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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ライザケアル(2)

 

「ボゥシュー、お願いがあるんだけど」

 宇宙船(ボード)に戻ったタケルヒノは、真っ先に実験室に向かい、ボゥシューをつかまえた。

「ライザケアルの特使のことか?」

「知ってるの?」

 ボゥシューは、隣にいたサイカーラクラと顔を見合わせる。

「たったいままで、スラゥタディルが来ていたのです」

 サイカーラクラが言った。

「なるほど、こっちに来てたんだ、道理で、小宇宙船(ダート)に現れなかったわけだ」

「そっちに顔出したら、口も出さずにはいられないから、って言ってたな」ボゥシューは、やれやれという表情を隠さない「あと、タケルヒノが断ったら、ダメもとでいいから口添えしてくれって」

「へぇ」

 タケルヒノは、意外だな、という顔つきだ。

「スラゥタディルは、この件、押してるのか。フラインディルは、僕に断って欲しそうな雰囲気だったけど」

「そりゃ、あの夫婦、意見が違って当たり前だろ、って言うか、意見が合うことがあるのか?」

「ま、そりゃ、そうなんだが」

 タケルヒノは、ほんの少し違和感をおぼえたが、それについては、いまは無視することにした。

「第3惑星まで、特使を迎えに行くことになったんだ。検疫のこともあるから、ジムドナルドと一緒に行ってくれないか?」

「いいよ、イリナイワノフも一緒でいいか?」

「それは、僕も頼もうと思ってた。あと、ビルワンジルだな。そっちは僕が頼んでおく」

「私も行きます」

 突然、サイカーラクラが宣言したので、タケルヒノもボゥシューも、驚いて彼女に顔を向けた。

「行くの?」

「ダメでしょうか?」

「いや、ダメじゃないけど」

「ダーといるほうがいいんじゃないか?」

「まだ、宇宙船の建造に時間がかかりますから、第3惑星に行って帰ってきても、ダーはまだいると思います」

 タケルヒノは、腕組みしてしばらく考えていたが、何か思い至ったようで、サイカーラクラに向かって、言った。

「では、サイカーラクラも一緒で、後は、ジムドナルドに聞いてね」

 わかりました、と言って、サイカーラクラは実験室から出て行った。

「スラゥタディルは、何か言ってたの?」

 サイカーラクラの後ろ姿を見送ったタケルヒノは、ボゥシューに尋ねた。

「いろいろ言ってたよ」

 ボゥシューは、ワザとぼかして言う。

「僕が聞いたらマズイことかな?」

「マズくはないが」

 ボゥシューは躊躇しつつ、言葉をにごした。

「女同士じゃないと、わかりにくいかも知れんな」

 

「特使、って、どんな人なんだろう?」

 ほうれん草を収穫中のビルワンジルの隣で、イリナイワノフが尋ねた。

「前にも来たじゃないか」

 ほうれん草を引き抜く手を止めずに、ビルワンジルが言う。

「え? そんなこと、あったっけ?」

「ヒューリューリーが、そうだろ。最初の話しではそうだった」

「え? ヒューリューリーなんだ。ふーん、じゃあ、また、変な人が来るんだ」

 いや、それは違うだろ、と、ビルワンジルは訂正したが、イリナイワノフには、よくわからないらしい。

「でも良かったぁ。ヒューリューリーみたいだったら、悪い人じゃないもんね」

「いや、だから、違うって」

「え? じゃあ、こんどは悪い人が来るの? ヤダなあ」

 ビルワンジルは手を止め、しばし考えた。

「ジムドナルドが一緒に行くから」ビルワンジルはジムドナルドに責任をおっかぶせることにした「良いヤツか悪いヤツかは、アイツに聞くといい」

「そっかあ」イリナイワノフの口元がほころんだ。やっと納得したらしい「ジムドナルド、そういうの得意だもんね」

 ビルワンジルは肯いて、また、ほうれん草に手を伸ばした。

 

「ライザケアル特使のお迎え、ご苦労であります」

 びゅんびゅんと上半身を振るうヒューリューリー。

「お前は留守番」

 ぺしょん、と、しょげ返るヒューリューリーにジムドナルドは言った。

「だって、俺たちはしょうがないとしても、何かがあって、ライザケアルとサイユルの外交問題、なんてことになったら困るだろう?」

「閣下、それほどに難しい問題でありますか?」

 ヒューリューリーの立ち直りは早い。

 ジムドナルドも調子に乗って、うむ、などと言いながら、わざとらしく胸の前で腕を組んだ。

「特使の迎え、などというものは、そもそも外交上の言いがかりをつけるには最上の機会なのだ。貴殿もいかさま、立場をわきまえられよ」

「諫言、身にしみました。以後、精進いたします」

 ヒューリューリー、と、ダーが呼ぶ声がする。

「キッチンの隙間にパティナイフを落としてしまったんです。取るの手伝ってくれないかしら」

 はいはい~、と元気よく答えたヒューリューリーは、するすると、いなくなってしまった。

「暇だっただけかよ、何でもいいんじゃないか、アイツ」

 ジムドナルドは肩を落として、ソファになだれ込んだ。

 


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