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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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枷付きの未来(2)

 

「ええっと」

 ボゥシューの顔色を伺いながら、リーボゥディルが言う。

「もう、普通に宇宙船(ボード)に来ていいんですよね」

「かまわんが」

 ボゥシューが答えた。

「もうすぐ胞障壁(セルレス)だから、ライザケアルに着いてからでも良くはないか?」

「ライザケアルに着いたら着いたで、また来ます」

 かまわんが、とボゥシューは繰り返したが、正直、少々うざい。

「ライザケアルはいいところですよ。何度も行きました。案内しますよ」

「頼もしいな。でも、ライザケアルには降りないんじゃないかな」

「どうしてです?」

「次がファライトライメンだからな。早く、そちらに着くのを優先するんじゃないかな」

「ああ、そうですね」

 リーボゥディルは言ったが、落胆した気配はない。それはそうだ、そのファライトライメンこそが、彼の故郷なのだから。

 

「何故、嘘をついた?」

 ビュッフェで2人きりになったとき、ボゥシューはタケルヒノに聞いてみた。

 飲んでいたチョコシェークが、いきなりどこかに入ったらしい。ひどい勢いでタケルヒノがむせ出した。

 ボゥシューは、しばらく、そのままタケルヒノを見つめていたが、鼻をかんだり、咳をしたりと、いそがしくするのに、タケルヒノはなかなか話し出さない。

 どの嘘かわからないんだな、と理解したボゥシューは、誘い水を出してみた。

「20パーセントに制限するのは嘘だろ? 何故、あんなことを言った」

 タケルヒノの顔が、ぱぁっと明るくなった。バレたくない嘘は他にずいぶんあるようだが、とりあえず、そっちは詮索しないことにした。

「落とし所かな」タケルヒノは言った「実際にはサイユルのケミコさんに使ったプログラムに手を入れて制御するようにしてある。ティムナーの成長にあわせて、供給エネルギーの上限は徐々に変化していくよ」

「何故、きちんとそう言わない」

「リーボゥディルの父親がなあ」

 タケルヒノは、さも、他人のせいだと言わんばかりに嘆息する。

「彼ばかりじゃないけど、知的生命体の成長過程をコンピュータまかせにすると、怒るやつが出るんだ」

「一律20パーセントより、だいぶマシだろ」

「そうだが…、説明が面倒だ」

「バレたら困るだろ」

「バレないよ」

「何故、言い切れる」

「ティムナーに、その時々に必要な総エネルギー量なんて、誰にもわからないから。100パーセントがわからないのに、20パーセントなんてわかるわけがない。だから適当でいいんだよ」

 ボゥシューは笑った。

 たぶん、こうやって、バレない嘘をつくんだな。

 これからも、ずっと。

 

「宇宙服が重くなったのは、無限大の攻撃を跳ね返すためですか」

「そういうことですよ」

 ジルフーコはサイカーラクラのまねをしてみたのだが、あまりうまくいかない。下手すぎて、サイカーラクラは、モノマネであることすら気づいていない。

「何故、そういう攻撃をされるとわかりました?」

「わからなかったけど、用心にこしたことはないからね」

「無限大の攻撃なんか、普通、しませんよ」

「そうだね。相手が賢ければね」

 サイカーラクラは、とても不思議そうな顔で尋ねた。

「ジルフーコは、頭のわるい人が何を考えているか、わかるのですか?」

「わからないよ。そんなこと」ジルフーコは笑った「でも、何をするかぐらいはわかるよ。そういうときは考えなしだからね。何も考えてないときってのは、驚くほど行動は単純だ」

 

「お疲れ様だったな」

 ダーに頼まれて、ビルワンジルはイリナイワノフにプリンアラモードを持ってきた。

「わあ、ありがとう」

 早速、パクつく、イリナイワノフ。

 ビルワンジルはパインジュースで相伴した。

「でも、2発め撃たずにすんで良かった」

「そうか?」ビルワンジルはおどけながら眉をひそめて見せた「練習はしといたほうが、いいだろ?」

「そうかな?」

 イリナイワノフは口に運ぶ途中のスプーンを止めた。

「練習でも、やらずにすむなら、やらないほうがいいこともあるよ」

「ああ、そうだ」ビルワンジルも言った「やらないほうがいいことは、いつだってやらないほうがいい」

「練習と本番なんて、どっちもおんなじだしね」

「そうだな」

 ビルワンジルは笑った。

「練習と本番が違ったら、それは失敗だもんな」

「どっちが失敗なの?」

 イリナイワノフが聞いた。

「どっちも失敗だよ」

 ビルワンジルが答えた。

 


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