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ワンダー7  作者: 二月三月
始まりの終わり

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虚実の果て(3)

 

「どうやって、次元変換駆動機関を止める?」

 ジムドナルドがジルフーコに尋ねる。

「後のことを考えなければ、壊すのがいちばん簡単だ。デルボラが怒らないといいけど」

「怒らんさ」ジムドナルドが返した「デルボラは、もう自分で無限大のエネルギーを生み出せる。デルボラ=ゼルは、デルボラには、もう、必要ないもんだ。面倒が減って喜ぶんじゃないか?」

「スタンバイの変換球を、使用中のものにぶつけるのが手軽でいいね」

 ジルフーコが、壁面ディスプレイに、次元変換駆動機関のモデルを表示する。

「この中心部分で、変換球が次元変換されて変換差分がエネルギーとして供給される。変換球は次元変換のたびに少しずつ劣化するから、ある程度使用すると交換になる。通常、交換時は、駆動機関を停止する。それからスタンバイの変換球を射出して、劣化した変換球と玉突きみたいに交換するんだ」

「要は、それ(丶丶)を、駆動機関を(丶丶丶丶丶)停止せずに(丶丶丶丶丶)やればいいってことだろ?」

「その通り」ジルフーコは、上出来だよ、という顔で笑った「やる(丶丶)のはボクだけどね」

 はっとしてサイカーラクラが顔を上げたが、ジルフーコは無言で微笑みかけると、サイカーラクラの開きかけた口を封じた。

ボクが(丶丶丶)やるんだ(丶丶丶丶)。機関を破壊すると、隣に大穴が開くだろうから、そこから入って。主駆動機関が停止すると、予備動力で、最低限の防御システムが稼働しだすから、そっちはよろしくね」

「ああ、まかせとけ」ジムドナルドは、こん、と操縦室のドアを叩いた「もう、操縦は慣れた。どうせこの機体じゃ、デカすぎて開いた入り口につける程度だろ。そこから先は、降りて進むさ」

 

 ジルフーコが機内から出た後は、誰も何も言わず、ただ、モニターを黙って見つめていた。

 ジムドナルドは、多目的機(マルチロール)をデルボラ=ゼルの外殻に沿って移動させ、衝撃に備えた。

 ある意味、それは、あっけなかった。

 何の衝撃も、前触れもなく、まばゆいばかりの光が、突然消え、デルボラ=ゼルは漆黒の塊へと戻った。

 すぐさま、ジムドナルドは、微速で多目的機(マルチロール)を進めると、デルボラ=ゼルの中央、直径200メートルほどの裂け目から、中に機体を滑り込ませる。

「みんな降りろ。あまり時間がない」

 ジムドナルドの言葉に、皆、ハッチから飛び出した。破壊されて露出した通路の入り口に向かう。

「ジルフーコは大丈夫でしょうか?」

 ジムドナルドに並走したサイカーラクラが尋ねた。

「大丈夫だろ」ジムドナルドの声は、いつもより大げさに聞こえた「だってジルフーコだぞ。俺じゃないんだから。だから、心配することなんか何もないさ」

 

 主電源(メイン)が切れているので、通路は真っ暗だ。ヘルメットのサーチライトが、人数分の光源となって照らすので不自由はないが、やはり心細い。

 通路は一本道で、前回とは違って中央部から乗り込んでいるので、目的地までは、それほど距離はないはずだった。

 先頭を行く、エイオークニの木刀が一閃した。

「何だ?」

 ジムドナルドに問われたエイオークニは、自分が壁に叩きつけたものの残骸を見つめる。

「さあ、よくわかりませんが…、何かの機械のようですね」

 そう言いつつ、また、一閃、いや二閃。

 木刀を振るって、叩き壊す。

「この程度なら、どうということはありませんが、数が増えたら厄介ですね」

「小型のケミコさんみたいだな」

 エイオークニの破壊した残骸を調べながら、ジムドナルドが言う。

「主駆動機関が停止したから、修理に来たってところかな」

「あんな大穴をこの程度のロボットで直せるものですか?」

「いや、無理だろう。自動で出てくるクラスじゃ、あんな致命的な損害修復は無理だ」

「害がないなら、次に出てきても無視しますか?」

「手間じゃなけりゃ、叩き潰して欲しいな」

 ジムドナルドは部品の一部を取って、前方に投げた。

「こいつは、たまたま無害だったが、次に来るやつもそうとは限らんしな」

「それもそうですね」

 エイオークニは、木刀を持ち直すと、油断なく身構えた。

 

 しばらく行くとゲートにぶち当たった。

 電源があるなら(ゲート)だが、開かないなら、行き止まりだ。

 周囲を見回したが、横道のようなものは見つからなかった。

「おっと、そいつは、もったいない」

 背中の槍に手を掛けたビルワンジルを、ジムドナルドが止めた。

「それは、胞障壁(セルレス)用のトラの子だろ?」

 そして、皆に向かって、言う。

「みんな、少しさがってくれないか。そうだな、あそこの角のくぼみがいい。あそこに隠れて」

 皆を下げさせると、ジムドナルドはゲートに張り付いて、何かの作業をはじめた。ゲートの四隅に同じような作業を繰り返している。

 やがて、作業を終えたジムドナルドは、皆と同じ位置まで下がって、壁のでっぱりに体を隠すと、皆に言った。

「爆薬、量はたいしたことないけど。ま、いちおう、用心してくれ」

 手の中のスイッチを押すと、ゲートの四隅に閃光が瞬き、通路を遮る板がひしゃげた。

 ジムドナルドは、ゲートまで戻ると、爆破の残骸を蹴とばして向こう側に倒した。

「それ、あと何回使える?」

 ビルワンジルが聞いてきた。

「まあ、いいとこ、あと2回かな」ジムドナルドは答えた「こんなもん、そう大量に持ち歩くもんじゃないからな」

 


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