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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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14/251

4:3(3)

 

「ネコのエサ?」

 ボゥシューの眉根があがる、が、怒ったわけではなさそうだ。純粋に興味のあるときもボゥシューはこういう表情をする。

「タケルヒノに、オーダーシステム内で合成できるもの、って念押しされてるんだ」ビルワンジルは神妙な顔で説明を追加する。

「本当にネコが食べるようなものじゃないとダメなんだな」

「そうだ」

 ボゥシューは目玉をくりくり回して一心に考えている「しかも、本番まで試せない」

「そういうことになる」ビルワンジルは心配そうだ「やっぱり、難しいか?」

「うーん、難しいというか、よくわからない」

「だよな」そう言って肩を落とすビルワンジルに、ボゥシューは、あわててつけたした。

「いや、できないわけじゃない、わからないだけなんだ。降下当日までいろいろ作ってみるから、それ全部持ってって試してみて」

「ありがとう」

「いや、でも、あんまり期待しないで」うれしそうなビルワンジルの顔に、言い訳しながらボゥシューが続ける「ネコ科の好みはよくわからないんだ。努力はするけど」

 

「秘密兵器?」

 ジルフーコのうさんくさげな視線に答えて、ジムドナルドが、うんうん、とうなずく。

「言ってる意味がよくわからないんだけど」

 重ねて問い質すジルフーコに、しばらくジムドナルドは考えて、とりあえず話しだした。

「なんていうかな、ほら、結局、タケルヒノが心配してるのは、俺が危ない目に合うんじゃないかって、そういうことだろ?」

「うん、まあ、簡単に言えば、そうだね」

「だからさ、相手が襲ってきた時に、ババババーッ、てやっつけられるようなヤツがあれば、タケルヒノも安心するんじゃないか?」

「ババババーッ、て、何?」

「だからさぁ、映画とかであるじゃないか、ピカッと光ったり、電気ビビビビッ、て感じで、周りの人間が、うわぁ、とか言って倒れるヤツ、ああいうの、なんとかならない?」

「トラブル起こさずに、慎重に行動する、とかいう発想ないの?」

「理想を言えば、そうだけど…。俺、地球にいた時にやった実験(丶丶)の後始末しなきゃいけないんだ」

実験(丶丶)って、社会宗教学のか?」

「ああ、まぁ…」

「物騒な話だな」

「うん、実は、そうなんだ」

「まじめに言うんだけど」ジルフーコはジムドナルドの目を見据える「それって放っておくわけにはいかないの?」

「それがいちばん正しいと思う」意外にもジムドナルドは素直に認めた「でも、俺、馬鹿だから」

 はじめてジムドナルドと意見が一致した気分になった。

「わかった。なんとかする」

 いつのまにかジルフーコはそう言ってしまっていた。

「すまん、恩に着る」

「そのかわり、何を作るかはこっちにまかせてもらうよ」ジルフーコはこう言って歯止めをかける「そんなに都合のいいものなんて、できっこないからな」

 

「敵、ですか?」

 問われたサイカーラクラはもちろん、尋ねたイリナイワノフすら当惑している。

「ごめん、サイカーラクラ。あまり良い言い方が思いつかなかった」

「いえ、あなたの言いたいことはだいたいわかります。わかりますけど…」サイカーラクラは考えをうまくまとめきれない「私が読んだ(ほん)の中には戦闘の記述はかなり多い、でも、それが史実なのか、単なる物語にすぎないのかを判断するのはとても難しいのです。ある程度の共通点はあるようにも思えますが、精密な分析となると…」

「そんな難しい話でなくていいの、たとえば、人間とは違う、とか…」

「人間とは違います」サイカーラクラは断言する「捕縛することがほぼ不可能という記述は非常に多い、ただ地球上の物語でも精霊(スピリット)の記述がかなり近いので、実際の相手を形容したものか、架空のものなのかよくわからない」

「そういうの」イリナイワノフが意気込んで言う「そういうのが聞きたい。なんでもいい、はずれてたって構わない、それも含めて話せばあの人(丶丶丶)が対処法を示してくれると思う」

「その程度で良ければまとめておきますが」

「ありがとう、助かる」

「ロシア語で良いんですか?」

「え?」

「あなたが読むのではないようですが」サイカーラクラが説明する「イリナイワノフ、原語(セルレス)で書き下して、あなたが読んで伝えてもいいですけど、面倒ではありませんか?」

「あ、もちろん、ロシア語で」イリナイワノフは本当にうれしそうに感謝の意を伝えた「ほんとうにありがとう、サイカーラクラ、ほんとうに」

 

「おーい、タケルヒノ」

「やあ、ボゥシュー」

 無重量区画、ドック前で作業するタケルヒノに向かって、ボゥシューが飛んできた。

「もう、さんざん言われて、耳にタコができてるんじゃないかと思うけど」ボゥシューは彼女にしてはめずらしく、きわめて控えめにお願いした「地球に降りるのって、やっぱり四人じゃ、ダメかな?」

 うーん、タケルヒノはうなって、しばし熟考している。心配そうにのぞき込むボゥシューに目を向けると、答えた。

「ぜったい無理、というほどではない」

 え? タケルヒノの意外な言葉に、ボゥシューはすぐには反応できなかった。

「綱渡り的ではあるけど、まあ、なんとかならないわけじゃない。いちおうツテもあるし…」そしてタケルヒノは目元をちょっぴり緩めた「それに、ダメっていったら、自分があきらめるつもりなんだろ、ボゥシュー」

「…え? まぁ…」

 ボゥシューは、耳まで真っ赤にして、小さくうなずいた。

「ほんとうはビルワンジルにあきらめて欲しかったんだけど、無理だろうなぁ。いろいろ問題はありそうだけど、がんばってみるよ」

 


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