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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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3つの月(3)

 

「レウインデが来てました」

 ミーティングルームのコンソールで作業しているジルフーコに、サイカーラクラが近づいて来た。

「ああ、いたね」ジルフーコが答えた「ジムドナルドと話してたよ」

「何故、ジムドナルドなのでしょう?」

「いちばん恐くなさそうだからじゃない?」

「他の人はともかく、私は恐くありませんよ」

「そうだね。レウインデが何考えてるかはわからないけど」

 サイカーラクラはジルフーコのとなりに腰掛けた。

「私は励起子体(パウフラニア)です。対重中性子体(レビフォノア)仕様の情報体(リーンファノア)ですから、光子体(リーニア)に優位性はありません」

「もしかして、最近、トレーニングしてるのって、そのせい?」

「なんのことでしょう?」

「違うんならいいよ」

 サイカーラクラは身を乗り出して、ジルフーコが作業中のコンソールの中身をのぞき見た。

「ジルフーコも、惑星に海を造ったりするのが、好きですか?」

 ジルフーコは振り返って、サイカーラクラの顔を眺めた。表情だけでは、サイカーラクラが何を考えているのかはわからなかった。

「好きでも嫌いでもないよ」

 ジルフーコは答えた。

「でも、レウインデの話しを聞いたから、やったほうがいいと思う」

「何故です?」

情報体(リーンファノア)にできないことなら、やっておいたほうがいい」

「どちらの情報体(リーンファノア)です?」

「どっちもだよ。まだ、どっちがタケルヒノの敵なのか、わからないからね」

 サイカーラクラは、いままでの緊張が嘘のように、全身を弛緩させた。励起子体(パウフラニア)とは、そういうものなのだろう。そして、笑んだ。

「ジルフーコは、タケルヒノが、とても好きですね」

「そうだよ」ジルフーコは答えた「サイカーラクラと同じくらいに好きだよ」

 

「レウインデが来てたみたいだな」

 ビュッフェで休憩しているタケルヒノを見つけたボゥシューが、声をかけた。

「ああ、そうだね」とタケルヒノ「ジムドナルドが相手してたみたいだ」

「何しに来たんだ?」

「見学らしいよ。再創世(オレファルスト)、ってレウインデは言ってたみたいだな」

再創世(オレファルスト)? ずいぶん大仰だな」

――大仰じゃないか、確かにそんなもんだ

 言ってからボゥシューは思い直したが、さすがにタケルヒノには言えなかった。

「こういうことは、光子体(リーニア)は、あんまりやらないのかな」

 ボゥシューが、ふと、わいた疑問を口に出した。

「やらない、というより、できないんだろうな」

 タケルヒノはカップにコーヒーを注いで、ひとつは自分に、もうひとつをボゥシューに勧める。

 ありがとう、と、受け取ったボゥシューは、タケルヒノの答えに重ねて質問する。

「どうして、できないんだ?」

光子体(リーニア)は電子機器は扱えるけど、強力なエネルギーを直接操作することはできないんだよ。微小な光と電子の流れを操れるだけだ。ゴーガイヤはかなりの例外で、それでもあんな程度だ。だから、彼は、イリナイワノフや、ビルワンジルに負けてしまって、凄いショックを受けたんだ」

「レウインデは?」

「やればゴーガイヤ程度のことはできるんじゃないかな。彼、器用そうだし」

「リーボゥディルの両親は?」

「母親のほうはそういうの得意だったらしいね。もっとも、情報キューブから拾った話だし、本当のところはよくわからない」

「直接やらなくても、ロボットにやらせれば?」

「それをやったのが第一光子体(ピスリーニア)だけど、ロボットや電子装置を持ち込むのに、宇宙船で胞障壁(セルレス)を超えなくちゃならない。成功率から考えても、第一光子体(ピスリーニア)くらいしかやらなかったみたいだね」

「制御できるエネルギー量を増やそうとした光子体(リーニア)はいなかったのか? ゴーガイヤをもっと強くするみたいな」

 タケルヒノは、ちょっと困った顔をした。

「いたよ。光子体(リーニア)じゃないけど」

光子体(リーニア)じゃない?」

 タケルヒノは、少しの間、躊躇したが、ふっ、と笑んで話しだした。

重中性子体(レビフォノア)がそうだ。宇宙皇帝、彼は無限のエネルギーを扱えるよ。胞障壁(セルレス)が超えられないから、デルボラから出てこれないけど、デルボラの中なら無敵だろうな」

「何でいきなり無限エネルギーになるんだ、無茶だろう」

 ボゥシューは悲鳴を上げた。タケルヒノが言ったのだから正しいのだろうが、それにしたって途方もない。

「次元転換駆動理論がある」

 タケルヒノは無頓着に言う。声にはまるで感情がこもっていなかった。

「彼の操作可能なエネルギー量が、次元転換の最小臨界を超えた時点で、他次元から無限のエネルギーを汲み出せる。無限大で間違いないんだ。だから第一光子体(ピスリーニア)は…」

 ボゥシューは黙って椅子から立ち上がり、踵を返して部屋の入口に向かおうとした。

 その手を、タケルヒノが掴んだ。

「ボゥシュー、聞いてほしい」

「いやだ、聞きたくない」

 必死に手を振りほどこうとしたボゥシューは、つい、タケルヒノの瞳を覗きこんでしまった。

 いつものタケルヒノの目のまんまだった。

「もうすぐみんなにも同じことを話す。でも、最初にボゥシューに聞いて欲しかった」

 ボゥシューは、抗うのをやめた。彼女は、いろんなものを、あきらめてしまった。

第一光子体(ピスリーニア)が僕を呼んだのは、宇宙皇帝との対決に僕が必要だからだろう。確証はないけど、たぶん、そうだ」

 

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