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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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超えられぬ壁(1)


「よし、再接続(ドッキング)完了」

 ジルフーコはコンソールから離れると、接続ゲートにつながるエレベーターへと、光子体(リーニア)の2人を誘導した。

宇宙船(ボード)小宇宙船(ダート)のシールドも接続(マージ)したから、ボクらの後ろからついてくるだけでいいよ」

 ラクトゥーナルとアグリアータの2人は、黙ってジルフーコの後を追う。タケルヒノは後ろから2人を追いこし、ジルフーコの隣についた。

小宇宙船(ダート)のビオトープゾーンはどうしようかな」

 ジルフーコは、隣を並走するタケルヒノに声をかけた。

 ああ、と答えたタケルヒノだが、少々バツの悪い顔をしている。

再接続(ドッキング)して宇宙船(ボード)と回転同期したから0・6Gくらいの重力がかかってる。泥と水の層が分離するのに数日かかると思うから、草とかはその後かなあ」

「しょっちゅう、重力切ってしまうんなら、動的平衡はやめて固定してしまう?」

「いっそ、ビオトープやめてしまうのもいいかも。宇宙船(ボード)に造ったほうが大きいし、安定してるから」

「ビオトープはやめてもいいけど、見かけは残したいかな」

「どうして?」

光子体(リーニア)との緩衝地帯(バッファゾーン)にしたい。もうそろそろ、接触なし、ってわけにはいかないんだろ?」

 ラクトゥーナルとアグリアータを宇宙船(ボード)側に送り出したタケルヒノは、その場で少し考えた。

「確かに小宇宙船(ダート)側に作ったほうが、いざというとき切り離せるから、いいと思う。ところで、ああいう風景というか景色については、光子体(リーニア)に何か影響あると思う?」

「パラレスケル=ゼルを見た感じでは、何がしかの影響はあるんじゃないかな。詳しくはダーに聞いたほうがいいと思うけど」

「そのへんは、任せるよ。よろしく頼む」

 いったん話はそこで終わったが、不意に思い出したようにジルフーコが言う。

「ところで、レウインデはどうする?」

「来てるのか?」

 タケルヒノは、ちょっと驚いた感じで声を上げてしまった。

「ゴーガイヤと入れ替わりで入ってきた」

 タケルヒノは少し眉根を上げたが、またすぐもとの表情に戻った。

「レウインデなら自分でなんとかするだろ。ほうっておくさ」

「ずっと、シールド内に閉じ込めておくの?」

「まさか」

 タケルヒノは笑った。

「リーボゥディルの家族が出て行く時には、シールド開けるだろ? たぶん、レウインデはそのへん狙ってるから。いちいち面倒見なきゃならないほどには、彼は無能じゃないよ」

 タケルヒノは踵を返して、小宇宙船(ダート)の居住区画のほうへと足を向けた。

「どこ行くの?」

「ヒューリューリーとザワディを連れに」

 ジルフーコの声に、振り向いたタケルヒノが言った。

「他の3人はともかく、レウインデが来てるんじゃ、あの2人、放っておくわけにはいかないだろ」


「なんか、思ったよりあっけなかったな」

 ボゥシューがダーに言った。

「なんのことでしょう?」

「リーボゥディルと両親だよ」

 ボゥシューの顔には、不満ではないが解せない、といった感の表情が浮いている。

「双方ともに、もっと、いろいろ言うことがあるんだと思ってたが、見つめ合ってるだけだもんな」

「実体があれば抱き合ってたところでしょうけど」

 ダーは器用に型にパテを詰め込んでいく。ケミコさんの作業手でやるのだから、奇跡のようだ。

光子体(リーニア)ですからね。あんなものでしょう」

「でも、嬉しそうでしたよ。3人とも」

「あれでか?」

 サイカーラクラが暢気に言うので、ボゥシューは思わず突っ込んだ。

「私は自分が感情の起伏に乏しい分、他人の感情の発露には敏感なのです」

「でもさぁ、あたしさぁ、これで友だちのお母さん、2人目だからさぁ、ダーとも違うし、どうすればいいんだろう」

 イリナイワノフは、友だちのお母さん(丶丶丶丶丶丶丶丶)に何故かこだわりがあるらしい。

「普通にしてればいいのではないかと」

 サイカーラクラは何気なしに、ぽそりと呟いた。

「普通、って、何言ってんの、サイカーラクラ。それがわからないから、悩んでんじゃん」

「あなたは、2人目だって言いますけど」サイカーラクラはイリナイワノフに反論した。「私は、友だちのお母さんは、初めてです」

「さあ、支度もできたし」

 ダーは冷蔵庫にパテケースを入れて扉を閉めた。

「わたしは、これからあの2人のところに行ってきます」

「あの2人?」

 もちろん、ボゥシューにはあの2人(丶丶丶丶)が誰なのか見当はついていたが、あえて尋ねてみた。

「ラクトゥーナルとアグリアータです」

 ダーは毅然と言った。

「昔からあの2人は考えなしで行動することが多かったのだけど、いまだにこうでは困ります。あなたたちは、優しいから、あの2人に言えないこともあるでしょうが、わたしは別です。経緯はどうあれ、もう人の親になったのだから、いつまでも浮かれていていいわけはないのです」

 ダーは、くるりと旋回すると、モーター音のみを残してキッチンから出て行った。

 こわっ、と思わず、イリナイワノフが呟いた。

 


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