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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ライザケアル(6)

 

「ちょっとワタシの部屋に行こう」

 ボゥシューは挨拶もそこそこに、ラーベロイカを検疫室(スプリットルーム)から連れ出した。

「あの、いいんですか?」

 ラーベロイカは戸惑いを隠せない。

「まだ、部屋から出られないのでは?」

「それは別の意味だから」ボゥシューは言った「検疫は済んだ。別の件で、アナタと話し合う前に、うろうろされたくなかっただけだ」

 ボゥシューは、自室に入るとドアをロックし、シールドをかけた。

検疫室(スプリットルーム)だと、もしもの時のために映像も音声も記録してあるから、内緒話ができないんだ」

「ということは?」

 ラーベロイカの顔に笑みが浮かんだ。どこか挑戦的な意を醸し出す笑いに見えた。

「やっぱり、バレました?」

「ああ」とボゥシューは肯く「誰かにされたのか、自分でやったのかまでは知らないが、ずいぶん無茶したな」

「施術は頼み込んでやってもらったの、強制されたわけじゃない、自分の意思よ」

 ラーベロイカは挑むような眼差しで、ボゥシューを見つめる。

「それで? 私、強制退去かしら? 残念だわ」

「そんなことはない」

 ボゥシューは淡々と言う。

「そういう施術は禁止すると申し入れてたわけでもないしな。ただ、ワタシが気づいた以上は、放ったらかしにはできない」

 ボゥシューはラーベロイカの眼前で右手の指を2本立てた。

「条件が2つある。1つめはワタシの治療を受けること」

「私、病人じゃありませんよ」

「そのままだと出産時に死んでしまうだろ」

 ボゥシューの言葉に、ラーベロイカは唇を噛んだ。

「地球人と交配できるように生殖細胞と子宮内膜だけをキメラ化してある。受精して胎児が成長するまでなら、まかり間違ったらもつ(丶丶)かもしれんが、出産時の胎盤剥離には耐えられないぞ」

「時間がなかったんです」

 ラーベロイカは絞りだすように、それだけ言った。

「それと技術もな」

 いまにも泣き崩れそうなラーベロイカを前に、ボゥシューは言葉を続ける。

「やってしまったことは仕方がない。キメラ化した部分が生殖細胞だから、もとには戻せない。もうライザケアル人との交配は不可能だが、妊娠さえしなければ、すぐに死ぬことはない。でも、それは嫌なんだろう?」

 ラーベロイカは黙って肯いた。

「だから、もう、あきらめて、キメラ化を進めるしかない」

 え? という顔を、ラーベロイカはボゥシューに向けた。

「キメラ化を進めても、地球人になるわけじゃないが、少なくとも出産で死ぬことはない。ただ、無理なキメラ化だから、その…、健康状態は保証できない、常にガン化の危険性が伴う」

 ラーベロイカの頬に赤みがさした。

「私、自分の赤ちゃんを自分の手で育てられる可能性があるということ?」

「可能性だけだぞ」ボゥシューはあわてて念押しした「だいたい、妊娠できるかどうかなんて、こっちの知ったことじゃないからな」

 ラーベロイカは期待と懐疑の入り混じった目で、ボゥシューを見つめる。

「でも、あなたはそれでいいの?」

 ボゥシューはロッキングチェアに腰掛け、前後にゆすった。ふたたび2本指を前に突き出す。

「条件の2番めだ。ビルワンジルには、なるべくなら手をを出さないで欲しい。イリナイワノフが泣くし、サイカーラクラが怒る。そうなったら、ワタシも放っておくわけにはいかない」

「他の人はいいの?」

「そんなこと、ワタシに聞くな」ボゥシューの声が大きくなった「ダメだって言ったら、やめるのか?」

「ごめんなさい…」

 ラーベロイカはうつむいた。そして、顔を下に向けたまま、小さな声で、ありがとう、と、つけたした。

「これで話しはすんだ」

 ボゥシューは立ち上がって部屋のドアを開けた。

「もう自由に出歩いていいよ。治療はちゃんと受けるように」

「…あの」

 ラーベロイカは立ち止まったまま、ボゥシューに懇願の眼差しを向けている。

「あの…、ビルワンジル以外で、私に可能性のありそうな人は残ってる?」

「アイツらが、何考えてるかなんて、ワタシにはわからんからなぁ」

 ボゥシューは眉根を寄せて、逡巡しつつも、ラーベロイカの問いに答えようと努力した。

「強いてあげれば、ジムドナルドが暇そうだな」

「ジムドナルド?」

 ラーベロイカの顔が、突然、日が射したようにあかるくなった。

あの(丶丶)、美しい金髪(ブロンド)で巻き毛のジムドナルド?」

 あの(丶丶)くしゃくしゃ頭がそんな風に見えることがあるんだ、ラーベロイカの言葉に、ボゥシューは少なからぬ驚きをおぼえた。

 


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