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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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複合衝撃(4)


「リーボゥディル、リーボゥディル」

 サイカーラクラが、リーボゥディルを呼びながら、ぱたぱたと駆け寄ってきた。

「何か用ですか?」 

 リーボゥディルは廊下の真ん中に浮いている。

「ボゥシューが探してましたよ」

「何だろう?」

「しばらく会えないから、お母さんの言うこと聞いて静かにしているように、だそうです」

「あ、これから胞障壁(セルレス)なんですね。わかりました、また来ます」

「それは、もちろん、そうなのですが」

 サイカーラクラは、まだ言いたげだ。

「実は、次の胞宇宙(セルベル)、ティムナーにいる間は会えないのです。次に会えるのは、ライザケアルに着いてから、ということになります」

「どうして?」

宇宙船(ボード)の警戒レベルを上げます。あなたが宇宙船(ボード)に入るのに使っている同調ゲートも閉めます。入れません」

「何か、大変そうですね」

 リーボゥディルが心配そうに言う。細かい事情を聞いてみたい気もするが、そこはリーボゥディルもわきまえて、我慢した。

「ありがとう、サイカーラクラ。それじゃ、ボゥシューにあいさつしてきます」

「ボゥシューは実験室にいます。もうすぐ胞障壁(セルレス)です。急いで」

 リーボゥディルは、もう一度、サイカーラクラに礼を言うと、廊下の壁を突き抜けて、消えた。

 

「というわけで、しばらく会えないけど、元気にしててね」

「うん、姉さんも、兄貴も元気で」

 ゴーガイヤはそう言ってから、ふと思い出したらしく、付け足した。

「レウインデにも言ったほうがいいか? ティムナーは、ダメだ、って」

「言わなくていい」

 ビルワンジルが言った。

「レウインデは、知ってる。だから、ゴーガイヤが言う必要はない」

 そうか、と言い残し、ゴーガイヤは渦巻く光になって、ゲートに消えた。

 ゴーガイヤが帰ったあと、イリナイワノフが、ぽつり、と言った。

「あたしたち、ゴーガイヤの役に立ててるのかな?」

「そこそこ、役には立ってるんじゃないか?」

 ビルワンジルが言った。

「パラレスケル=ゼルで会った時は、びっくりするぐらい、元気なかったが、体もずいぶん大きさを取り戻したし、なにより、輪郭がはっきりしてきて、人がましくなった」

「そうかな」

 イリナイワノフが顔をビルワンジルに向け、たまたま、リボンで結わえていない金の髪が、ふわり、と巻いた。

 ビルワンジルは、ちょっと得した気分になった。

「最初会った時は、もっとずっと大きかったけど、大きいだけで薄ぼんやりしてたから、なんだかよくわからなかったんだよね」

 イリナイワノフはしみじみ言う。

「ジムドナルドは、ゴーガイヤ相手に、やたら丁寧に話しててさ。何で、こんなのに? って思ったんだけど…。やっぱり、見た目だけで判断しちゃダメだよね」

「いや、見た目は大事だろ」

 めずらしく、ビルワンジルが反論した。

「少なくとも、オレは、会って最初は見た目で判断するな」

「それは、ビルワンジルが面食いなだけでしょ」

 イリナイワノフは笑った。その笑顔を見ながら、今日はずいぶん良いことが多いな、とビルワンジルは思った。

「そう言えばさあ、ビルワンジルの初恋の人って、すっごい美人なんだよね。写真とかないの? 見てみたい」

 鏡でも見れば? と言いそうになったビルワンジルだったが、ここまで我慢したわけだし、そんなに気軽に言ってしまうのも悔しい気がして…。 なんとなく、笑ってごまかした。

 

「そろそろ胞障壁(セルレス)だな」

 ボゥシューが言った。

「そうですね」

 ダーが応える。

「管制室に行かなきゃ」

 ボゥシューが宇宙服に着替えるのを眺めながら、ダーが言った。

「あなたたち、いつも胞障壁(セルレス)を超えるときは、あの部屋に行くのですね」

「変かな?」

 ヘルメットに手をかけたボゥシューは、かぶるのをやめて、ダーに顔を向けた。

「変ではありません」ダーが言う「ちょっと羨ましいだけです」

「うらやましい?」ボゥシューはダーの言う意味が本当にわからなかった「何が?」

「わたしは、今のところ認識できる胞障壁(セルレス)に遭遇していませんから」

「なるほど、そうか」

 ボゥシューは言ったが、あまり心の底からの賛同ではないようだった。

胞障壁(セルレス)は、正直、あまり好きじゃない」

「どうして?」

「自分が自分でなくなる気がするから」

 ボゥシューはヘルメットをかぶり、入り口に向かう。

「では、普段のボゥシューは、どんなボゥシュー?」

 ボゥシューは立ち止まって振り向いた。ヘルメットの遮光バイザーは暗く、ボゥシューの表情はダーにはわからなかった。

胞障壁(セルレス)の中のワタシが、本当のワタシなのかな?」

「それは、わかりませんけど」

 ダーはボゥシューの後ろから、管制室へと向かう。

「普段のボゥシューはとても素敵ですよ」

 


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