表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/251

光る人たち(6)

 

「で? 何のようだ?」

 不機嫌を顔からぶら下げて、ジムドナルドが尋ねた。

「何って、別にないけどさ。最近、あんまり遊びに来れなかったから。うれしくて」

「あんたを解禁にした覚えはないぞ」

「大丈夫だってばぁ」

 ジムドナルドの冷ややかな対応にも、レウインデはまったく動ずることがない。

「ここに来るときは、ゴーガイヤのモノマネすればいいんだよね。私、そういうの得意だから。オレ、ゴーガイヤ、よろしく。ね、ね、似てるでしょ?」

 ゴーガイヤは、ものすごく困っている。まあ、ゴーガイヤでなくたって、こんなことされたら、困るだろう。

「おーい、ジルフーコ」

 何故か、ジムドナルドはジルフーコを呼んだ。

「そういうことで、いいのか?」

「なんとなく違うような気もするけど、技術的にはそういうことだね」

 音声だけのジルフーコだが、必死で笑いをこらえているらしいのはわかる。

「じゃあ、そういうことだな」ジムドナルドは、ニコリともせずにレウインデに言った「あんた、ここに来るときは、ゴーガイヤのモノマネ必須な」

 とうとう、堪えきれなくなったジルフーコが、笑いながらつけたした。

「じゃ、そういうことなんで、似てなかったら入れないから、そのへんよろしく」

 レウインデは、ちょっとだけ変な顔をしたが、大筋では自分有利と見て、あまり気にしないことにした。

「ザワディは、元気?」

 ニコニコしながらレウインデが聞いた。

「ああ、ザワディなら、そのへんで紐と遊んでたような気がするが…」

「紐って、サイユルの? じゃあ、ザワディ、こっちにいるんだ。わーい」

 ザワディ、ザワディ、と連呼しながら、レウインデは、さっき、ラクトゥーナルとアグリアータが出ていった扉から、小宇宙船(ダート)の別区画にさまよいだした。

「オレ、帰る」

 ちょっと元気のなくなったゴーガイヤは、言いながら緑色のゲートに向かって進みだした。

「おう、また来いよ」

 ジムドナルドが声をかける。ちょっと止まったゴーガイヤは、ジムドナルド、イリナイワノフ、ビルワンジルのほうに顔を向けると、小さく右手を上げた。

「兄貴、姉さん、それにジムドナルド。ありがとう。こんどは、レウインデに見つからないように来る」

「気にすんな、それは、こっちでなんとかする」

 3人がゴーガイヤに右手を上げて答えると、ゴーガイヤは嬉しそうに右手を振って、緑のゲートに吸い込まれるように消えていった。

 

 ジルフーコがゲートを閉じると、ジムドナルドはシールドのスイッチを入れ、念のため扉まで確認しに行った後で、天井に向かって言った。

「今度は絶対にアイツを入れるなよ」

「ああ、大丈夫、大丈夫」

 ジルフーコは軽く請け負った。

「テストだったんで、同調周波数のパターンをかなり甘くしといたんだ。レウインデを遮断するのは、それほど難しくない。そうだな、完全に締め出すのもかわいそうだから、100回くらいモノマネしたら中に入れるようにしとこうか?」

「30回でいい」ジムドナルドは答えた「アイツにそんな忍耐力はないから」

 

「帰ったぞ」

 ボゥシューがミーティングルームに入ると、リーボゥディルが、サイカーラクラとダーにはさまれ、コンソールの前で通信していた。

「あ、帰ってきた」

 振り向いたリーボゥディルが、ボゥシューに言った。

「いま、ママと話してたんだけど、ボゥシューも話すことありますか?」

「ないよ」ボゥシューは答えた「向こうで、やまほど話してきた。遠慮しないで、話したいだけ話せ」

「ぼくも、もういいです。パパもママも、もうすぐこっちに来るみたいだから」

 そして、リーボゥディルはコンソールに向き直り、スラゥタディルに向かって言った。

「じゃあ、もう切るから、あとは、こっちに来てから」

「あ、待ちなさい、ちょっと、リーボゥディル、こら…」

 スラゥタディルの制止も聞かず、リーボゥディルは回線を切った。

「べつにいいんだぞ、話してても」

 ボゥシューは言ったが、リーボゥディルより先にサイカーラクラが話しだした。

「実は、リーボゥディルは、ずっと叱られていたので、嫌になったのではないかと思うのです」

 バツの悪そうな顔で、リーボゥディルは口をへの字に結んでいる。

「何で、リーボゥディルが叱られるんだ?」

 ボゥシューが真顔で尋ねた。

「プラズマシールドに突っ込んで、機能停止状態になったからです。スラゥタディルは、ずっとそれで怒っていました」

「それは、リーボゥディルの親が捕まったりとか、間抜けなことするからじゃないか」

「親というのは、自分のことを棚に上げて、子供を怒るものだから…」

 ダーは、よくわからない一般論でフォローしようとしたが、それに対してサイカーラクラが反論した。

「でも、私はダーに怒られたことはありませんよ」

「それは、わたしがコンピュータだからです」

 ダーはとてもシンプルに答えた。

「コンピュータはそういうことはしないものです」

「コンピュータのことは、ともかくとして」

 ボゥシューは、リーボゥディルに言った。

「あまり理不尽に怒られるのもアレだから、宇宙船(ボード)に来たら、オマエの代わりに、説教しといてやるよ」

「いえ、いいです」

 リーボゥディルは、ボゥシューの申し出を断った。

「どうして?」

「たぶん、こっちに来るころには、ママも忘れてると思うので。あなたに言われて、また思い出されたら困ります」

「ふむ、そうか」

 そのへんの事情は家族ごとに違うのだろうし、あまり余計なことはしないほうがいいんだろうな、とボゥシューは思った。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ