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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ファライトライメン(5)

 

「やあ、精が出るね」

 収穫中のビルワンジルのとなりに、ミウラヒノがしゃがみこんだ。ニンジンを引っこ抜くと、てきとうに土を払っただけで、かぶりついた。

「どんな味だい?」

 ビルワンジルの問いに、ミウラヒノが口をもぐもぐさせながら答える。

光子体(リーニア)だった期間が長かったからなあ」

 ミウラヒノは笑った。

「食べ物なんか食べたのは、もう、何万年ぶりくらいじゃないのかな。美味いんだか、不味いんだか、よくわからんよ」

「ダーがいたときは、もっぱらダーが料理番してくれてたんだがな」ビルワンジルが呟く「いなくなったから、みんなで持ち回りだ。サイカーラクラが少し頑張ってくれてるが、使う野菜の量は、だいぶ減ったな」

「ダーは料理が上手かったのか?」

「ああ、上手かったよ」

 ビルワンジルは、やっと、顔を上げて、ミウラヒノを見た。

「そうか、アンタ、その頃、光子体(リーニア)だったから、ダーの料理、食べたことないのか」

「いつ行っても、小言ばっかりだったからなあ」

 ミウラヒノは苦笑いだ。

「手料理でも出して貰えたら、少しは関係も違ってたかな?」

「ま、無理じゃないかな」

「例えばの話しだろ? 君は冷たいな」

「こんなトコで油売ってないで」ビルワンジルは、カゴにニンジンをつめ、立ち上がった「早く、サイカーラクラに会いに行ったほうがいいぞ」

「それは…、わたしも、そう思ってる」

「思ってるだけじゃダメだろ」

「でも、わたしのことを思い出してしまったみたいだからなあ」

 ミウラヒノは青い髪の毛を、わしゃわしゃかき回した。

「忘れてくれたままなら良かったんだが、顔をあわせにくい」

「何かやったのか?」

「まあ、有り体に言って、とてもヒドイ(丶丶丶丶丶丶)ことをした(丶丶丶丶丶)

「…」

「…」

 ビルワンジルは、カゴを取ると肩に担いだ。

「サイカーラクラは、優しいから」

「それは、わたしも知ってる」

 数歩進んだビルワンジルは、不意に振り返って、ミウラヒノに声をかけた。

「あのな、まあ、好みの問題ではあるんだが、ニンジンは、緑色の葉っぱじゃくて、赤いところを食べたほうがいいぞ」

「何だって?」

「赤いところを食べるんだ」聞き返したミウラヒノに、ビルワンジルが繰り返す「ニンジンの葉っぱ食べるヤツなんて、宇宙船(ボード)の中じゃ、アンタを除けば、ジムドナルドぐらいしかいない」

 

「これは、タケルヒノの叔父上、拙者、ヒューリューリーと申す者でござる」

 ヒューリューリーは、今、何の映画に夢中か、非常にわかりやすい。

「やあ、サイユルの人だね」

 ミウラヒノは、そう言ってから、しゃがみ込んで、ヒューリューリーの下半分に目線をあわせた。

「そして、君が、ザワディだ。2人とも、元気で何よりだ。君たちには、特別に会いたかった」

 ザワディは、たてがみを、ぶるん、と振るった。それは、いつの間にか雄々しく立派になっていて、成人の雄ライオンのたてがみにふさわしく、金色に輝いていた。

「我ら2人に、特別会いたかったのは、何故でござる」

 ヒューリューリーはザワディの上で半身を振るう。

「他のみんなとは地球で会ってた」ミウラヒノは答えた「もっとも、タケルヒノ以外のみんなは気づいて無かったと思う」

「まあ、我ら、余計者でござるからな」

「それは、違う」

 普段のにやけ顔とは、まったく違う、真剣な目で、ミウラヒノは2人を見つめた。

「この計画のもともとの目的は、サイカーラクラを治すことだった。あの子はわたしのせいで、とてもヒドイ状態だった。わたしは、一緒にいたらあの子を本当に壊してしまうことがわかって、あの子のもとを離れた。サイカーラクラを癒やすには、あの子と友だちになってくれる人たちが必要だった」

 ミウラヒノは、ヒューリューリーとザワディを交互に見つめた。

「6人は、私とサイカーラクラで選んだ。君たち2人は、サイカーラクラだけで選んだ」

「拙者、サイカーラクラのおかげで、この宇宙船(ボード)に残れたのでござるよ。そして胞障壁(セルレス)も超えられたのでござる」

「うん、その話しは聞いたよ。ラクトゥーナルに聞いて、君が胞障壁(セルレス)を超えたのを知った時は、本当に驚いた。そして、それ以上に驚いたのが、ザワディ、君だ」

 ミウラヒノは近寄って、ザワディのたてがみに頬をよせた。ザワディは、くすぐったそうだったが、我慢していた。

「ザワディ、わたしの考えでは、君は、決して胞障壁(セルレス)を超えられないハズだった。でも、君は胞障壁(セルレス)を超えてきた。わたしは、いろんなことを間違えた。サイカーラクラにも謝らなければいけない」

「タケルヒノの叔父上は、これからサイカーラクラを見舞うのでござるな」

「まあ、そうなんだけどね」

 ミウラヒノは深々と嘆息した。

「なかなか勇気が出ないんだよ。だから、あと1ヶ所だけ、寄り道しようと思うんだ」

 


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