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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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光る人たち(4)

 

「いますぐ散ってしまうとか、そういうことでは、ない」

 ラクトゥーナルの言い方は、まことにもって歯切れが悪い。

「じゃあ、どういうことだ?」

 もちろん、ジムドナルドは、そういうことを許してやるほど甘くはない。

「あたしが悪いのよ、あたしが…」

 アグリアータが言いかけたのをジムドナルドが押しとどめる。

「リーボゥディルを、何故、造ったか、とか、そういうことを聞いてるんじゃない。最初の光子体(ピスリーニア)が元気か? って聞いてるんだ」

「それについては、よくわからない」

「よし、了解した」

 ラクトゥーナルが非常な努力をして、いろいろ考えた挙句の答えにもかかわらず、ジムドナルドは2秒で納得してしまった。

「いいのか? それで?」

 ラクトゥーナルでなくても、このジムドナルドの態度には不安をおぼえる。

「いいよ。だって、最初の光子体(ピスリーニア)のことをよく知ってて、いいかげんなことを言うのが大嫌いなあんた(丶丶丶)が、よくわからない、って言うんだから、誰にもわからんのだろ? 俺はそれがわかればいいんだ」

「それが、何かの足しになるのか?」

「なるなる」

 困惑するラクトゥーナルの顔を見ているだけで、楽しくてしかたがないジムドナルドは、自然と饒舌になる。

「こういうのは、相手があっての話だからな、誰かが俺の知らないことを知ってたら、俺が不利だ。でも、俺も相手も知らないんなら、俺のほうが圧倒的に有利だ」

「どうして、そうなる? どっちも知らないのなら、互角じゃないのか?」

「俺のほうが頭がいいからな」ジムドナルドはここぞと胸を張った「俺が有利だ」

「なるほど」ラクトゥーナルはがっくりと肩を落とした「それなら圧倒的だ」

「それでまあ、よくわからない、って聞いた上で、あらためて聞くわけだけど」

 ジムドナルドは、それまでの大仰な話し方から、一転、夕食の献立でも聞くような調子で、ラクトゥーナルに話しかけた。

「もし、最初の光子体(ピスリーニア)が、散ってしまうようなことがあるとして、どんな時だと思う」

「彼が、宇宙のすべてに興味を失ってしまったときだろうな」

「なるほど、リーボゥディルが生まれる前に、そんなことがあったか」

 ラクトゥーナルとアグリアータは、はっとして、同時にジムドナルドを見た。

 ジムドナルドは何の感情も表に出さず、ただ、捕まえた事実を頭の中で反芻していた。

「君は策士だな」

「俺は頭がいいって言ったろ」

 むしろ賞賛と言って良いラクトゥーナルの言葉を、ジムドナルドはお決まりのセリフを言うだけで流した。

「もう回復はしたみたいだから、気にする必要はないか」

「それもわかるの?」

 アグリアータが尋ねると、ジムドナルドは、ようやく口元を歪めてニヤリと笑った。

「鬱で無気力になってる奴が、俺たちに来てくれ、なんて言わないよ」

 それから、ジムドナルドはタケルヒノにむかって声をかけた。

「さっさとファライトライメンに行って、面倒事を片付けよう」

「話は、そう簡単でもない」

 タケルヒノはコンソールを軽く叩いて、表示された胞宇宙(セルベル)マップを一瞥すると、言った。

「ファライトライメンには直接行ける道がないから、とりあえず別の胞宇宙セルベルを経由しないとダメだ。ダーの調査の結果もまだ聞いていないから、話はそれからだな」

「めんどくさいな」

「しょうがないだろ」

 タケルヒノは、部屋のドアを開け、部分的にシールドを切った。

「どうもお疲れ様でした」

 タケルヒノはラクトゥーナルとアグリアータに言った。

「他から邪魔が入らないようにするには、このまま、小宇宙船(ダート)宇宙船(ボード)に接続してしまうのが、いちばん楽なので、リーボゥディルに会うには、もう少しだけお待ちください。その代わり、小宇宙船(ダート)の中は自由に移動していただいてかまいません。暗号化(スクランブル)回線も使えますから、話だけなら、いますぐでもできますよ」

 ぜひ、お願いします、と、ラクトゥーナルとアグリアータは、タケルヒノに連れられて部屋を出た。

 

「おーい、ジムドナルド」

 入れ替わりで、ビルワンジルがやってきた。

「ヒマか?」

「とても忙しい、いま宇宙の真理である万能理論に肉薄してるとこだ」

 椅子に深々と腰掛けているジムドナルドは目閉じたまま天井を仰いだ。

「じゃあ、手伝ってくれよ。ゴーガイヤと話してるんだが、オレとイリナイワノフだけじゃ、どうにも話がすすまない」

「何だよ、そりゃ。俺は関係ないだろ」

「関係はないが」

 ビルワンジルは白い歯を見せて笑った。

「オマエみたいに、口のうまいヤツがいたほうが、絶対いいと思うんだ」

 ちょ、と、ジムドナルドは目を開いて、椅子から立ちあがった。

「よく考えたら、俺もまるっきり関係ないわけじゃないな。なにせ乗組員(クルー)の中で、いちばん先にあいつと話したのは俺だ。エウロパだったな。そのときも、あまり会話にはなってなかったんだが」

「ありがたい。ま、よろしく頼むよ」

 ビルワンジルはジムドナルドの肩をポンと叩いた。

「宇宙の真理とかのほうは、俺が夕飯まで取ってきてやるから、そっちはまかせとけ」

「おい、逃げるなよ」

 ジムドナルドはビルワンジルの手をつかんで引き寄せた。

「宇宙の真理、いらん。よく考えたら、それほど好きじゃないし、パンにもポテトにも、あわないからな。ダーだって、そんなもの晩飯の材料に持ち込まれたら困るだろ」

 



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