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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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となりの星(3)

 

 全員が食堂に集まっている。

「今回の火星探索は大成功だったと思うな」まず、ジルフーコが話し始めた「精錬ずみの資材も結構な量が手に入ったし、足りなければケミコさんが集めてくれる。倉庫には生産ユニットが併設されて、ってこっちが本体かな。とにかく、宇宙船(ふね)の建設資材についてはもう心配しなくていいと思う」

「どうやって宇宙船(ふね)まで持ってくるんだ?」

 ビルワンジルが尋ねたが、それは深刻な疑問、という聞き方ではなかった。おそらく、答えはもうわかってるんだろうけど、そんな口調だ。

宇宙船(ふね)までは運ばないよ」

 ジルフーコが言った。タケルヒノを除く五人が、えっ? という顔をしていると、ジルフーコは大型コンソールの画面を切り替えて、火星表面の様子を写しだした。

 数回のズームを繰り返すと、倉庫(丶丶)がコンソールに大写しになる。ジルフーコはカメラの角度を調整して、倉庫のとなりに並ぶ筒状の建造物にフォーカスを合わせた。

「電源を入れてもらったので、いろんな機能が動き出した。これもそのひとつ」

 筒の一本の下部から噴煙が上がり、噴射炎をきらめかせて上昇していく。

「ロケットだ。あれロケットだったんだ」

 イリナイワノフが声をあげた。

「なるほど、これで宇宙船(ふね)まで持ってくるんだ」

「いや、だから、宇宙船(ふね)には運ばないってば」

 ジルフーコはビルワンジルの言葉を否定し、コンソール画面を切り替える。

 画面中央に、いびつな岩の塊が写る、岩の表面にはクレーターらしきものが二つ。

「ダイモスだー」

 ボゥシューが叫ぶ。よくこれだけでわかるな、ジルフーコは、ある意味、感心してしまう。

「ダイモスだ。今度こそ、ワタシが行くぞ。ダイモスだ。無重力だからな、宇宙遊泳経験のあるワタシが行くべき」

「じゃ、俺もー」

「オマエはダメだ」

 ボゥシューは即座にジムドナルドを却下した。

「なんでだよー、俺もちゃんと宇宙遊泳したじゃん」

「宇宙遊泳じゃないだろ。オマエのは宇宙漂流だ。タケルヒノに助けてもらったの忘れたのか」

「無事生還したんだから問題はない」

「問題ありすぎだろ、とにかくオマエだけはダメだ」

「あー、もう、いいよ」タケルヒノが笑いながら二人をおさめた「みんなで、行こう、大丈夫だから」

「大丈夫って、なんだ? それに、みんな?」

 とまどうボゥシューに、行けばわかるよ、とタケルヒノとジルフーコが異口同音に答えた。

 

 ダイモスは火星の二つの月のうち小さい方だ。大きいフォボスのほうが火星に近くて、ダイモスのほうが遠い。

 コンソールに写るダイモスはぐんぐん近づいてくる。ダイモスはいびつな星で、長辺でも15キロと小さく、宇宙船(ふね)の7倍程度の大きさしかない。

 ダイモスの地表から数本のアームリフトが伸びている。宇宙船(ふね)はアームの中心に向かって進み、横づけして中央部だけが固定された。

「いったいどういうことなんだ?」

 リフトを伝って宇宙船(ふね)に取り付く、おびただしい数のケミコさんを見ながら、ボゥシューが尋ねた。

「もともと、この宇宙船(ふね)を建造したのは、ここ、ダイモスなんだよ」

 船外映像を止めて、ジルフーコが説明図をコンソールに表示した。

「火星の地上基地で収集精製された資材を、ロケットでダイモスに運んで組み立てたんだ」

 画面上の火星とダイモスが小さくなって、画面のすみに地球が現れる。

「完成した後、地球まで来てボクらを乗せた、と、こういうわけ。管理データを追うと、ダイモスのほうは宇宙船(ふね)が出来てすぐ機能停止したみたいだけど、火星基地のほうは最近まで動いてたみたいだな。で、タケルヒノが操作して両方動き出した、と、こんな感じ」

「外に出ていいか?」

 説明もそこそこに、ボゥシューが聞く、もう我慢できないらしい。

「いいけど」ジルフーコは早口で付け加えた「中央のコンタクトゲートが毎分1回転で回ってるから、はさまれないように気をつけて」

「え? 何?」

「人工重力止めたくないから、宇宙船(ふね)は回転したままなの」走り出して振り返りながら聞いてきたボゥシューに、ジルフーコが返す「ダイモスとの連絡通路は固定されてるから、結合部はすり合わせで回転してる。回転ドアの要領で通り抜けて、くれぐれもはさまれないでよ」

 わかった、と答えたのがボゥシューではなくジムドナルドだったので、タケルヒノは慌てて後を追いかけた。

 


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