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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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無限への誘い(5)

 

「どうした、難しい顔して」

 ジムドナルドはいつものソファでなく、タケルヒノのとなりの椅子に腰掛けた。

「そんなに、ビルワンジル置いていくのイヤか?」

「え? いや、そっちのほうは、大丈夫だけど…」

 ジムドナルドがタケルヒノのコンソールをのぞき込んだ。

「第4惑星の外部エネルギー供給が止まったときの予測、か…」

 読み終えたジムドナルドは、しかめっ面をタケルヒノに向ける。

「やめとけ、こんなもん。迷える子羊どもはな、羊飼いが餌をくれなきゃ文句たらたらだし、やったらやったで、また文句だ。だからと言って取り上げれば、また文句。けっきょく、何やったって文句しか言わないんだから、気にかけてやるだけ無駄だ」

「そう言うなよ」タケルヒノは笑った「彼らだって、頼んでエネルギーを分けてもらってるわけじゃないんだし」

「前にも言ったろ。お前には悪いところがむちゃくちゃたくさんあるが、そのうちのひとつだぞ。いいか、他人の尻拭いなんか、金輪際やめろ」

「それを言ったら、この旅そのものが、誰かさんの尻拭いだってば」

 やれやれ、ジムドナルドは深々と嘆息した。

「じゃあ、言い方を変える。これ以上、尻拭いの相手を増やすな」

「その新しい相手に、宇宙皇帝は入るのか?」

「宇宙皇帝は古いほうだろ。最初の光子体(ピスリーニア)がらみなんだから。こいつは、宇宙皇帝がらみかもしらんが新手だ。タルなんとかみたいなヤツだ」

「そう言えばいたな、タルなんとか」

「そうだ」

 ジムドナルドはタケルヒノに向き合い、自分の両手で、がっしりと相手の両肩をつかんだ。

「もうタルなんとかみたいなやつの相手はしなくていい。そっちは俺がやるから、お前は、お前の仕事をしろ」

 

 ビルワンジルは菜園の野菜を収穫している。トマトは多めに、とダーに言われているので、とくに大ぶりのトマトを選んだ。数でカバーするのはビルワンジルの好みではないのだ。

 ふと、顔を上げると、遠くのほうをイリナイワノフが走っていくのが見える。ビルワンジルは収穫の手を止め、大きく手を振った。

「おおい、イリナイワノフ」

 立ち止まったイリナイワノフは、一瞬こちらに顔を向けたが、何故だか、猛スピードで走り去ってしまった。

 いつもと様子が違うので、ビルワンジルも驚いて、ただ唖然としていた。しばらくしてから、追いかけたほうが良かったかな、とも思ったのだが、そのころにはイリナイワノフの姿は影も形もなかった。

――何か、気に障るようなことしたかな

 ビルワンジルは考えたが、何も思い当たらなかった。

 

「あ、サイカーラクラ」

 ジルフーコがサイカーラクラを呼び止めた。

「このあいだ頼まれた宇宙服ね、あれ、重くなるから」

「重いのですか」

「そう、重いよ、ものすごく重い」

「ボゥシューの指定で、何か重くなりそうなものありましたか?」

「無いよ。ボクが重くしたんだもの。ボゥシューとイリナイワノフにも伝えといてね」

「わかりました、が」

 サイカーラクラは、不可解、を顔の全面に隠しもせずに貼り付けたまま、問うた。

「どうして、私たちだけ重いのですか? 筋力トレーニングが必要なのでしょうか?」

「別にキミたちだけじゃないよ」

 ジルフーコはいたずらっぽく笑った。

「7人全員の宇宙服が重いんだ。ヒューリューリーとザワディは重くしないけどね。彼らの分は、まだ調整に時間がかかるから」

 

「やっと、ふっきれたようですね」

 実験室にやってきたダーが、ボゥシューに言った。

「何のことだ?」

第一光子体(ピスリーニア)の宇宙船に行くのでしょう?」

「ああ、そのことか」

 ボゥシューは、手にしていたピペットをホルダーに戻し、ダーに向き合った。

「自分のやりたいことをすることにした」

「もう我慢はしないのね?」

「我慢は別のところでするよ。でも、やりたいことを我慢するのはやめる」

「良いことです」

 ダーは言った。

「タケルヒノに頼まれたのです。わたしがいなくなっても、ボゥシューが大丈夫なようにしてくださいと」

「忘れてた」

 ボゥシューはとても驚いた。

「ダーはいなくなるんだったな。何かずっといてくれるんだと、いつの間にか思ってた」

「もう、わたしがいなくなっても大丈夫ですね」

「我慢するよ。もう行くの?」

「まだですけど、そう遠い将来でもありません」

「サイカーラクラは?」

 ボゥシューの問いに答えるのに、ダーはそれなりの時間を要した。

「サイカーラクラは、まだ無理。たぶん、間に合わない」

 ダーは言う。

「だから、ボゥシュー、あなたにお願いしたい。サイカーラクラを守ってあげて」

 


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