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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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180/251

ファライトライメン(12)

 

「やあ、サイカーラクラ殿、お元気になられたようで、なによりでござる」

 ヒューリューリーは、ひさしぶりにミィーティングルームにやってきたサイカーラクラを見つけて、声をかけた。

 ジルフーコの隣に座っていたサイカーラクラは、椅子を回して、ヒューリューリーのほうを向くと、ぺこり、と頭を下げた。

「ご心配をおかけしました。ヒューヒューさん」

 サイカーラクラは微笑んだ。

「もう元気です。ところで、ヒューヒューさん、最近、何の映画をご覧になったのですか?」

「サムライ―カンツォーネでござる」

 ええー? とジルフーコが素っ頓狂な声を上げた。

「ちょっと、ヒューリューリー、サムライ―カンツォーネ、あったの? どこで見た?」

 いつもとまったく違う、あわてふためくジルフーコに、ヒューリューリーは、くるりと上半身を回す。

「情報キューブでござる。地球、民族音楽、イタリア、歌劇、で探すでござるよ」

「うわぁ、ホントだ。誰だよ、こんな分類したの、見つからないワケだ」

「それ、面白いんですか?」

 サイカーラクラは、不思議そうに、ジルフーコのコンソールに映しだされた映像を眺める。

「いや、ボクも見たことはないんだけどね。伝説のジャパニメーションなんだ。サダムイズカが、手描きのフルアニメで作った、って言われてて、ミュージカル仕立ての時代劇アニメなんだよ」

 ジルフーコの説明を聞きながら、画面に見入るサイカーラクラ、コンソールの中では、変わった髪型の男性が、朗々と、何かよくわからない歌を歌いながら、剣を振り回している。絵の動きはとてもなめらかだ。

「面白そうですね」サイカーラクラは言った「私も一緒に見ていいですか?」

「それはいいけど」一心に画面を見つめていたジルフーコだが、少し考えて、コンソール画面を消した「ここだと気が散るな。ボクの部屋に行こう」

「ジルフーコの部屋ですか?」

「そうだよ、サイカーラクラもおいで」

「はい」

 2人は立ち上がって、ミーティングルームを出て行った。

「ふっふっふっ」

 残されたヒューリューリーは、上機嫌で体を振る。

「まだまだ修行が足らんな、ジルフーコ(うじ)。今日のところは、サイカーラクラ殿に免じて、勘弁してつかわそう」

 そしてヒューリューリー自身も、しゅるしゅると退散した。

 

「なあ、兄貴」

 とうもろこしの根本に肥料を撒いているビルワンジルに、ゴーガイヤが言った。

「兄貴は、宇宙皇帝のところに行くのカ?」

 行くよ、と、ビルワンジルは短く答えた。

「姉さんも行くのカ?」

 行くよ、と、ビルワンジルは、また、答えた。

「おっかなくないカ?」

 ビルワンジルは肥料を撒く手を止める。ゴーガイヤを向いて、笑った。

「さあ、どうだろうな」

 それだけ言うと、ビルワンジルは、また肥料を撒きはじめた。

 ゴーガイヤは、もう、何も言わず、黙って、ビルワンジルの姿を眺めていた。

 やがて、肥料を全部撒き終わり、帰り支度をはじめたビルワンジルに、ゴーガイヤが言った。

「オレ帰る。また来ル」

 光の微粒子になって霞むゴーガイヤに、また来いよ、と、ビルワンジルは手を振った。

 

「ボゥシュー、いる?」

 ジルフーコが実験室に顔を出した。

 お、とボウシューが保護ゴーグルをしたまま顔を上げた。

「めずらしいな、こっち来るなんて、どうした?」

「まあ、いろいろとね」

 いつもの皮肉めいた笑顔だが、ちょっと、違うようにも見える。

「前に断ったんで、言いにくいんだけど、ボクの細胞、保存してくれる?」

 ボゥシューは、ゴーグル越しに、ジルフーコを、じっと見た。

 そうして、しばらくたってから、口を開いた。

「いいけど、急に、どうした?」

予備(丶丶)が、どうしても必要になった」

 ジルフーコは、そう言った。

「何をする気だ?」

 ボゥシューの言葉に、ジルフーコは、うーん、と唸って、しばらく、ぐだぐだしていたが、いろんなものを誤魔化すように、言った。

「やっぱり、言わないとダメかなぁ」

 その言い方が、あんまりおかしかったので、つい、ボゥシューは言ってしまった。

「いいよ、そこに寝て」

 あんまり簡単にボゥシューが応じたので、ジルフーコは少し心配になったようだ。

「あのさ、ボゥシュー」

「何だ?」

「細胞取るのって、痛くない?」

 ボゥシューは、保護ゴーグルを外して、真顔でジルフーコを見た。

「痛いに決まってるだろ、さっさと、そこに寝ろ」

 


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