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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ライザケアル(10)

 

「はじめまして、私、ラーベロイカと申します。この度はお忙しい中…」

 メガネの男は、わずかに微笑んで、廊下の向こうを指さした。

「たぶん、タケルヒノに話があるんだよね。ボクはジルフーコ。宇宙船のことでわからないことはボクに聞いて。宇宙船以外のことは、他の人に聞いたほうがいいかもね」

 

「やあ、いらっしゃい」

 タケルヒノはラーベロイカをにこやかに出迎えた。

「ちょっと、ばたばたしていますけど、それほど忙しいわけじゃないので、何かあったら、気軽に声をかけてください」

「ダーの新しい宇宙船を作っているのですか?」

 ラーベロイカの問いに、タケルヒノは肯いた。

「そうです。でも、いちばん忙しいところは抜けたので、あとはケミコさんたちの監督ぐらいですからね。僕もジルフーコも、そんなには忙しくないですよ」

 それじゃ、と言って、タケルヒノはどこかに行ってしまった。

「やっぱり、忙しそうですね」

「いや、そうでもないだろう」

 傍らのボゥシューが言う。

「話したいんなら、口聞いてやらんでもないが、かなり覚悟していかないとタケルヒノはキツイぞ。本人は悪気はないけどな」

「優しそうに見えたけど、そうでもないんですか?」

「いや、優しいとか陰険とか、そういう話しじゃない」

 ボゥシューの顔つきが少し険しくなった。

「うまく言えないが、話しの筋立てが常人と違うからな、話しを聞いてる瞬間、瞬間は、納得したように思えるんだが、全体を通すと、とんでもないことを言っている。長く話してると、頭がおかしくなりそうになる」

「ボゥシューでも、ですか?」

 ラーベロイカの言葉に、ボゥシューは一瞬、はっとしたが、すぐに笑い出した。

「ワタシたちは、もう慣れたよ。慣れた、というより、もう頭がおかしくなってるのかもしれん」

 

「いらっしゃい、ラーベロイカ。遠い所、ご苦労様でした」

 声のしたほうを見ると、ケミコさんが1体いる。

 まわりを見ても誰もいないので、このケミコさんが話しかけてきたのだろう。

 ラーベロイカは近寄ると、しゃがんで、ケミコさんに目線を合わせた。

「こんにちは、ケミコさんと話すのは初めて、あなた、他のケミコさんと違って話せるのね。特別なの?」

「特別、かもしれませんね」

  ダーは答えた。

「わたしは、ダー。第2類量子コンピュータなので、確かにちょっと特別です」

 ラーベロイカは腰を抜かさんばかりに驚いた。

「ダー、って、第2類量子コンピュータ、って、あなた、サイカーラクラのお母さん?」

 驚くべきは、そこではないと思うが。

「はい、そうです」

 ダーは答えた。

「せっかく、いらしたのですし、少しお話ししませんか?」

 ダーはビュッフェのほうに進み始めた。ついて来い、ということなのだろう。

「あ、あの…」ラーベロイカはダーの後を追いながら、必死で尋ねた「いそがしくないんですか? 宇宙船、とか、あの…、私、もしかして、あなたの邪魔になってるとか…」

「宇宙船のことは、ジルフーコがやってくれているので」

 ダーは車輪の回転をいったん止めて、ラーベロイカの問いに答える。

「晩御飯のしたくまで、まだ間がありますから。最近はサイカーラクラも手伝ってくれるし、あなたとお話する時間は十分ありますよ」

 

 ダーと並んで廊下を歩いていると、向こうから、形容しがたいものが来た。

「これは、特使、遠路はるばるご苦労様です」

 ふさふさと毛の生えた4足獣の上についている綱が、ひゅんひゅん回るのに合わせて、廊下に合成音が響く。

「え…、あ…」

 かろうじていろいろなものを踏みとどまったラーベロイカは、恐る恐る、尋ねた。

「…ありがとうございます。ラーベロイカです。失礼かと存じますが、あなた、どなた?」

「ヒューリューリー、と申します」

 ヒューリューリーは上半身を思い切り振り、風斬り音が高らかに響く。

「サイユルの者です。異なる胞宇宙(セルベル)の方とお会いできて光栄です」

 ラーベロイカは、やっとサイユルの紐型人のことを思い出した。それにしても、ヒューリューリーと名乗る、このサイユル人の下半分は…。

 ラーベロイカの視線に気づいたヒューリューリーは、するり、とザワディから離れた。

「彼は、私の親友でして」

 ヒューリューリーが言うと、ザワディは、あぉん、と啼いた。

「名は、ザワディです。今後ともお見知りおきを」

 

 ヒューリューリーとザワディのコンビと別れ、なおもダーについていくと、廊下に2体のリーニアが浮いている。

 大きい方は、小さい方の3倍くらいの大きさがあり、浮いていると言うより、脚が半分、廊下の床下にめり込んでいる。

「へぇ、ゴーガイヤ、って宇宙皇帝に会ったことあるんだ」

「アる」

「宇宙皇帝って、恐い?」

「おっかなィ」

「…たいへんそうだね」

 すれ違うとき、小さいほうの光子体(リーニア)が、こんにちは、と挨拶してきた。

 ラーベロイカは、どうしたらいいか、よくわからなかったのだが、作り笑いで、こんにちは、と返した。

 こんちは、と巨大な光子体(リーニア)が言った。

 ラーベロイカは振り向かず、一心にダーの後を追った。

 

 

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