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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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デルボラ(3)

 

「いきなり、同伴者の方と離れ離れにしてしまって申し訳ありません」

 デルボラは、まず、謝るところから始めた。

「なにぶん、わたし、臆病なもので、あまり人が多いと、うまく話せないのです」

――臆病ねぇ

 デルボラの言葉を額面どおり受け取れるほど、ビルワンジルも素直ではないが、半分は本音かもしれない。

「そういうのは、慣れてる」

 ビルワンジルは、そう言った。

「みんな、いきなり、タケルヒノとか、ジムドナルドと話すのは、おっかないみたいだから、最初はだいたいオレのところに来るんだ」

「そうそう、まさに(丶丶丶)それです」

 デルボラは、何故か、嬉しそうだ。

「何というか、ここ数万年ほどは、光子体(リーニア)としか話していないし、わたしのところに来る光子体(リーニア)というのは、こう言ってはなんですが、変わった人が多いので…」

「レウインデ、とかか?」

「いや」とデルボラは首を振る「彼は、レウインデは、まだ、ずいぶんマシなほうですよ。礼儀のなってない無礼者が多いですね」

 ここで、急にデルボラは、そわそわしだした。しきりと首を傾けては、タキシードの襟や燕尾などに目を向ける。

「地球の方をお招きするのは初めてなので、あの、わたしの格好、おかしくはありませんか?」

 聞かれたビルワンジルも、改めてデルボラを見直す。頭のてっぺんから爪先まで、ひととおり目を通した。

「とくに、おかしなところは、なさそうだがなあ」ビルワンジルも心許ない「地球の服、って言っても、オレの育った環境ではあまり着ない服だから、正直良くわからない。でも、そういう服を着てる地球人は見かけたことがあって、こう言ったらなんだが、そういう連中よりはアンタの方が、似合ってる感じかな」

「じゃあ、他の方と会うときも、これで大丈夫でしょうか?」

「大丈夫じゃないかなあ、あまり、自信はないんだが。どうせ、ジムドナルドは、何にでも文句つけるだろうし」

「それを聞いて安心しました」デルボラは微笑んだ「わたしはあまり寛容なほうではないので、無礼な客は嫌いですが、それ以上に、お客様に間違って礼を欠いてしまうのが、何よりいや(丶丶)なのです」

「礼儀うんぬんは、あんまり詳しくないからなあ」

 ビルワンジルは、デルボラの、控え目ではあるが、見咎めるような視線に気づいた。

「気になるかい?」

 ビルワンジルは、背に負うた槍の穂先を指差した。

「気にならないわけがないでしょう」

 デルボラは笑った。

「ゴーガイヤを粉々に砕いた槍じゃないですか」

「ホントは、レウインデを狙ったんだ」

 ビルワンジルは気のない感じで言う。

「躱された。レウインデにすら当たらないのに、アンタに投げたって、当たらんだろ」

「何でしたら、試してみませんか?」

 デルボラはビルワンジルの前で手を広げ、当たりやすいように自分を大きく見せた。

「もったいないだろ。5本しかないのに」

 デルボラは、少し残念そうに、広げた手を元に戻した。それから、何か考えている風だったが、不意に思い当たったらしく、口を開いた。

「君のかわいらしい恋人は、何故、一緒に来なかったのですか?」

「恋人じゃないよ」ビルワンジルは憮然として答えた「オレの片思いだ」

「そんな、あり得ないことを言われても、困りますが」

 デルボラはとても可笑しそうだ。

「君は片思いされるほうであって、するほうじゃないですよ」

「オレが片思いしちゃ、いかんのか?」

「そうではなくて」デルボラは、また笑った「君を好きにならない人はいないのだから、君が誰かを好きなら、それは両思いです」

「オレなんか持ち上げたって、何も出ないぞ」

「君は何でも持っているし、何でもできる。望みはすべて叶うのでしょう?」

「そりゃ、まあ、そうだが」

 ビルワンジルは、そのことについては否定しなかった。

「オレは、手に入るものしか欲しがらないし、出来ることしかやらない。叶うことしか望まないからだ」

「そんなこと、普通の人間には出来やしないのです」デルボラは、またも笑ったが、今度はあまり楽しそうではなかった「わたしのような凡人にはね」

「アンタ、夢が大きすぎるんだよ」

 ビルワンジルの言葉に、デルボラは笑みを止めた。

「そう、そうかもしれない」

 デルボラは言ったが、それはビルワンジルに向けた言葉では、たぶん、なかった。

「凡夫は、猛烈に夢をむさぼり喰うのです。しかも自分の夢ではない。わかりますか? 他人の夢を喰らうのです」

 


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