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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ライザケアル(13)

 

 ラーベロイカが新宇宙船の建造現場を見たいと言う。

 もう、ケミコさんが作業してるだけで、誰も向こうにはいないよ、とジルフーコは説明したのだが、それでも実際に見たいと言う。

 何度か、作業中のケミコさんのカメラモニターとシンクロさせて、体験させてみたりしたのだが、それでも現場が見たいと言う。

「いいよ、連れてってやるよ。俺、暇だし」

 ジムドナルドが言ったので、任せることになった。

 ジルフーコは建設監督の合間をぬって、ラーベロイカ用の宇宙服をしつらえた。

 

「あまり無理するなよ」

 ラーベロイカの検診中、ボゥシューが言った。

「すみません、迷惑ばかりかけて」

「キメラ化の最中だからな、本来、宇宙線を大量に浴びるような場所には出て欲しくないんだが、そのへんはジルフーコに頼んで、宇宙服のほうを調整してもらったから」

「…すみません」

「気持ちはわからないでもない」

「…」

「体調の方はどうだ? 自覚症状とか?」

「ぜんぜん、平気です。至って快調」

「嘘ついても、わかるからな」

「ごめんなさい。…食欲がなくて、食べると吐き気が…、あと、だるくて…、熱っぽい感じで、時々、朦朧とします」

「吐き気止めをあげるから、食前に飲んで。あとは我慢してもらうしかないな。鎮痛剤もこれ以上は投与できない」

「はい」

 診療台からおりたラーベロイカは、ボゥシューに言った。

「本当に、ご迷惑ばかりかけて、私、自分では何もできないのに、ジムドナルドにまで、迷惑かけてしまって」

「ジムドナルドはいいよ、気にしなくて」

 ボゥシューが言う。ラーベロイカを慰めている、という感じではない。

「アイツ、他人に迷惑かけてばっかりだからな、たまには他人の世話をしてバランスとったほうがいい」

 

「じゃあ、そろそろ行くぞ。用意いいか?」

 旧型の多目的機(マルチロール)に乗り込んだジムドナルドが、先に乗って待っていたラーベロイカに声をかけた。

「すみません、ご迷惑をおかけします」

 こらあ、とジムドナルドが、笑いながら右手をラーベロイカの頭の上に乗せ、紫の髪をもみくちゃにする。

「そういう、くだらんこと言うと、置いて行くぞ」

「…ごめんなさい」

「謝るのもナシだ。返事は?」

「はい」

 旧型は操縦席のすぐ後ろに通常座席がある。ラーベロイカはそこに腰掛けた。

「じゃあ、行くかぁ」

 ラーベロイカがジムドナルドの金の後ろ髪を見つめていると、多目的機(マルチロール)が滑るように動き出した。

 

 多目的機(マルチロール)は機体内壁全面がスクリーンだ。

 外部カメラの映像を流すと、まるで乗員がそのまま宇宙空間にいるような錯覚すらおぼえる。

 変形の小惑星をベースに建造中の宇宙船が、次第に近寄ってくる。

 近づいているのはこちらのほうだが、ラーベロイカには、そう見える。

 最初は船殻に浮くノイズのように見えたものが、近づくにつれ、ケミコさんだとわかった。

 船外作業用のケミコさんは、バーニアスラスターで飛ぶ。

 1ヶ所、2ヶ所、流れ星のように飛ぶケミコさんと。チーム作業が終わったのだろう、数十体がいっせいに飛んで移動するケミコさん。

 ラーベロイカは、一心不乱に働くケミコさんたちに見とれていた。

「どこが見たい?」

 船殻に添って、ゆっくりと機体をすべらすジムドナルドが、ラーベロイカに尋ねた。

「あ、あの、どこがいいでしょう?」

 ラーベロイカは言ってから、しまった、と思った。頼んで連れて来てもらっているのに、いくらなんでも、それはない。

「主駆動部なんてどうだ?」

 ジムドナルドは、とくに気にするふうでもなく、単純に薦めてきた。

「ちょうど真ん中だし、完成度は50パーセントぐらいらしいから、普段見られない部分が、いろいろ見られて面白いかもしれない」

「それっ、それ、お願いします」

 ジムドナルドは振り向いてラーベロイカに笑いかけると、多目的機(マルチロール)の軌道を、宇宙船中央へと向けた。

 


 

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