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ワンダー7  作者: 二月三月
始まりの終わり

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206/251

7-1(3)

 

 ボゥシューとサイカーラクラに頼まれたエイオークニは、嬉々としてマイ工具セットを持って、管制室の副操縦席側に現れた。

 パネルの固定治具に、ああ規格が違う、などと言いながら、ドライバーを何本か、とっかえひっかえ当てていたが、やがて、パチン、と鳴らしてパネルをはずす。

 サイカーラクラに指示を受けながら、ジルフーコの設計で、ボゥシューがオーダーシステムで作った装置を、管制システムに組み込んでいく。

「へえ、慣れたもんだな」

 3人の後ろから、ジムドナルドがのぞきこんで、感心している。

 最後のソケットをつなぐと、管制室内に、ジルフーコの声が鳴った。

「ありがとう、これで、ボクの声は聞こえるね」

「こっちの声は聞こえてるのか?」

 ジムドナルドの問いに、ジルフーコの声はすぐさま答えを返す。

「聞こえてるよ。ずっとね。いま、ボクが読めるのは、情報の流れだけなんだけど、そっちの話しは、すぐに分析できるようになったから、完全()情報体(リーンファノア)になってからのことは、だいたい把握してる。ただ、こっちの意思を伝える方法が、なかなか見つからなくてね」

「ごめんなさい」サイカーラクラが言った「もっと早く気づけば良かったのですが」

「気にしないで」ジルフーコの声はいたわるように響いた「もともと情報体(リーンファノア)は、雑音が多くて、たいていの情報はやり過ごしてしまうから、思ったより早く、気づいてもらえて助かったよ」

 そう言われて、サイカーラクラが嬉しそうに微笑む。それを見たボゥシューは、あいかわらず、ちょろいなあ、と、他人ごとながら心配になる。

「これ、どうやって、声出してるんだ?」

 ジムドナルドが尋ねた。

「ケミコさんの情報核(リーンファニム)を使ってる。かなり単純とは言え、情報核(リーンファニム)には違いないから、ボクも直接アクセスできるんだ」

「なら、ケミコさんを直接操作したほうが、早いんじゃないのか?」

「ボクは、もともと、コンピュータでもロボットでもないからね。情報の流れが、実はかなり違うんだ。時間をかければできるとは思うけど、ダーみたいには簡単にはいかないよ」

 まあ、そうでしょうね、と、ダーもジルフーコに同意した。

「それで、話しが通じたところで、ジムドナルド」

「何だ?」

矮小化(ダウングレード)を手伝ってくれ」

「手伝うのはかまわんが」ジムドナルドは周囲を見回す「ここでか?」

「そうだね…。確かに、他の人には退屈だろうから、いつもの対話室にしよう」

「なんなら、レウインデでも呼ぶか? あいつ、そういうの好きそうだしな」

「そうだね。キミと2人でやってくれれば、かなり時間を短縮できる」

 ジルフーコの声が最後まで話し終わる前に、管制室の中央に光の点が凝集しだした。

「呼んだ?」と、レウインデ。

「おお、呼んだ、呼んだ」と、ジムドナルド「ここを出てエレベーターの先にある部屋だ。すぐ行くから、先に行っててくれ」

「えー」レウインデは不満そうにふくれっ面をした「あの部屋、閉じ込めらてる感が凄くて、嫌いなんだけどなあ」

「じゃあ、いい、手伝ってくれなくていいから、とっとと帰れ」

「そんなこと言わないでよ。つれないなあ」

 そう言うレウインデは、ジムドナルドから視線をはずし、宙を見つめてニヤニヤする。

「せっかく、完全()情報体(リーンファノア)になったのに、もう、やめちゃうの?」

「言われてるほどには、便利じゃないんでね」

光子体(リーニア)の夢なのになあ。みんな、完全()情報体(リーンファノア)になれないから、光子体(リーニア)になってるようなものなのに」

「なら、なってみればいいんじゃない? レウインデ」

「また、御冗談を、そんなの、まっぴらごめんだよ」

 空中をたがいの揶揄が飛び交う中、イリナイワノフがボゥシューの脇腹をつついた。

「ねえ、矮小化(ダウングレード)って、何するの?」

「あ、ああ」ボゥシューは小声で返す「いま、ジルフーコは、なんて言うかな、情報量が肥大しすぎて、励起子体(パウフラニア)の体に入りきらない状態になってるんだ。だから、情報をそぎ落として、元に戻れるようにする」

「ジルフーコ、励起子体(パウフラニア)だったの?」

「ついこの間、なったみたいだ」

 ふーん、と、イリナイワノフは、何故か、納得したようだ。

「ジルフーコ、サイカーラクラのこと好きだもんね」

 イリナイワノフはサイカーラクラに聞こえぬよう、ボゥシューの耳元でささやいた。

「だから、励起子体体(パウフラニア)になったんだね。それで、また、励起子体(パウフラニア)に戻るんだ。サイカーラクラと一緒がいいんだね」

 ボゥシューは振り返って、イリナイワノフの顔を、まじまじと見た。

 それから、イリナイワノフの隣りにいる、ビルワンジルに視線を移す。

「どうかしたか」

 気づいたビルワンジルに、そう問われて、ボゥシューは、あわてて首を左右に振った。

「いや、何でもない」

 イリナイワノフ、自分のこと以外は、とてもするどい。

 


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