコを呼んだ。

「何だい、サイカーラクラ」

「主星惑星軌道1億7000万キロ付近を探索したいのですが、できますか?」

「うーん」ジルフーコは唸ってしまった「150億キロ離れてるからねぇ。観測可能地点まで行くには1ヶ月くらいかかるな。せめてシールド外してる状態ならどうにかなるんだけど。ああ、そうだ。タケルヒノがこの間、エリスの観測に使ったのがあったな。あれ、使える?」

「使えるよ。予備がある」

「でもエリスの観察時の距離は1億キロくらいだったと思うけど?」ボゥシューが疑問を口にした「150億キロは遠すぎないか?」

「いや、確認は簡単なはずなんだ」タケルヒノはすでに観測ポッドを打ち出していた「連星系かどうか確認できればいい。そうだよね? サイカーラクラ」

 スクリーンにかすかに星が映る。

「座標があってるから、まず間違いはないと思うけど、さすがにこの距離だと連星系かどうかの確認はワンショットじゃ難しい。公転周期から考えると最低でも数日間スペクトラム分析が必要かな」

「やっぱり、サイユルとベルガー」サイカーラクラはうっとりとスクリーンを見つめている「私たちの最初の胞宇宙(セルベル)は、あの(丶丶)サイユルとベルガーなんですね」

「知ってるの? サイカーラクラ」

 イリナイワノフが尋ねた。

「情報キューブに載っていますから」スクリーンのにじみほどにしか見えないその星についてサイカーラクラは語る「とても奇妙な争いをずっと続けている双子星なのです」

 

 

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