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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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複合衝撃(2)

 

「準備はだいたい終わった?」

 並んでコンソールに向かって作業を続けるタケルヒノに、ジルフーコは声をかけた。

「終わったか、な?」

 タケルヒノは椅子を回してジルフーコのほうに向いた。

「そろそろ、衛星軌道を離脱して、惑星軌道に入らないといけないな」

「出来栄えの確認くらいはしないの?」

「したって、どうなるものでもないからなあ」

 その件に関しては、タケルヒノに、さして興味はないらしい。

「カメラ衛星を置いておくよ。見たい人もいるかもしれない」

「ご自由に」

「ボクは、適当なところで見学するので」

 聞いてもいないのに、フラインディルが言う。

「つまり、その、ボクのことは、あまり気にしないでくれ」

 もともと気にしていないが、言ったら角が立ちそうなので、タケルヒノもジルフーコもそのことについては触れなかった。

「ハリューダンの次はティムナーに行くのかい?」

「そうだけど」

 フラインディルの問いにタケルヒノは応じたが、フラインディルはその次の言葉を言いにくそうにしている。

「いや、これは、あなたたちとは直接は関係ないんだが…」

 結局、しどろもどろしながら、フラインディルは話しだした。

「ボクも、ちょっとティムナーに用があって、たぶん…、その、あなたたちには、まったく関係ないことなんだが。そちらも寄るのなら、ボクもまた会いにくるかもしれないので」

 面倒くさい話しかたするなあ、とタケルヒノは思ったが、フラインディルの性格だし、しかたないんだろうな、と我慢した。こう言ってはなんだが、スラゥタディルがキレそうになるのもわかる。思うに、彼女は、よほど辛抱強いのだろう。

「あなたの用って、何ですか?」

 いつまでたっても要件を切り出しそうにないフラインディルに、タケルヒノは仕方なく、水を向けてみた。

 その言葉に、安堵の表情を隠さず、フラインディルが話しだす。

最初の光子体(ピスリーニア)の宇宙船を返してもらおうとしてるんだが、なかなかうまくいかなくて…」

第一光子体(ピスリーニア)の宇宙船?」

 タケルヒノが聞き返した。

「ティムナーにも乗り捨ててたんですか?」

「ほう、面白そうな話しだな」

 部屋のすみのソファから、ジムドナルドが起き上がった。

「寝てたんじゃなかったの?」

 ジルフーコが笑う。

「寝てたさ」ジムドナルドは片目をつぶって見せた「いま起きたところだ」

 ジムドナルドまで参入されては、フラインディル、あまりに分が悪い。何か言いたそうに口を開くが、すぐ押し黙ってしまう。

「あの、ゆっくりでいいですから、落ち着いて話してください」

 タケルヒノが諭しても、フラインディルはなかなか要領を得ない。ダーでも呼んだほうがいいかな、とタケルヒノが考えていると、突然、真上から声がした。

「あとは、あたしが話します」

 アグリアータ、と思わず叫んだ、ラクトゥーナルは、彼女に睨みつけられて、しまった、という顔をした。

「あ、あの…、スラゥタディル」

 フラインディルは、たどたどしく尋ねた。

「リーボゥディル、は?」

「ボゥシューに預けてきましたから、心配しないで」

 スラゥタディルは、フラインディルではなくてタケルヒノを見て言った。

「僕としては、話してくれるのなら、誰でも良いので」

 タケルヒノは夫婦間のことには立ち入らないことにした。

「説明お願いします、できれば、手短にわかりやすく」

 スラゥタディルは、一瞬だけ、有無を言わさぬ眼差しをフラインディルに向けた。フラインディルが黙ったままなのを確認して話しだす。

「ティムナーの住民とは、最初の光子体(ピスリーニア)は接触はしていないんです。ティムナーのどこが、彼の眼鏡にかなわなかったのかはわかりませんが、最初の光子体(ピスリーニア)は、ティムナーを素通りしました。でも、彼らは、ティムナーの住民たちは、苦労して、最初の光子体(ピスリーニア)が乗り捨てた宇宙船にたどり着いた。宇宙船の技術や情報キューブの内容は理解できなかったようですが、たまたま開きっぱなしだったエネルギー伝送ビームの方向を彼らの惑星に向けることに成功しました」

最初の光子体(ピスリーニア)が、ずぼらで、いいかげんな性格なのはよくわかった」

 ジムドナルドがここまでの話しを論評し、スラゥタディルはとくに反論はしなかった。

「最初は小宇宙艇を駆動できる程度のエネルギーしか漏れでていなかったので、こちらも気が付かなかったのですが、ある時期を境に流れ出るエネルギー量が膨大なものになったのです」

「どうも、ちょっと、よくわからないところがあるけど」タケルヒノが口をはさんだ「その情報は正確ですか?」

 え? とスラゥタディルが戸惑いの表情を見せた。

「あたしが嘘をついていると?」

「いえ、そうじゃありません」

 タケルヒノは笑いながら答えた。

「そんな短い話の中でも、辻褄の合わない部分が多すぎて、スラゥタディル、あなた、その話しの中でご自分で確認できている部分はどこですか?」

「膨大なエネルギーがティムナーに流れ込んでいる、というところです」

第一光子体(ピスリーニア)の乗り捨てた宇宙船には行ってみた?」

「ボクが行ったんだけど」そこはフラインディルが補足する「シールドのせいで中に入れなかった」

「その宇宙船を乗り捨てた時は、お二人は同行していなかったようですね」

 フラインディルとスラゥタディルはここで顔を見合わせたが、タケルヒノのほうを向くと、2人同時に肯いた。

「だいたい、わかりました」タケルヒノは何かあきらめたような顔で言った「なんとかします。詳しい話しはティムナーに着いてからで」

「おい、また、そんな安請け合いして、いいのか?」

 ジムドナルドが、にやにやしながら言う。

「しかたないだろ」タケルヒノは憮然とした顔だ「僕が引き受けなきゃ、君がやってしまうじゃないか」

「そりゃ、そうだが」

 ジムドナルドは悪びれる様子すらない。

「俺がやって、何か悪いことでもあるのか?」

「君は話しを面白くしすぎる」

 タケルヒノは真顔で言った。

「もう、ティムナーまで行けば、ファライトライメンにも近いし、あまり余計なことで時間を取りたくないんだ」

 

 

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