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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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枷付きの未来(3)

 

 ジムドナルドはミーティングルームのソファに寝転んでいた。

 ジムドナルドお気に入りのソファ、と、皆、言うわけだが、実は、ジムドナルドはソファなんか好きなわけではなかった。

 最近、自室にはシャワーと着替えぐらいでしか帰らない。

 もちろん、ミーティングルーム以外でも、ふらふらしてるわけだが、単に、部屋に帰りたくないだけだった。

 ケミコさんの軽い走行音が近づいてくる、ダーがミーティングルームに入ってきた。

「夜食いかがです?」

 ケミコさんの天板の上に、ホットドッグとコーラが載っている。ジムドナルドはホットドッグを取った。

「ずいぶんサービスがいいな」

「もうすぐ、お別れですからね」

 ダーは(アーム)を曲げて、コーラのカップを天板からサイドテーブルに移した。

「ライザケアルに着いたら、新しい宇宙船を作ります」

「そうか」ジムドナルドはホットドッグにかぶりついた「世話になったな」

「楽しかったですよ」

 ダーは言ったが、声はいつもどおり、平坦そのものだった。

「起動してから、こんなに楽しい思いをしたのは、初めてです」

「いつも思うんだが」

 ジムドナルドはサイドテーブルのコーラを取って、いっきに半分飲む。

「あんた、ずいぶん人間ぽいよな」

「それは、わたしが、とても高性能なコンピュータだからですよ」

 ダーは諭すようにジムドナルドに言った。

「計算の速いコンピュータや、頭のいい人間は、あなたや、わたしのようになります。ジムドナルド、わたしはあなたのことがとても心配です」

「俺じゃなくて、サイカーラクラの心配しろよ」

「それはしています。だからボゥシューにお願いしました。ジルフーコもいるし、なんとかなるでしょう」

「俺にもいろいろいるから、心配すんな」

「ヒューリューリーとザワディですか?」

「…いや、そいつらは、数に入れないでくれ」

「優しいジムドナルド」

 ダーは詠うように言った。

「女の子たちのあなたに対する評判は悪くなかったけど、なびく子はいなかった。何故だかわかる?」

「優しすぎるのは、モテないからな」

「いいえ」

 ダーの表情のない表情が、ジムドナルドを包む。

「あなたが、タケルヒノを好き過ぎるから」

 ダーが笑うわけがないのだが、そのときのダーは、笑ったようにしか、ジムドナルドには見えなかった。

「でも、心配しないで」

 ジムドナルドの心を知ってか知らずか、ダーは言葉を止めない。

「そんなことぐらい、モノともしない、素敵な子がきっと現れるから」

「そういう、予言者みたいな言い方はやめてくれ」

 さすがにジムドナルドも憮然として、コーラのカップをテーブルに戻した。

「地球にいたころ、そういうやつらとよくつるんだが、何人かはホンモノだった。いまのあんたにそっくりな言い方するんだ」

「まあ、それは、既定事項だから、ほんとうは、どうでも良いのだけど」

 ダーはいったん言葉を切り、口調が変わった。

「ここからが、本当のお願い。わたしの最初で最後のお願いですから、きちんと聞いてください」

 えらく、あらたまって、気持ち悪いな、と、おどけながらも、ジムドナルドはソファから立ち上がり、ダーにきちん(丶丶丶)と向いた。

「ジムドナルド、あなたは、デルボラのようにはならないで」

「デルボラ?」

「デルボラは、宇宙皇帝の名前。彼しかいないから、あの胞宇宙(セルベル)デルボラ(丶丶丶丶)と呼ばれている。デルボラは、第一光子体(ピスリーニア)がとても好きだった。いいえ、違う。たぶん、いまでもずっと好きなのだと思う。他の何も見えないくらいに」

 


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