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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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デルボラ(1)

 

 旧型の多目的機(マルチロール)に乗っているのは、ミウラヒノ、ジムドナルド、ビルワンジル、そして、ヒューリューリー。

 多目的機(マルチロール)は、タケルヒノが操縦している。

 この人選については、タケルヒノは他に是非を問うことを求めなかった。

 もちろん、宇宙皇帝(デルボラ)にもだ。

 これから、行きます、この5人です、という短い文を先方に送っただけだった。

 デルボラのほうも、あっさりしたもので、ご来訪を歓迎します、という短い返信があっただけだ。

 デルボラ=ゼルの見取り図と、詳細設計図が同封されていたのは、デルボラ特有の洒落っ気かもしれない。

 多目的機(マルチロール)の出発前、そのことについて、タケルヒノはジルフーコに聞いてみた。

「本物か、って聞かれたら、まあ、本物だろうね」

 ジルフーコは答えた。

「嘘つく理由もないしね。本物だったとしても、役に立つかどうか、っていうのはわからないけど」

 ああ、そうだね、とタケルヒノは笑って答えた。

 宇宙船(ボード)とデルボラ=ゼルは、40万キロメートル離れて対峙している。いわゆる地球と月の距離にほぼ等しく、スープのぎりぎり冷めない距離だ。

 この胞宇宙(セルベル)には、中心にある中性子星とデルボラ=ゼル以外にはなにもない。いまはそれに宇宙船(ボード)が加わっている。

 かつてあった惑星も星間物質も、すべて主星である中性子星に落ち込んでしまった。デルボラ=ゼルと宇宙船(ボード)が重力の淵に落ち込まないのは、ひとえに次元変換駆動装置を有しているからだ。

 

「何でお前がいるんだよ」

 ジムドナルドの宇宙服の左脚に絡み付こうとするヒューリューリーだが、彼自身も宇宙服を着ているため、いつものようにはいかない。

 ヒューリューリ―は頭部の操作盤を開く。

「それは、私が、極めて優秀だからですね」

 すばやく打鍵するヒューリューリーの脇腹めがけたジムドナルドの蹴り。

 ヒューリューリーは、造作もなくかわす。

「そりゃ、宇宙皇帝(デルボラ)だって、お前には負けそうだよな」

「でしょう?」

 こいつには皮肉が効いた試しがなかったな、ジムドナルドはそれ以上、抗弁するのをやめた。

 代わりに、ビルワンジルの隣りの席に目をやる。

「また、ずいぶん、持ち込んだな」

 ビルワンジルが持参した槍の数は5本。

「投げた槍を、拾いに行ってる時間は、なさそうなんでね」

「槍、投げなきゃならんかな?」

「なんとも」ビルワンジルは両手を広げてひらひら振った「オレは口が立たないから、それぐらいしか、出来ることがない。いろいろ喋るほうは、みなさんにお任せするよ」

 だとさ、とジムドナルドは、ミウラヒノに話しをふる。

「基本、わたしとデルボラが話し合うだけだから、君たちは何もしなくていいよ」

「向こうは、そう思ってないだろ?」

 ミウラヒノは、ニコリともせず、ひとつ小さく嘆息した。

「確かに、そうだな。デルボラだって、わたしなんかと話すよりは、君たちと話したいと思ってるだろうしな」

 そして、ミウラヒノはヒューリューリーに目を向けた。

「ヒューリューリー、デルボラは、君に会いたいと思ってるだろうな」

「もちろん、私は、優秀ですからね」

 ヒューリューリーは、ぴーん、と伸び、危うく頭を天井にぶつけそうになった。

「それもあるが」ミウラヒノは心配そうに天井を見ながら言った「わたしたちの中では、サイユルが光子体(リーニア)になれる、と考えていたのは、実は、デルボラだけだったから」

「私は光子体(リーニア)じゃありませんよ」

 ヒューリューリーの言い分に、とうとう、ミウラヒノは吹き出した。

「それは、そうだが、ヒューリューリー、君は胞障壁(セルレス)を超えたじゃないか。光子体(リーニア)になるのなんかより、そのほうがよっぽど凄いんだよ」

 

「むこうにいる間、宇宙船(ボード)にデルボラがちょっかい出してきたら、どうする?」

 操縦席の後ろからミウラヒノが声をかけた。

「万全とは言えませんが」振り向きもせずにタケルヒノが答える「シールドは強化してあるし、次元変換伝送のチャネルも潰してある。あと、ジルフーコとサイカーラクラがいますから、帰るまではもつでしょう」

「こんなチンタラした船でか? 間に合うのか?」

「別に行きは急ぎませんからね。帰るのなら一瞬です。そのために、旧型でも小さい方の機体にしたんですから」

「じゃあ、その一瞬で行こう。飽きてきた」

「ダメです」

 タケルヒノは、にべもない。

「ケチだな」

「それ、使ったら、壊れますからね。他人様のお宅に邪魔するのに、着いた途端に壊れたら、カッコ悪いでしょ」

 

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