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ワンダー7  作者: 二月三月
運命の7人

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12/251

4:3(1)

 

 ラウンドテーブルに7人がついた。

「やっぱり、僕が説明しないとダメかな?」

 タケルヒノは控えめに言ってはみたが、周りを囲む六人の無言の圧力に、観念してそろそろと話しだした。

「まず、最初に、メインエンジンを止めたのは、ジルフーコだ」

 ハイ、と手を挙げるジルフーコ。一瞬、皆、ジルフーコのほうを見たが、すぐにタケルヒノに視線を戻した。

「ただ止めただけじゃ、漂流してるのも同じだから」タケルヒノが続ける「地球と火星の軌道に接点を持つ長円軌道に乗せた。これが二日前」

 タケルヒノは、コホン、と咳をして、最後につけ加える。

「それで、今日、ボゥシューにバレた。おしまい」

「何故、エンジンを止めた?」

 ボゥシューの問いにはジルフーコが答える。

「何でっていうか、試しに止めてみたら、止まっちゃったっていうのが真相に近いな」

「いいかげんだな、何故、黙ってた?」

「黙ってたわけじゃないよ。とりあえず、タケルヒノに相談した」

「何故、黙ってた?」

 ボゥシューは、ジルフーコからタケルヒノに相手を変えた。

「現在の暫定軌道に乗せるのに手間取ってね」たぶん納得しそうにないなあ、という顔でタケルヒノは話し続ける。

「落ち着いたら、相談しようと思ってたんだけどね。ま、いろいろとやることもあるし…」

「何を相談する気だ。行き先はもう決まってるんだろう? どこだか知らないけど」

「まあ、そりゃ、そうなんだけど。もう一回、地球に寄っていくぐらいはできないわけじゃないから…」

――何だって?

 タケルヒノとジルフーコを除く五人が、異口同音に立ち上がる。

「帰れるのか?」端的に、いちばん聞きたいことをビルワンジルが言った。

「まあ、帰れなくはないかな」ジルフーコはしぶしぶ答えた「ヌカ喜びさせても何だから、もう少し確実になってから、みんなに相談しようと思ってた」

「何が足りない?」これは、ボウシューの質問。

「具体的には着陸ポッドとかだな」タケルヒノが答えた「この宇宙船(ふね)では大きすぎて地表に着陸できないからね。いま、ジルフーコと設計してるから、もう少し時間がかかる」

「着陸ポッドなんて大きなもの作れるの?」

「まあ、なんとか。オーダーシステムにも慣れてきたし、そっちは大丈夫そうだけど、他はいろいろ…」

「地球に降りたら、もう宇宙船(こちら)には戻れないのでしょうか?」

「それはない」サイカーラクラの問いをタケルヒノは即座に否定した「僕としては、これはあくまで僕個人の意見だけど、たとえ一度地球に帰ったとしても、もう一度、宇宙船(ふね)に戻ってきてほしいと思っている」

「ずいぶん、控えめだね」イリナイワノフは少し気の毒そうにタケルヒノに言った。

「一生のことだから」タケルヒノは答えた「他人がどうこう言うことじゃないしね。本来なら」

「これが最後のチャンスってヤツか」質問とも独り言ともとれる口調でジムドナルドが呟いた。

「それについては、その通り」ジルフーコが言う「さすがに目標(セルレス)近くまで行ったら、おいそれと地球に帰るなんてことは不可能に近いから」

「それは、そこまで行けたらの話だ」ボゥシューがばっさり切った「実際にはそこまでたどり着けない可能性もある」

「まあ、状況としては、こんな感じだけど」タケルヒノの口調が強まり、その勢いで、皆を静かにさせた「地球に寄るのに関しては、どうしても譲れない条件がある。これだけは僕のワガママを通して欲しい」

 皆、押し黙って、タケルヒノの言葉を待った。

「三人だけだ」タケルヒノは言った「地球に降りられるのは三人まで、それ以上は無理だとあきらめてくれ」

「何故、三人?」当然の疑問を発したのはボゥシューだ。

「単純な算数だよ。ボゥシュー」あらかじめ想定されていた質問に、タケルヒノはスラスラと答える「地球に降りたらトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高い。三人までなら、一人ずつ応援が出せる、3プラス3で、残った一人が宇宙船(ふね)制御(コントロール)できる」

「大丈夫だよー、トラブルくらい一人でなんとかできるさ」

「オマエ黙ってろ。オマエが話したら、みんなタケルヒノが正しいって思ってしまうじゃないか」

「とにかく」タケルヒノは有無を言わさぬ口調で繰り返した「三人だ。三人以上は無理、僕以外のみんなで、誰が降りるのか決めてくれ」

 

 

 

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