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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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となりの星(1)

 

「タケルヒノ、ちょっと」

「ん? どしたの?」

 ジルフーコに呼ばれたタケルヒノは彼のコンソールまで移動する。

「火星地表面のリモートセンシングの結果なんだけど」

「え? でも、これは…」

「うん、ボクも、そう思ってさ、これが無人探査機の送ってきた映像で」

「いや、ちょっと、これ…」

「だろう? どうする? 火星はパスするかい」

「いや、でも、ここ一ヶ所だけだろ?」

「うん、一ヶ所だけ、場所はずせば、安全だとは思うけど…」

「これ、たぶん精錬されてるよなあ。だとしたら、だいぶ手間が省けるけど」

「いいの? かなり危険だと思うけど」

「無人探査機は、ちゃんと動いてるんだよね」

「まあね、あとちょっとでエネルギー切れだと思うけど」

「攻撃はされてない、と」

「なんか行く気まんまんじゃない?」

「だって気になるだろ、普通」

 

「先発隊が三人だけっていうのは、まあわかる」

「そうですか」

「何故、その三人にワタシが入ってないんだ?」

 ボゥシューは怒っている。ボゥシューが怒っていること自体は珍しくないので、その点、サイカーラクラはあまり気にはしていなかった。気になるのは、なぜ私に? ということぐらいだ。

「ボゥシューが火星降着の先発メンバーに入ってたら、私ならびっくりします」

 サイカーラクラは、あまり他人の気持ちをおしはかることをしないので、言い方は比較的ストレートだ。

「そうだ、びっくりだ。そんなことがあったら、ワタシだってびっくりだ。タケルヒノの常識を疑うぞ」

 この人、いったい何を言ってるのかなぁ、というのがサイカーラクラの正直な気持ちだ。

「もう、この間、地球に降りたんですから、火星はいいじゃないですか」

「それとこれとは話がぜんぜん違うだろー」

 面倒なので、サイカーラクラはフェースガードを閉めた。ボゥシューはさんざんわめいて、ぷい、と、どこかに行ってしまった。

 イリナイワノフのところには行けないので、行くとすればザワディのところぐらいしかない。

 ザワディかわいそうだな、とサイカーラクラは思った。

 

「なあなあ、なんかあるんだろアソコ」

 ジムドナルドはいつにもまして馴れ馴れしい。

「あるよ」ジルフーコはそっけない「あるから探索しに行くんだよ」

「面白そうだよなぁ、ぜったい、おもしろい。俺も行きたいなぁ」

「そりゃあ、そうだろうね」

「ジルフーコは行きたくない?」

「行きたいよ。でも、後で行くから、今回はいいよ」

「後で、とか、そういうつまんないこと言うなよ、ジルフーコ」

「ジムドナルド、キミは、おもしろい、つまらない、以外の判断基準ってないの?」

「ないよ」

 あまりに即答な上に、この時のジムドナルドは真顔そのものだった。

「キミが行くと、面白くなりすぎるから」ジルフーコが言った「今回は我慢しな」

 おぅ、とかなんとか叫んで、ジムドナルドはどこかに行ってしまった。

 

「わあ、ありがとう」

 イリナイワノフはテーブルの上の銃と実包に感激の声をあげた。

「ボルトアクションのカービン銃ってリクエストだったから。ボク、銃はあまりくわしくないので、Kar98kってやつをコピーしたんだ。銃床は木ってわけにはいかないから、プラスチックなんで、感触とかは違うかもしれない」

 ジルフーコの説明を聞きながら、イリナイワノフは慣れた手つきで空装填し、スコープに片目をつける。

「すごい、すごい、本物みたい」引き金を引いて確認する「たぶん、これいけそう、ありがとう、ジルフーコ」

「オーダーシステム使ってコピーしただけだから、細かいところは不具合があるかもしれない」

 ジルフーコは、なぜか少し照れくさそうだ。

「ううん、大丈夫」イリナイワノフは銃口の先から銃身をのぞく「ライフルもきちんと切れてるし、仕上げもばっちり、あとは、あたしが調整すれば」

「弾のほうは1000発用意したけど、もっといる?」

 イリナイワノフは首をふった。

「十分だよ。調整には200発もあれば十分だし、それに、これ全部使うような目には、あんまりあいたくない」

 

「そういうわけなんで、よろしく頼む」

「まかせとけ」

 タケルヒノに説明を受けたビルワンジルは、大きく胸を張った。

「いやあ、こんなに早く出番が来るとは思わなかったから、正直、とてもうれしいよ」

「出番、って何?」

 訝しげに尋ねるタケルヒノに、ビルワンジルは笑って答えた。

「だってオレ、体力選考だろ。頭使うほうは全然みんなにかなわないからさ。こういう重労働系の仕事なんて、まだ先のことだと思ってたから」

「いや、そういう意味で、君とイリナイワノフを選んだわけではなくて」

 タケルヒノはどういうわけか落ち込んでいる。

「え? 違うの」

 ビルワンジルの問いに、タケルヒノは肯いて話しだした。

「こう言っちゃなんだけど、ジムドナルドとかボゥシューとか、こういう時に連れていけるわけないじゃないか。ジルフーコとサイカーラクラは、なんていうか、ちょっと得体の知れないところがあるし。できれば僕としては、こういう不測の事態が起こりかねない状況だと、普通の判断力を持っている人と一緒に行動したいんだ」

「あ、ああ」

 ビルワンジルは、弱々しく肯定した。

「僕だって命は惜しいんだよ」タケルヒノは力説した「床一面にガソリンまいた部屋に、爆弾抱えて入っていくとか、イヤなんだよ、そういうの。火種がなければ爆発しないとか、そういうことを平気で言う爆弾(ひとたち)と一緒はイヤなんだ」

 


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