ライザケアル(13)
ラーベロイカが新宇宙船の建造現場を見たいと言う。
もう、ケミコさんが作業してるだけで、誰も向こうにはいないよ、とジルフーコは説明したのだが、それでも実際に見たいと言う。
何度か、作業中のケミコさんのカメラモニターとシンクロさせて、体験させてみたりしたのだが、それでも現場が見たいと言う。
「いいよ、連れてってやるよ。俺、暇だし」
ジムドナルドが言ったので、任せることになった。
ジルフーコは建設監督の合間をぬって、ラーベロイカ用の宇宙服をしつらえた。
「あまり無理するなよ」
ラーベロイカの検診中、ボゥシューが言った。
「すみません、迷惑ばかりかけて」
「キメラ化の最中だからな、本来、宇宙線を大量に浴びるような場所には出て欲しくないんだが、そのへんはジルフーコに頼んで、宇宙服のほうを調整してもらったから」
「…すみません」
「気持ちはわからないでもない」
「…」
「体調の方はどうだ? 自覚症状とか?」
「ぜんぜん、平気です。至って快調」
「嘘ついても、わかるからな」
「ごめんなさい。…食欲がなくて、食べると吐き気が…、あと、だるくて…、熱っぽい感じで、時々、朦朧とします」
「吐き気止めをあげるから、食前に飲んで。あとは我慢してもらうしかないな。鎮痛剤もこれ以上は投与できない」
「はい」
診療台からおりたラーベロイカは、ボゥシューに言った。
「本当に、ご迷惑ばかりかけて、私、自分では何もできないのに、ジムドナルドにまで、迷惑かけてしまって」
「ジムドナルドはいいよ、気にしなくて」
ボゥシューが言う。ラーベロイカを慰めている、という感じではない。
「アイツ、他人に迷惑かけてばっかりだからな、たまには他人の世話をしてバランスとったほうがいい」
「じゃあ、そろそろ行くぞ。用意いいか?」
旧型の多目的機に乗り込んだジムドナルドが、先に乗って待っていたラーベロイカに声をかけた。
「すみません、ご迷惑をおかけします」
こらあ、とジムドナルドが、笑いながら右手をラーベロイカの頭の上に乗せ、紫の髪をもみくちゃにする。
「そういう、くだらんこと言うと、置いて行くぞ」
「…ごめんなさい」
「謝るのもナシだ。返事は?」
「はい」
旧型は操縦席のすぐ後ろに通常座席がある。ラーベロイカはそこに腰掛けた。
「じゃあ、行くかぁ」
ラーベロイカがジムドナルドの金の後ろ髪を見つめていると、多目的機が滑るように動き出した。
多目的機は機体内壁全面がスクリーンだ。
外部カメラの映像を流すと、まるで乗員がそのまま宇宙空間にいるような錯覚すらおぼえる。
変形の小惑星をベースに建造中の宇宙船が、次第に近寄ってくる。
近づいているのはこちらのほうだが、ラーベロイカには、そう見える。
最初は船殻に浮くノイズのように見えたものが、近づくにつれ、ケミコさんだとわかった。
船外作業用のケミコさんは、バーニアスラスターで飛ぶ。
1ヶ所、2ヶ所、流れ星のように飛ぶケミコさんと。チーム作業が終わったのだろう、数十体がいっせいに飛んで移動するケミコさん。
ラーベロイカは、一心不乱に働くケミコさんたちに見とれていた。
「どこが見たい?」
船殻に添って、ゆっくりと機体をすべらすジムドナルドが、ラーベロイカに尋ねた。
「あ、あの、どこがいいでしょう?」
ラーベロイカは言ってから、しまった、と思った。頼んで連れて来てもらっているのに、いくらなんでも、それはない。
「主駆動部なんてどうだ?」
ジムドナルドは、とくに気にするふうでもなく、単純に薦めてきた。
「ちょうど真ん中だし、完成度は50パーセントぐらいらしいから、普段見られない部分が、いろいろ見られて面白いかもしれない」
「それっ、それ、お願いします」
ジムドナルドは振り向いてラーベロイカに笑いかけると、多目的機の軌道を、宇宙船中央へと向けた。




