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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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薄暮の御廟(1)

 

「艦長、パラレスケル=ゼルより入電であります」

 ヒューリューリーがそう言うのだが、いったいどこでこんなことを覚えてくるのか、本当に不思議だ。

「ああ、そう、それで何て言ってきてる?」

 タケルヒノも意外とノリノリだ。

「本艦停止の後、最寄りのハッチ前で待てとのことです」

「ドッキングベイは使わせないって?」

「規格があわないそうであります」

「よくわかったよ」

 タケルヒノは減速中だった小宇宙船(ダート)をわずかに加速に切り替え、シールドの出力を上げた。

「速度を上げたら、ぶつかりますよ」

 ヒューリューリーが言った。

「ぶつかったら止まるよ」

「穴が空きますけど?」

「むこうにね」

「開いたらそこが入口ですか?」

「むこうが指定してくれないなら、こっちで選ぶさ」

「当然ですね」

 ヒューリューリー傍の安全バーにキツく巻き付いた。緩衝器に収まっておとなしくしているザワディに言う。

「ザワディ、いよいよ、面白くなりそうです。気を引き締めて行きいましょう」

 ザワディは、何をいまさら、という顔をしていたが、無視するのもどうかと思ったらしく、あおん、と短く啼いた。

 

「いま、凄く揺れたね」

 パラレスケル=ゼルの中、チューブ状の通路を飛翔中のイリナイワノフが言った。

「タケルヒノが突っ込んだんじゃないかな」

 前を行くジルフーコの声がヘルメットのスピーカーからイリナイワノフの耳に入る。

「何で、タケルヒノが突っ込むの?」

「タケルヒノを怒らせたヤツがいるんだろ」

 先頭を行くビルワンジルの間延びした声がヘルメットに響いた。

「タケルヒノは、あれでけっこう沸点が低いからな」

「でも、怒ったとこみたことないよ」

「そりゃあ、普段から怒らせにようにしてるし」

「怒らせようと、思ったこともない」

 パラレスケル=ゼルの内部通路を殿軍(しんがり)で飛ぶイリナイワノフは、ふと、あることに気がついた。

「ねえ、ジムドナルドはどこに行ったの?」

「さあ、ねえ」

 ヘルメットにジルフーコの声。

「リーボゥディルの両親を助けるって言ってたから、そのへん探しまわってるんじゃないかなあ」

「ひとりで?」

「宇宙服に発信機(トレーサー)つけてるから、居場所ぐらいはわかるよ」

「大丈夫なの?」

「ジムドナルドだのタケルヒノのことなんか、心配するだけ無駄だ」

 ビルワンジルが言った。

「むこうはむこうで、何とかするだろ。こっちはこっちの仕事をしよう」

 

「もう元気になりました」

 エネルギーポッドの中から、リーボゥディルが訴えた。

「ジムドナルドと話させてください」

「ジムドナルドは、いま、パラレスケル=ゼルに行ってる」

「え?」

 ボゥシューの答えに、リーボゥディルはとまどいの表情を見せた。

「ジムドナルドだけじゃないな。みんなパラレスケル=ゼルだ。残ってるのはサイカーラクラとダーとワタシだけだ」

 リーボゥディルを落ち着かせるように、ボゥシューは笑んだ。

「心配するな。ちゃんとうまくやってくれるから。アイツらはいつもそうだ。ああ、そうそう、元気になったんなら、もうエネルギーポッドは出ていいぞ。船内は自由に動きまわっていい。ただ、船壁のシールドは以前より強化してあるから、ぶち当たろうなんてバカなことは考えないでくれ」

 

「迷子の子の親を探してるんだ」

 ジムドナルドの声はエネルギー波に変調されて、周囲の空間に拡散する。

 ほとんどの光子体(リーニア)は通り過ぎるだけだが、たまに応じる者がいる。

先駆体(リーンファニディア)なんて、珍しいね」

「そりゃそうだ、胞障壁(セルレス)を超えて来たんだから」

先駆体(リーンファニディア)胞障壁(セルレス)超えるなんてできるわけないじゃない」

「超えられなかったら、ここにいるわけないだろう?」

 数体、様子見に集まっていた光子体(リーニア)は、ジムドナルドの返答を聞くなり、さっと消えてしまった。

――思ってたよりプライド高いみたいだな

 プライドが高いのはかまわないが、現実を直視できないのは困りモノだ、とジムドナルドは思った。

 

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