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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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無限への誘い(9)

 

 ルミザウの反論にも、ジムドナルドは、ふん、と鼻を鳴らした程度で相手にもしない。

「どうです? 無尽蔵の、汲めども尽きない泉に興味はありませんか?」

 ジムドナルドでは埒が明かないとみたのか、ルミザウは、タケルヒノとジルフーコに話しかける。

「その件についてはジムドナルドに委せてあるので」

 タケルヒノは仮接続のコンソールから目を離すことなしに答えた。

「彼が納得しなければ、僕のほうから言うことはありません」

「手が空いたら話しぐらいは聞くよ」と、ジルフーコ「あまり興味ないけどね」

 どちらも、とりつくしまもない。

「あなた方はどうです?」

 ルミザウは、やっとボゥシューとサイカーラクラの方を向いた。

「無限のエネルギーを手にしたいとは思いませんか?」

「私は、たかだか数えられる無限で精一杯なので」

 サイカーラクラは答えた。

「数えられない無限の方は、他の方におまかせします」

「実験したい気持ちは、わからないでもないが」

 ボゥシューが言う。

「やりたくなったら、自分でやるし、そっちの手伝いなんかする気はないな。アナタも実験したいのなら、他人の設備を拝借するのじゃなく、自分の力でやれば良いのじゃないか?」

 ボゥシューの最後の言葉が気に障ったのか、ルミザウの体が赤く輝きだした。

「侮っていますね。光子体(リーニア)には、たいしたことはできないと」

 実際そうじゃないか、とジムドナルドは思ったものの、火に油を注ぐことになりそうなので、黙っておいた。

 他のみんなも同じだったのだが、それがかえってルミザウの感情を逆なでしたらしい。

 無いと思っていたルミザウの表情に険がさした。

「下手に出ているからと、つけ上がりやがって、目にもの見せてやろうか」

 ルミザウの体が3倍にも膨れ上がり、光の縞模様が体中を覆った。

「やめといたほうが良いと思うよ」

 ここではじめて手を止めたジルフーコは、ルミザウに向かって、言った。

「前にも同じようなことを言った光子体(リーニア)がいた。あんまり楽しい結果にはならなかった気がするな…。えーっと、なんだっけ…、確か名前が…」

タルなんとか(丶丶丶丶丶丶)

 ジムドナルドが助け舟を出した。

「そう、それ、タルなんとか(丶丶丶丶丶丶)

「タルトレーフェン」

 ルミザウが絶叫した。

「あんなばかもの(丶丶丶丶)と一緒にするな。貴様ら。もう容赦せ…」

 突然、ルミザウの姿がかき消えた。

 ジルフーコは黙って元の作業に戻った。タケルヒノはコンソールから顔を離すこともなかった。

「何だ、いったい、何をしたんだ」

 ルミザウがいなくなって、静かになったと思ったら、フラインディルが現れて騒ぎ出した。

――やっぱり帰ってなかったのか

 手を止めたタケルヒノが、ジムドナルドに視線を投げた。

「新手は引き受けるって言ったけどな」

 ジムドナルドはタケルヒノの視線に気づいたが取り合わない。

「こいつは古手だろ。俺よりお前の管轄だよ」

「ルミザウお気に入りの無限エネルギーを開放したんだ。それをはね返されて消し飛んだ」

 虚空に声が響く。

 引き受け手は意外なところから現れた。

 渦上の集光が瞬く間に人型をとる。それを見たフラインディルが驚きの声を上げる。

「レウインデ」

 フラインディルの叫びに、レウインデは和やかに応じた。

「やあ、お久しぶり、ラクトゥーナル。アグリアータは元気?」

「元気だが…、貴様、何故、ここに」

「君と同じ理由だよ」

 レウインデは、とても楽しそうだ。

「ルミザウには何度も口をすっぱくして、言い聞かせたんだけどね。言うこと聞かないんだよねぇ。もう疲れちゃったんで、消えちゃえ、っていつも思ってたんだけど、いざ、消えちゃうと、ちょっと寂しいかな」

「消えたって、どういうことだ?」

「次元変換駆動の無限エネルギーの解放だよ。あそこで作業してる2人、本来なら真っ先に安全装置かけ直すのに、ほっとくんだから。いじったらヤバいくらい、想像つきそうなものなのに」

 ジルフーコはヘルメットの中でニヤリと笑った。あるいはレウインデには気づかれていたかもしれない。

「罠をしかけた、って言うのか?」

「罠ではないです」

 作業に一段落つけたタケルヒノが、コンソールから目を離した。

「従来の安全装置は単純に余剰エネルギーにフタをするだけだから、もう少し、柔軟に制御できるように構造を変えました。そのため、古い装置に戻すわけにはいかなかった」

「制御機構を変えたって?」

 こんどは驚くのはレウインデのほうだった。

「どういうことだい? ずいぶん面白そうな話しじゃないか?」

「どういうことだ?」

 同じ言葉を使っても、フラインディルのほうは、ずいぶん調子が違う。

「エネルギーの奔流を止めるんじゃなかったのか?」

 タケルヒノは困った顔をした。ヘルメットに隠れてどうせみえないだろうが、本当はちゃんと見て、もっと控えて欲しいと思った。

「仕事が終わるまで、少し待っててくれないかなあ」

 タケルヒノは言った。

「ジャマさえなければ、あと30分で終わる、話しが聞きたければその後にしてください」

 

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