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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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原点回帰(5)

 

「だめだー」男はジムドナルドに掴みかかる「本当の神とか、わけのわからんこと言うなー」

 ジムドナルドがひらりとかわすと、男は床にべちゃりと倒れた。

「ま、気を落とすなよ。後は勝手にやって良いからさ」言うだけ言って、もうジムドナルドは逃げ腰だ「よく見ると、その格好もさ、それなりにサマになってるんじゃないかなー、よくわかんないけど」

 ジムドナルドは、スーツの胸ポケットからペンダントを取り出すと、ボタンを押した。それから、入ってきた扉に手をかける。

「でも、まあ、薬はやめといたほうが、良いんじゃないかな。じゃあね」

「まてーっ、その男、捕まえろぉ」

 さすが御導父様の一声。廊下、左右の部屋から、わらわらと信者がわいて出る。エレベーターへの道をふさがれたジムドナルドは、とっさに非常階段入り口を開けて、飛び込んだ。

 非常階段のドアを背中で押さえつつ、さてどうしたものかと考えるジムドナルド。

 背にしたドアは蹴られ続けて、押さえているのがやっとだ。そうしているうち、階段の下のほうからも物音が近づいてくる。

――やっぱ、上かなぁ。

 ジムドナルドはジルフーコにもらったメディシンプレートを見つめる。ままよ、と口の中に放り込んだ。

 ドアを蹴り開けられ、そのまま前方につんのめるジムドナルドに、信者の一群が覆いかぶさった。

 が、

 群がる信者を吹き飛ばし、ジムドナルドは難なく立ちあがった。信者の一人を頭上に担ぎ上げると、階下からせまる、もう一塊の信者たちにむかって投げつけた。

――いい感じだぞ、ジルフーコ、ここまではな。

 ジムドナルドはジルフーコの言葉を思い出す。とにかく逃げろ、と。

 階下は人間ドミノ倒しの状況で、階段はすっかり人で埋まっている。

 もう選択肢は上しかない。ジムドナルドは三段飛ばしで非常階段を駆け上がっていく。

 

 ジルフーコの薬のおかげで、まったく息切れはない。その分、後が恐ろしいが、いまは考えないことにする。

 五階分ほど一心不乱に階段をかけあがると、非常口のドアが見えた。

 出口のドアは鍵がかかっている。思いきり蹴りつけると、開いた。

 GEビルディング最上階、トップ・オン・ザ・ロック展望台は、いつもどおりに観光客でごった返している。

 この観光客にまぎれて逃げようか、一瞬、ジムドナルドは考えたが、おそらくもう時間がない。ここで倒れたら、追っ手に追いつかれてしまう。

 観光客がざわめいている。

 その原因が、このマンハッタンの観光名所から見える摩天の景観ではないことに、ジムドナルドはようやく気づいた。

 見たこともない形の飛行機が、展望台の眼前に浮いている。

 観光客は、おびえながら、その反対側によりつつも、飛行機から目が離せない。

 飛行機胴体上部のハッチが開いて、中が見えたとき、ジムドナルドは確信した。

 ガラスの割れる音、上がる悲鳴、ジムドナルドは眼前の柵を余裕で飛び越え、飛行機に飛び移った。

「できればちゃんと着陸できるところに呼んでほしかったなあ」

 タケルヒノは、計器から目を離すことなくジムドナルドに言った。

 上部のハッチがゆっくりと閉まる。遠目にビルの非常口から出てくる一団が見えた。

「ホバリングはけっこう難しいんだ。燃料も食うし。あ、シートベルトしめてくれ。ここはギャラリーも多いし、あまり長居はしたくないんだ」

 ああ、と呻いて、ジムドナルドはやっとの思いでシートベルトをしめた。体が鉛のように重い。

 座席に押しつけられる加速度の感覚。

「とりあえず、これからボゥシューのところに寄るから、そのあとは……」

 タケルヒノの声を聞きながら、ジムドナルドの意識は次第に遠のいていった。

 

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