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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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16/251

4:3(5)

「あと4時間ほどで地球衛星軌道にはいるので」

 ラウンドテーブルに全員がついた。皆、静かにタケルヒノの説明を聞いている。

「衛星軌道に入ったら、地球に降りる降りないにかかわらず、みんな、自分の担当に帰ってきたことを伝えてください。担当ってのは、さらってきた人のことね。回線はこちらで開くから、話してくれるだけでいい。何を話してもいいけど、次の2点は、必ず言うこと。一時帰郷だからすぐいなくなる、ということと、こちらへの接触は禁止する、ということ」

「そんなこと言ったって、聞きゃしないと思うけど?」

 ビルワンジルが言って、各自、うなずく。タケルヒノが笑った。

「まあ、そりゃ、そうなんだけど。いちおう言うだけは言っておく、ってこと。前回と同じでコンピューターネットワーク関係はジャマーかけるけど、見えてるしね。この宇宙船(ふね)。これも前回と同じ。いらない不安はさせたくない」

「何言ってもいいって、どこに降りるか、言ってもいいの?」

 ボゥシューが驚いて尋ねた。

「そのへんはまかせるよ」タケルヒノは答えた「迎えがほしいんなら、そのほうが楽かもしれない、拘束されたり、尋問されたりとか、そういうのが面倒くさくなければね」

「そういう面倒くさいのはイヤ」

「じゃあ、隠密行動をすすめるよ。おおよその着陸地点はわかっても、むこうも追いきれないと思う」

「いや、追いかけてくるだろう」ジムドナルドが言った「この宇宙船(ふね)の秘密のかけらでも知ることができたら、その陣営は他に対してとてつもなく有利になる。拷問してでも聞き出そうというやつは出てくるぜ」

「至極ごもっとも」タケルヒノが言うと食堂の入り口から自走ボックス(ケミコさん)が入ってきた「そういうことされると迷惑なんで、こんなものを作ってみた」

 ケミコさんは、皆の前に一個ずつ、四角い箱を置いていく。

「情報キューブの複製(レプリカ)だ」タケルヒノは言った「一個ずつ持っていっていいよ。地球のPCとつなげるインターフェースもついてるから、まあ、使えると思う」

「こんなもの作ってだいじょうぶなの?」イリナイワノフが恐る恐る聞いた。

「うーん、とくに止められなかったしねぇ」答えたのはジルフーコだ「作るのがダメなものなら宇宙船(ふね)が放っておかないと思うんだよね」

「おいおい、冗談はよしてくれよ。こんなもの持って降りたら、ますます狙われるじゃないか」そう言いながらジムドナルドは楽しそうだ「これは、宇宙船(ふね)の秘密の一部、じゃなくて、全部、だぞ」

「だから、こいつを着地点を予告して、世界中に投下し続ける」タケルヒノが言った「降下メンバーの内、一人でも地球に残っている間はずっとだ。連中、どこにいるかわからない人間を探すより、このキューブの解析にかかりきりになると思うんだけどな」

「そんなことして、宇宙船(ふね)に怒られない?」イリナイワノフはかなり怯えている。

「さあ、どうだろう?」タケルヒノはいたずらっ子のような笑みを浮かべた「怒るんなら、もっと前に怒ってるような気はするけど」

 あと、これもお土産。立ち上がったタケルヒノは地球に降りるメンバーに、ひとつずつ、カードとペンダントを手渡した。

「クレジットカード、ちゃんと使えるよ。上限は月5万ドルだから無駄使いしないでね」

 ひゅー、ビルワンジルとジムドナルドが同時に口笛を吹いた。

「これは?」

 手のひらの上のペンダントを見つめながら、ボゥシューが尋ねた。

「裏にボタンがついてるから、地球での用事がすんだら押してほしい。迎えにいくよ。ただ…」

 タケルヒノは、ちょっと困った顔をした。

「実は、迎えの準備がまだできていない。申し訳ない。着陸艇(ランダー)を間に合わせるのがやっとで、最悪の場合、あと3週間ぐらいは、これ押してもらっても、迎えにいけないんだ」

「気にするなよ、それぐらい」ジムドナルドがペンダントをくるくる回しながら言う「これだけ、至れり尽くせりなんだ。3週間くらいなんとでもなるさ」

「最悪3週間、ということは、早くなることもあるのか?」

 そう尋ねたのは、ビルワンジルだ。

「ベストケースなら10日」

「10日!」イリナイワノフが声を上げた「それって、もしかしたら10日しかいられない可能性もあるってこと?」

「うーん、まあ、こちらの準備ができたら、なるべく早く帰ってきてほしいんだけど…。情報キューブの中身を地球の方でどれくらいのスピードで解析できるかによっては、危険が高まるおそれがあるから」

「どういうこと?」

 ボゥシューの問いにはジルフーコが答える。

「こちらに絶対的な技術アドバンテージがあるので、むこうが手を出せない、という状態が崩れかねないってこと」

「そんな危険まで犯して」ボゥシューは情報キューブを指さした「これバラ撒かなきゃいけないもんなの?」

「バラ撒かなきゃいけないんだ」タケルヒノの目には、いつのまにか真剣な光が宿っていた「いますぐ、地球の技術レベルを無理やりにでも上げなければいけない。みんなの安全を確保するというのもあるけど、地球を守るにはそれしかない」

「それで、このボタン、結局、いつ押せばいいんだよ」

 ジムドナルドは、探しものを見つけるときのようにペンダントを回す。

「準備ができたら宇宙船(ふね)を移動させる」タケルヒノがはっきりと言った「夜空を探して宇宙船(ふね)が見えなくなったら、いつでも押していいよ」

「曇ってたら見えない」

「低軌道から動いたら、ジャマーが効かなくなるから」タケルヒノはボゥシューにウインクした「だから、テレビでもインターネットでもチェックしててくれ、大騒ぎになるからすぐわかるよ」

 

 

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