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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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135/251

複合衝撃(1)

 

「やあ、こんにちは」

 フラインディルがぎこちない笑みを浮かべて現れた。当人も不自然なのは意識しているようなので、ジルフーコは、そこには突っ込まないことにした。

「何か用?」

「あなたたちが、面白そうなことをしている、とリーボゥディルに聞いたので…」

「リーボゥディルは? 見当たらないみたいだけど」

「スラゥタディルが見ている」

 フラインディルは少し視線をそらした。

「その…、レウインデも来ているようだし危険だから、と…」

 ふーん、と、ジルフーコはメガネの奥から、フラインディルの目を覗きこんだ。またフラインディルは視線をそらす。

「で、今日は、どっちの用事で来たの? フラインディル? それとも、ラクトゥーナル?」

「いや、どっちとか…、そういうことではなくて…、純粋に、興味があるというか、その…」

 フラインディルはあからさまに、狼狽しだした。ジムドナルドとかとは正反対だよなあ、こんなんで、よく、第一光子体(ピスリーニア)の補佐なんかできたな、などとジルフーコは考えていた。

「ま、ゆっくりしてってよ」

 ジルフーコは言った。

「忙しくなったら、あまり相手できないと思うけど、手が空いてそうなときは、いつでも声かけて」

「ありがとう、もちろん、ジャマする気はないんだ。それで、その…」

計画(プラン)はここにまとめてあるから、適当に見て」

 ジルフーコの示した情報キューブの領域に、フラインディルは接続した。

 光子体(リーニア)は情報キューブに直接接続できる。傍から見たフラインディルは、中空のあらぬところを見つめながら、ほぉ、これは…、いや、しかし…、などと勝手にブツブツ言っているわけで、なかなかにジャマである。

 ふと思いついたジルフーコは、何の気なしにフラインディルに尋ねてみた。

「まさか、スラゥタディルに内緒で来たわけじゃないよね?」

 一瞬、フラインディルの結んでいた像がぼやけ、すぐさま原形を取り戻したものの、続いて激しく明滅しだした。

「そ、そんな…、ことは…、絶対、ない…」

「なら、いいけど」

 わかりやすいなあ、とジルフーコは思った。余計なお世話だろうが、ついつい口を出さずにはいられない。

「ボクには、関係ないけど。帰るまでには、言い訳ぐらい考えておいたほうがいいんじゃない?」

 

「ラクトゥーナルが来てますね」

 ダーはそう言ってから、少し考えたようだ。

「フラインディルのほうが良いのかしら?」

「ラクトゥーナルで良いと思いますよ」タケルヒノは答えた「リーボゥディルのことで来たわけではないようですからね」

「すこし、お説教が足りなかったでしょうか?」ダーは不満げだ「それとも第一光子体(ピスリーニア)に言われてきた?」

「違うと思いますよ。第一光子体(ピスリーニア)に頼まれたのなら、ジルフーコじゃなくて、僕のところに来ると思います。レウインデも、今回はただの物見遊山だと思いますね。彼も、宇宙皇帝に言われたときは、ちゃんと僕のところに来ますから」

「レウインデも来てたの?」

「はい」

「困った人たちですね」

「はい」

 ダーはケミコさんのボディを使っているので、もちろん表情などないわけだが、幼稚園の園長先生が、子供たちを叱る様を、タケルヒノは思い浮かべて苦笑した。

「ラクトゥーナルとレウインデが自分たちの興味だけで、やってきたのだとしたら」

 ダーは言ったが、別に彼ら2人のことを思いわずらっているのでないことは、タケルヒノにもわかっている。

「そうすると、宇宙皇帝や第一光子体(ピスリーニア)は、今回のあなたの企てには興味ないということ?」

「興味はあるでしょうが、何をするかはわかっているはずなので、彼らが知りたいのは結果だけでしょう」

「結果がわかるまでには長い時間が必要です」

「だから、今回も、彼らは来ません」

「結果が必要なのではないの?」

「結果というのは、うまくいったか、何をやったかではないんです。誰がやったか? あの2人の興味は、僕がやったかどうかだけですから」

「それで、海を造ろうと思ったの?」

 タケルヒノは笑った。ダーの言わんとすることはわかるが、そうではないのだ。

「海がなかったのが、寂しかっただけですよ。海というか、湖ですけどね」

 ダーの動作が一瞬止まった。それほどに、ダーにとってもタケルヒノの言葉は意外だった。

「あの()たちの言ってたことが、本当だったということ?」

「その噂、僕も知ってます」タケルヒノは重ねて笑った「本当、ではありませんが、かなり近いですよ」

 そして、タケルヒノは笑いながら、小声で付け足した。

「みんなには、内緒ですよ」

「どうしてです?」

「だって」タケルヒノは、はにかみながら答えた「恥ずかしいじゃないですか」

 


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