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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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デルボラ(8)

 

 タケルヒノが現れて、何故か、デルボラは、ほっとしたように見えた。

「ああ、これは、申し訳ない。つい話し込んでしまって、すみません」

 デルボラがタケルヒノに謝ると、横からジムドナルドが口をはさむ。

「なんなら、席外すか? もう、俺の方はたいした話しはないしな」

「いや、君にもいて欲しい」デルボラは、ジムドナルドの申し出を断った「もう、だいぶ話したので、わたしのほうも慣れましたよ。これからタケルヒノと話すことについては、君にもいてもらったほうが良いでしょうし」

「話し、って何の話しだ?」

胞宇宙(セルベル)の話です。君たちがやってきたこと(丶丶丶丶丶丶丶)について話したいのです」

 それから、デルボラは、あらためてタケルヒノのほうを向いて、丁寧に詫びた。

「いきなり、みなさんを、バラバラにしてしまって、申し訳ありませんでした。なにぶん、人見知りで、長くこんなところに引きこもっていたので、いきなり大勢の方と話すのは、なんとも億劫だったものですから」

 こちらこそ、とタケルヒノも応じた。

「大勢で押しかけまして、こちらこそ失礼しました。さすがに最初から全員というのもどうかと思いまして、半分は宇宙船(ボード)に残してきましたが」

「そちらの方々にもお会いしたかったですよ」

「それについては、また機会もあるでしょうしね」

「ええ、そうですね」

「ところで」と、タケルヒノは急に話題を変えた「宇宙皇帝を名乗っておられるようですが、どういった趣旨ですか?」

 突然、デルボラは、笑い出した。本当に愉快そうな屈託のない笑いだった。

「いつ聞いてくれるのかと、ずっと、待っていたんですよ」

 デルボラは、キラキラと瞳を輝かせながら、答える。

「宇宙皇帝、なんて、大仰で馬鹿馬鹿しいでしょう? そこが、いいんです。ちょっと気の利いた人なら、冗談だというのはすぐわかるでしょうし、頭の回りの悪い人には、これだけでも、結構な威圧になる。おまけにわたしは重中性子体(レビフォノア)です。会いたくない人の半分には、宇宙皇帝と名乗るだけで、会わなくてすむのです」

「いわゆる、馬鹿避け、ですか?」

「あまり大っぴらに言うと、角が立ちますから、内緒にしてくださいね。そうだ、君も、宇宙英雄、とか名乗ってみたらどうですか? きっと、楽しいですよ」

 デルボラは、タケルヒノだけでなく、ジムドナルドにも勧めてきた。

「それだと、馬鹿が寄ってくるんだが」

「え? だって、英雄ですよ? 普通、そんなものに近寄りたくないでしょう?」

「それが、そうでもないんだ」きわめて残念、という顔でジムドナルドが言う「あんた、馬鹿のことを甘く見過ぎだ。馬鹿の中には、本気で神様が自分を救ってくれると信じてる、救いがたい馬鹿が五万といるんだ。お前みたいなのより、神様だって、もっと人好きのするやつを救うだろ、なんて言ったら、この世の終わりみたいに騒ぐ。ああいう輩には、余計なことは言わないのが嗜みだよ」

 デルボラにも、思い当たる節はあったらしい。しょんぼりとした顔になった。

「まあ、宇宙皇帝、は、そういう用途には向いていると思いますよ」タケルヒノは慰めるように言った「宇宙英雄は…、僕は若輩ですので、もう少し貫禄がついてから考えようと思います」

 それを聞いたデルボラの顔が明るくなった。どうもデルボラの扱いについては、ジムドナルドよりタケルヒノのほうが、上手のようだ。

「貫禄ならもう十分でしょう。実績がモノを言う」デルボラは急に饒舌になった「最初はサイユルでしたね。あれは、結果が出るのが早い。数世代もあれば十分でしょう」

「サイユルについては、やむを得ない事情もありましたから」タケルヒノは、若干、遠慮気味に答えた「そのまま何もしない、ということも考えましたが、まあ、成り行き上…。地球でもやってしまった後でしたから」

「そうか、地球の件があった。最初と言えば、あれが最初です。なかなか見事なものでした」

「いろいろ不明な点も多かったですからね。あの頃は」

「知識を」と、デルボラは言った「一部の者に隠そうとするのは愚かなことです。早すぎる知識とか技術なんてものは存在しないのです。もし知り得る環境があるなら、賢者にも愚者にも同じように与えるべきです」

「頭の悪いやつは、平等にすると、すぐ不公平だって言うんだよ」

 ジムドナルドは笑う。

「言わせておけば良い、と言いたいところですが、確かに大勢いるとウンザリしますね」

「地球や、サイユルについては、単純に時間を早めただけで、遅かれ早かれ、自力で到達はできたと思います。だから、余計なことだったかもしれない。状況が切迫しているかどうかの判断があの時点では難しかった」

「では、ベルガーは? あれは、かなり積極的にやった?」

「袋小路に入り込んでましたからね、ベルガーは。サイユルがうまくいったとしても、彼らがベルガーに手を差し伸べられるかどうかは未知数でした。あのまま、取り残される可能性のほうが高かった。それに、うちには神様の専門家がいましたからね。まあ、やってみるのも良いかな、と」

「専門家、ってのは俺のことか?」

「神様の真似させたら、宇宙一だろ?」

 言い合うタケルヒノとジムドナルドに、デルボラは控え目ではあるが、毅然と抗議した。

「ジムドナルドは、神の真似なんかできませんよ」

「そうかな?」タケルヒノは困惑の眼差しをデルボラに向けた「かなり堂に入ってたと思ったけど?」

「それは、そうだけれど」デルボラは楽しそうに笑った「ジムドナルド、というより、君たち全員がですが、神の真似事などできないのです。君たちがしているのは、神の行為そのものであって、真似ではない。神は自分の真似などする必要はないのだから」

 


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