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ワンダー7  作者: 二月三月
始まりの終わり

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211/251

壁の中の夢(2)

 

「ここは危険だよ」

 あやふやに漏れ出た光、胞障壁(セルレス)とは違う、それ(丶丶)に向かってジルフーコは忠告した。

「早く帰ったほうがいい」

「ボクひとりでは無理だが、アグリアータが支えてくれる」

「くだらないこと言ってると、夫婦そろって共倒れだよ」

 淡い光、ラクトゥーナルは、それでも必死に明滅を繰り返す。

「聞きたいことがあるんだ」

 あきらめ顔で、ひとつ嘆息をつくと、朧光のほうを向いてジルフーコは言った。

「手みじかにね」

完全()情報体(リーンファノア)になったのに、励起子体(パウフラニア)に戻ったのは、何故?」

「どこかの間抜けが、サイカーラクラを完全()情報体(リーンファノア)にしよう、なんて馬鹿な考えを起こさないようにするためだよ。隣りに、完全()情報体(リーンファノア)になって、また戻ったヤツがいたら、いくら馬鹿でも少しは考えを改めるだろう?」

「でも、それなら、デルボラとの対決後に戻ることだってできたはずだ。完全()情報体(リーンファノア)がいれば圧倒的に有利なのに」

「それじゃあ、タケルヒノが、わざわざデルボラの造った胞障壁(セルレス)に入った意味が無い」

「何だって?」

「タケルヒノの能力も、完全()情報体(リーンファノア)も、この時空間に対する作用としてなら大差はない」

 ジルフーコは、弱々しく瞬く光球から視線をはずし、外の胞障壁(セルレス)を見やった。

「ボクらは、長い旅をして、ここまで来た。でも、それは、デルボラを滅ぼすためじゃない」

――デルボラを

 光球は、それを最後に、はかなく消えた。

「大丈夫でしょうか、あの人(丶丶丶)

 サイカーラクラの声が、ジルフーコにまとわりつく。

「大丈夫だろう?」ジルフーコは微笑んだ「ラクトゥーナルはともかく、アグリアータは、そこまで馬鹿じゃない。リーボゥディルがいるんだ。これ以上の無茶はしないよ」

「そうですね」

「それにしても、ラクトゥーナル」ジルフーコは、ぽつりと呟いた「こんなときでもボクのほうに来るなんて、よっぽど、ジムドナルドやボゥシューが怖いんだろうなあ」

 

「どっちかっていうと、いつもの胞障壁(セルレス)なんだけど」

 イリナイワノフがボゥシューに話しかけてくる。

「いつもほど、怖くないなあ」

「そうだな」

 ボゥシューは、当たり障りの無い答えを返した。

「それって、ジムドナルドが操縦してるから?」

「そうだな」

 この返事は、当たったり障ったりしそうだった。

「どうしてかな?」

 イリナイワノフの素直な問いかけは、少しばかり、ボゥシューには荷が重い。

「タケルヒノは、怖いと感じたことがないらしい」

「え?」

 とまどうイリナイワノフ。ボゥシューは、口火を切ってしまったので、なんとなく、だらだらと説明を続けた。

「タケルヒノも、人間は怖いと感じる、という知識はあるらしいんだが、自分が恐怖を感じないので、その点を配慮するのが苦手なんだ。だから、タケルヒノが操縦していると、ついつい、怖ろしい領域に踏み込んでしまう」

「ジムドナルドは、怖がりだから、怖そうなところは通らないの?」

 ボゥシューは、イリナイワノフの顔を、マジと見た。

「うん、そうかな。ちょっと違う気もするけど、そういうことかもしれない」

 ふーん、とイリナイワノフは、納得したようだ。

「じゃあ、ジムドナルドのほうがいいな。今度からジムドナルドに操縦してもらおう」

「それは、どうかな」ボュシューの口は、あいかわらず重い「タケルヒノは無意識で進む道を決めていたけど、ジムドナルドはそうじゃないから…、かなり負担が大きいと思う」

 ええっ? と、イリナイワノフが、目をまんまるにして驚いた。

「ジムドナルド、ジルフーコみたいになっちゃうの?」

「いや、さすがに、それは…。やり方が違うから、あんなことには、ならないと思うけど…。さっきから、少し、ふらふらと、危なっかしい感じが…」

 真っ白な闇が、眼前を覆い、なにもかも、イリナイワノフの顔すら見えなくなった。

「ジムドナルド、操縦、下手なのかなぁ?」

 声だけが、はるか遠くに、蜃気楼のように聞こえていた。

 

 

 

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