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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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超えられぬ壁(4)

 

「リーボゥディル、もう行っちゃったよ。サヨナラしなかったの?」

 イリナイワノフは、ボゥシューの実験室をのぞきこんで、言った。

「サヨナラも何も、胞障壁(セルレス)超えたら、また来るよ。治療中だからな」

「そっかー」

 言いながら、イリナイワノフはボゥシューの隣に腰掛けた。

「そう言えば、ゴーガイヤも来るんだよね」嘆息をつく、イリナイワノフ「どうしたらいいのかなあ」

「苦手なのか?」

「苦手、ってわけじゃないんだけどさぁ」

 イリナイワノフは、両手で頬杖をついた。

「何しゃべったらいいか、わかんないんだよ」

「しゃべんなきゃいいだろ」

 分注作業を終えたボゥシューはイリナイワノフに顔を向けた。

「トレーニングの相手でもしてもらえば?」

「あたしのトレーニングは人間向けなんだから、光子体(リーニア)がやったって、意味ないよ」

「そうか?」

 ボゥシューは何か考えているふうだ。

光子体(リーニア)に詳しそうなのは、ダーとサイカーラクラだが、聞くんならサイカーラクラのほうが良さそうだな」

「どうして?」

体型(ボディ)の問題だ」

 イリナイワノフの問いにボゥシューが答えた。

「ダーはいま、ケミコさんのボディを使ってる。体を動かすような話だとワタシたちにボディ形状の近いサイカーラクラのほうが、わかりやすいだろ」

 

「トレーニングですか?」

 サイカーラクラは、面白そうに目をパチパチさせた。

「ゴーガイヤと一緒にできるトレーニングですね?」

「うん、そうなんだけど…」

 思いのほかサイカーラクラが乗り気なので、イリナイワノフは面食らっている。

「リーボゥディルは?」

「え?」

「リーボゥディルはトレーニングしないのですか? リーボゥディルも光子体(リーニア)ですよ?」

「え? あ、まあ、しても悪くはないと思うけど…」

「じゃあ、リーボゥディルもですね。わかりました」

 なにか、だんだん、話しがおかしなほうに行っているような気がする。イリナイワノフはちょっとずつ不安になってきた。

「イリナイワノフは、いつトレーニングしますか?」

「毎日、やってるよ。今日も、もうすぐ始めようと思ってる」

「じゃあ、私も一緒に行きます。一緒にトレーニングしましょう」

「何でよ?」

 驚いたイリナイワノフに、不思議そうな顔でサイカーラクラは問うた。

「だって、私がトレーニングしてみないことには、どんなトレーニングが光子体(リーニア)にいいか、なんて、わかりませんよ。私も情報体(リーンファノア)ですし、励起子体(パウフラニア)光子体(リーニア)の違いはありますが、そのへんはなんとかなるでしょう」

 

「どうかした?」

 訝しげにコンソールを覗くジルフーコに、タケルヒノが声をかけた。

「おかしなヤツがいる」

「ああ、いるね」

 タケルヒノは、当たり前のように答えた。

「リーボゥディルたちが出て行く時に入ってきたんだよ。厳密に言うと、リーボゥディルが出るときに、レウインデも出て行ったんだけど、その横をかすめて入ってきた」

「気づいてたんなら、早く言ってよ」

 ジルフーコは言ったが、さほど怒っているふうでもない。

「ああ、ごめん、ごめん」

 タケルヒノは笑った。

「後で言おうと思ってたんだ。ブロックシールドで閉じ込めたところで、忘れてしまってた」

「まあ、この状態なら、どこにも動けないから大丈夫だろうけど。誰なの?」

「えぇ?」

 タケルヒノは急に困った顔になった。

「知らない。ブロックは遠隔操作でやったから、姿は見てないよ。シールド内からは、むこうの声も聞こえないだろうし、誰だろな」

「だいたい見当はつくけどな」

 ジムドナルドが、ソファから立ち上がり、大きく伸びをした。

「俺も、会ったことはない(丶丶丶丶丶丶丶丶)から、よくはわからんが、こんなバカそうなことする光子体(リーニア)は、ひとりぐらいしか心当たりがない」

「まあ、誰でもいいよ」

 タケルヒノは言った。

「このままで、問題ないんだから(丶丶丶丶丶丶丶丶)、ほっといてかまわないだろ?」

「ああ、そうだね」

 ジルフーコが肯くと、タケルヒノは部屋を出て行った。

 タケルヒノの姿が見えなくなると、ジムドナルドがジルフーコに近寄って耳打ちした。

「めずらしく怒ってるな」

「だね」

「どうしたんだ、あいつ。何かタケルヒノを怒らせるようなことしたのか?」

「ザワディに対する扱いが悪かったらしいね。うわさだけど」

「誰のうわさだ?」

「ヒューリューリー」

「なるほど」

 こんどはジルフーコがジムドナルドの耳元で囁いた。

「このまま胞障壁(セルレス)に突っ込むつもりかな?」

「なにせ、忘れてた(丶丶丶丶)らしいからな。忘れてた(丶丶丶丶)んなら、そのまま突っ込むだろ。ほうっとくとか、言ってたけど、たぶん、もう、忘れた(丶丶丶)な」

タルなんとか(丶丶丶丶丶丶)胞障壁(セルレス)で、もつかな」

「さあな」ジムドナルドは欠伸した「最初の光子体(ピスリーニア)は、胞障壁(セルレス)でもなんとか自分を保てた。だが、ラクトゥーナルもアグリアータも無理だった、らしい。たぶん、レウインデもだ」

「逃げ出した?」

「そうだ」

「でも、タルなんとか(丶丶丶丶丶丶)は、逃げられないよ」

「そうだ」

 ジムドナルドは、ごろん、と、ソファに寝転んだ。

「いったい、何しに来たんだろうな?」

 ジルフーコはジムドナルドに尋ねたが、返事はなく、かすかに規則正しい寝息が聞こえるだけだった。

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