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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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無限への誘い(4)


「ボゥシューとサイカーラクラも行くって?」

 タケルヒノがミーティングルームに入った途端、ジムドナルドが声をかけた。

「あ、ああ、なんか、そうみたいだね」

「そうみたい、って、お前が許可出したんだろ?」

 タケルヒノはジムドナルドには答えず、横を通りかかったダーを見つめる。

「私は何もしていませんよ」

 ダーは言うのだが、本当に何もしていなければ、そんなこと言うはずもない。

「いえ、そうではなくて、留守中、よろしくお願いします、と言いたかっただけで…」

「残るのはイリナイワノフだけ?」

「そうなりますが、彼女には別の件で待機してもらわなければいけないので、実質、あなた一人にお任せ、ということになりますが…」

「なんと、私をお忘れですか」

 いきなりヒューリューリーが体を回しだした。

「ザワディもいます。むしろ本艦の守りは万全と言えるでしょう」

「それについては、そうだけど…」

 何か言いたげなタケルヒノを先回りして、ダーが言う。

「ヒューリューリーもザワディも、棚の上のものを取ってもらうには不向きですね。誰か残していってくださる?」

 タケルヒノは、あきらめ顔でビルワンジルの側まで歩いて行った。

「残ってもらって、ダーのサポートをお願いできるかな?」

「オレは、かまわんが」

 ビルワンジルは、バイバイ、と手を振るジムドナルドとジルフーコに、片目ををつぶって見せた。

「そっちは、大丈夫なのか?」

 うーん、と唸ったタケルヒノだったが、それも一瞬で、掌を上に大きく両腕を開いた。

「なんとかはなる。なんとかなるさ。いままでだって、なんとかなってきたんだ」

 ビルワンジルに答えるというより、自分に言い聞かせるように、タケルヒノは言った。

「あの、おちゃらけ夫婦は来るのか?」

 ジムドナルドがタケルヒノの背中に質問を浴びせた。

「来るな、とは言ってあるが」

 タケルヒノは振り向きもせずに言う。

「2人とも他人の言うこと聞くようなタイプじゃないからなあ」

「息子は?」

「遺伝でも環境でも、危ないところに、わざわざ、首を突っ込むように育った可能性が、非常に高い。本来なら親がみるべきだろうが、あの親じゃ、こころもとないんだが…、まあ、ボゥシューもいるし、なんとかなるだろう」

「ゴーガイヤは?」

「さすがに彼は、僕の管轄じゃないんじゃないか?」

「勢いで聞いてみただけだ。気にすんな」

 ジムドナルドは大声で笑った。

 

「え? 2人とも行くの?」

「そうだ」

 ボゥシューが、あっけらかんと、イリナイワノフに言った。

「イリナイワノフは、こちらでお仕事あるんでしたっけ。一緒には行けませんが、3人で宇宙服をお揃いで新調しようかと思うのですよ。どうでしょう?」

 サイカーラクラの、気を使ってるんだか、使ってないんだか、よくわからない言い回しに、イリナイワノフは困惑している。

「いや、宇宙服はどうでもいいんだけどさ。じゃあ、あたし、ひとりだけなの?」

「ダーが、いますよ」

「そりゃ、ダーはいるけどさ」

「ヒューリューリーもいるぞ」

「いるね。確かに」

「ザワディ、いますよ」

「…」

 ボゥシューとサイカーラクラは、互いに顔を見合わせ、同時に言った。

「ビルワンジルが代わりに残る」

「ビルワンジルが、私たちの代わりですから、大丈夫です」

「ちょ、なにそれ、ビルワンジル?」イリナイワノフの反応はあからさまだった「何でビルワンジルなの、ちょ、よくわかんないんですけど、なにそれ」

 イリナイワノフの顔が、真っ赤になって、意味もなく、わたわたしだす。

「ダーが、棚の上のものを取ってもらいたい、とかで。ビルワンジルが背が高いので、ビルワンジルになりました」

「背がたかい、とか、どーでもいいじゃん。それよか、ビルワンジルと2人っきりとか、ありえない」

「ダーがいるだろ」

「ヒューヒューさんもいます。それにザワディも」

 あー、あー、あー、と叫んで、イリナイワノフは、頭をぶんぶん振った。金の柔らかな髪が、うそみたいに、ふわりと舞う。

「あー、なんだか、わからないから、ランニング行ってくる」

 言うより早く、部屋を飛び出たイリナイワノフの背中を視線で追いながら、サイカーラクラが言った。

「見込みあり、で、いいんでしょうか?」

 よくわからん、と、ボゥシューが首を傾けた。

 

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