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ワンダー7  作者: 二月三月
超重力の罠

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ライザケアル(1)

 

「宇宙船はどこで造る?」

「第6惑星かなあ」

 タケルヒノの問いに、ジルフーコはコンソールにデータを流しながら答えた。

「木星型の大型惑星だから、大気からの軽元素の収集は十分、衛星も大きいから他の元素もなんとかなりそうだ。あとはベースになる小惑星があるといいんだけど、それは近くに行って探してみないとわからないなあ」

「まあ、それは行けばなんとかなるでしょ。とりあえず、第6惑星に行こうか」

「それはそうと、フラインディルからメッセージが届いてるんだけどさ」

 ジルフーコは、くく、と笑う。

「メッセージ?」

 怪訝そうに、タケルヒノが問いかけの語尾を上げる。

「いつもは、勝手に入ってきて、ぶちぶち言ってるのに、何でまた」

「会って欲しい人がいるんだってさ」

「誰に会えって?」

「ま、読んでみれば」

 タケルヒノはメッセージに目を通した。まわりくどい言い回しで、そちらの都合がつけば、とか、とくに断っても不利になるようなことはない、とか、お願いであって強制ではない、とかいう類似の語句が何度も繰り返されている。

 タケルヒノは、うんざりした顔でジルフーコに視線を送った。

「これって、送り先すらないんだけど、僕あてなの?」

「まあ、そう思ったほうがいいと思うんだけど。なんならスラゥタディルにでも聞いてみる?」

 いや、いいよ、と言って、タケルヒノはメッセージの返事を書き始めた。

 

 返事を送ってすぐにフラインディルは現れた。

 どこかに隠れて様子をうかがっていたのではないかと、疑うほどのすばやさだ。

 もう一人、光子体(リーニア)を連れて来たいと、メッセージにあったので、小宇宙船(ダート)のほうを指定したのだが、タケルヒノが小宇宙船(ダート)に移動するほうが時間がかかったくらいである。

「で、こんどは何だよ?」

 と、ジムドナルド。タケルヒノが着くより先に、フラインディルに問い質している。

 気まずそうなフラインディルの隣に、光子体(リーニア)が1人。

 タケルヒノは、どこかにスラゥタディルがいるのじゃないかと、あたりを見回している。

「あ…、その、彼に会って欲しい…、というか、まあ、彼も単なる使者なんで、ボクのほうから話してもいいんだけど…、ボクはライザケアルの住人じゃないし、その…、第3者的な立場として、あまり立ち入った話しは…」

 もし、様子見に来ているのなら、キレたスラゥタディルが出てきているだろう。そうではないので、いないみたいだ。代わりにタケルヒノが言った。

「どちらでもいいので、早く要件を」

「ライザケアルの特使に会っていただきたいのです」

 フラインディルの隣にいる光子体(リーニア)が、おずおずと申し出た。

「特使、って、あんたじゃないの?」

 言ったのはジムドナルドだが、まあ、ジムドナルドでなくても聞きたいところだ。

「いや、私も使者ですが、私は、本当の特使とあなた方を会わせる合意をいただくための、そのための使者というか…」

「あー、ボクのほうから補足すると」

 フラインディルは、ライザケアルの使者に目配せしながら、話しだした。

「ライザケアルはファライトライメンの隣の胞宇宙(セルベル)だし、双方の光子体(リーニア)の交流も盛んだ。そんなわけで、ライザケアルの技術、文化レベルも、近接胞宇宙(セルパッハベル)の中ではファライトライメンに次いで上位に位置している。ただ、ライザケアルの住民全体からすれば、光子体(リーニア)は少数派で、だから、あなた方に対して、胞宇宙(セルベル)の代表として会うのは、光子体(リーニア)ではない、多数派の特使が必要との考えで…」

「そういう事情はわからないでもないですが」

 タケルヒノは難しい顔を作って、応対した。

光子体(リーニア)なら、距離に関係なく宇宙船(ボード)に来ることはできますが、そうでない人が特使として、どうやって来るんですか? 確か、ライザケアルは、光子体転換技術が伝播してからは、生身の人間の宇宙旅行技術は、あまり進歩していないと聞いてますけど」

胞宇宙(セルベル)内の航宙技術ならライザケアルにもあります」

 使者は言ったが、すぐに声のトーンは落ちる。

「まあ、初歩的なもので、みなさんのようにはいきませんが」

「第3惑星からここまで、どれぐらいかかります」

 タケルヒノはいきなり核心をついた。

「3,4年は…」

「僕ら、そんなに長くはライザケアルにはいませんよ」

 タケルヒノの指摘に、ライザケアルの使者は、押し黙った。

 2人並んだ光子体(リーニア)が、頭を垂れたまま沈黙している。

――このまま、ずっと黙ったまんまじゃ嫌だなあ。

「わかりました」

 結局、タケルヒノが折れた。

「こちらで、第3惑星まで行きます。その代わり、特使の方以外とは、お話しませんので、それはそちらで調整してください」

 ライザケアルの使者は、思わず安堵の表情をあらわした。

 それにひきかえ、フラインディルのほうは、意外、というより不満気な顔をタケルヒノに向ける。

「大丈夫なのか? その…、引き受けたりして、ファライトライメンに行くのが遅れたりとかは…」

「その点は、ご心配なく」タケルヒノはフラインディルの弁をさえぎった「そちらの事情も知りませんけど、奥さんによろしく伝えてください」

 スラゥタディルのことを言われたフラインディルは、もう抗弁をあきらめて、口を閉じた。

 2人の光子体(リーニア)が去った後、シールドを張り直すと、ジムドナルドが言った。

「第3惑星には俺が行くぞ」

 え? という顔のタケルヒノだが、反論より先にジムドナルドが言葉をかぶせる。

「こういうときに、お前が行っちゃダメなことぐらいは、わかるだろ?」

「それはそうだが、ジルフーコはダーの宇宙船を造らなきゃならないんだし、彼に行かせるわけには…」

「ジルフーコは、この件、関係ないだろ。宇宙船造らせておけばいい」

「だって君、操縦できないじゃないか」

「いつの話ししてるんだよ」

 ジムドナルドは豪快に笑った。

「ずっと一緒だったんだぞ。もう宇宙船の操縦なんか覚えたよ。お前、俺のこと、少し見くびってないか?」

 


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