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ワンダー7  作者: 二月三月
始まりの終わり

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ジムドナルドの冒険(6)

 

 アファマティに連れられて入った部屋は、滞在用の個室と大差ない狭さだった。扉はいくつかあるので、その向こうは少し違うのかも知れないが、ジムドナルドにはあまり興味はなかった。

 アファマティは部屋の奥のほうで、年長者に向かってしきりと話しかけている。ジムドナルドのことを説明しているらしかったが、これまたジムドナルドの興味を引くような話しではなかったので、話し声は音色の異なる雑音にしか聞こえず、ジムドナルドの頭には意味のある言葉としては聞こえてこなかった。

 ジムドナルドはヘルメットを取って、あたりを見まわした。調度のほとんどないさっぱりした部屋で、評価できるのは何もない(丶丶丶丶)ということぐらいだった。ない物にはケチはつけられないし、心が落ち着くという点では何物にも代えがたい。

 アファマティに連れられて来たのだから、真声(丶丶)の集会所の類と思われるのだが、アファマティが熱心に話しかけている年長者以外には、誰もいない。扉の向こうにいる、という可能性もないではないが、これで全部、ということだって、ことによるとありそうだった。

「兄弟よ」

 アファマティに口説き落とされたらしい年長者が声をかけてきた。

「アファマティを災難から救い出してくださったことに感謝します」

「どういたしまして」

 ジムドナルドは答えた。

「とっさのことで、果たして救ったのかどうかも定かではありませんが」

「どういうことです?」

「無勢のほうに肩入れはしましたが、双方の言い分を聞いたわけではないですからね」

 年長者はアファマティのほうに目を向けた。アファマティはつっかえながら返答する。

「か、彼らが、急に襲ってきたのです」

 年長者は再びジムドナルドのほうを向いた。

「彼はあのように言っておりますが?」

「私にもそう見えましたが、それが真実かどうかはわかりますまい」

 ふむ、と年長者は押し黙り、やや間をおいて話し出した。

「申し遅れました。わたくし、シオマハルトナと申します」

「ジムドナルドです」

 ジムドナルドも名乗った。

「エムポスについて間もないとか?」

「ええ、そうです」

 ジムドナルドは余計なことは言わなかった。シオマハルトナはアファマティよりは、少しものがわかっているのだろう。全教養過程中のジムドナルドが、こんなところにいてはいけないのを彼は十分理解している。全教養過程中の個人に、許可なく教導会が接触することは規約違反だ。勇み足のアファマティを責めてもどうにもならないが。それにしても、この男…

「精神体への道をどうやってたどろうとお考えですか?」

 探るようにシオマハルトナは尋ねてきた。

「道はあまり気にしておりません」ジムドナルドは答えた「目的にたどり着ければ、道などどうでも良いのです」

「要するに手段は選ばぬと?」

「そのように取られてもいっこうにかまいません」

 シオマハルトナは、口の端に笑みを浮かべた。アファマティのほうに向くと「この御仁、私には荷が重すぎるよ」と言った。

「さて、兄弟」シオマハルトナは再びジムドナルドに向けて言った「ここがどこか、私が誰かは、もうあなたにはおわかりでしょうが、私からそれを言うわけにはまいりません。あなたにはその必要もないでしょう。御存分にここでくつろがれ、目的を果たされたならば、ご自身の道を行かれるが良かろう」

 それだけ言うと、呆気に取られたアファマティを残し、シオマハルトナは扉の奥に引っ込んでしまった。

「あの、あの…」

 どうにも次の言葉が出てこないアファマティだが、ジムドナルドは落ち着いたものだ。

「気にすることはありませんよ」ジムドナルドはアファマティに言った「いつものことですから」

「いつものこと?」

 ええ、とジムドナルドはアファマティに微笑みかけた「いつものこと(丶丶丶丶丶)ですから、あなたも気にしなくていいですよ」

 アファマティは、不如意な顔つきで、じっとジムドナルドを見つめていたが、不意に思いついたらしくいきなりジムドナルドの手をつかんで引っ張り出した。

 こちらに、こちらに、とジムドナルド手を引きながら、さっきシオマハルトナの消えた扉とは反対側の扉に向かうアファマティ。ジムドナルドは抗いもせず、引かれるままに扉のむこうの部屋に入った。

 

 部屋の造作はさっきの部屋もこちらも大差はなかったが、目を惹いたのは、壁にかけられた一枚の絵だった。

 あまり上手とはいえない絵だったが、描き手の意図は十二分に伝わってくる。

 とはいえ、不明瞭で判然としない表情を持つその肖像画は、その者(丶丶丶)を実際に見たことがなければ、いったい何なのかさえわからないだろう。

「他星の精神体の写し絵です」

 ジムドナルドの表情を誤って読み取ったアファマティは、誇らしげに胸を張り、その絵を指した。

「先々代の教導長が彼に会ったときのことを思い出して描いたものです。精神体は存在するのです」

「なるほど、あなた方の確信の理由がわかりました」

 ジムドナルドはアファマティの持った手を優しく振りほどき、微笑んだ。

「他の教導会と違って、精神体(丶丶丶)存在する(丶丶丶丶)ことを知っているから安心して修養できる。そういうことですね」

「そうです。だから我々と一緒に…」

 いいえ、とジムドナルドは笑みを絶やさずに首を振った「私には先達は必要ないのです。私の道は私以外には誰も通れない。だから、私の先を行くものはいない」

 唖然とするアファマティを残し、部屋を出て行くジムドナルド。

 

 通路(チューブ)に出たジムドナルドは、スラスターを軽く吹かして、一気に2ブロックを抜けた。

「ルミザウか」ジムドナルドはヘルメットの中でつぶやく「まさか、こんなとこで出くわすとはな。あいつも手広くやってたってことだろうが…、やっぱり行くべきかな。ティムナーに」

 


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