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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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光の矢(4)

 

 光子体(リーニア)の少年は、ボゥシューに連れられて、ミーティングルームに入ってきた。

 もう体はほぼ元通りとはいえ、部屋の中にいる面子がただものではないので、入ってくるだけでもおっかなびっくりのようだ。

「まあ、そう堅くなるな」

 ボゥシューが光子体(リーニア)を中央の席に座らせた。

「どこで聞いてきたか知らんが、別にオマエを取って食おう、ってヤツはいない、安心しろ」

「ザワディも?」

 少年は恐る恐る、たてがみの生え揃った勇猛なライオンを横目で見つめる。目が離せないようだ。

「ザワディ知ってるのか」

 ボゥシューはちょっと驚いた顔で少年を見る。その顔に向かって少年はまくし立てた。

「みなさんのことは、みんな知ってます。タケルヒノもジムドナルドもジルフーコもボゥシューも…」

「ワタシがボゥシューだ」

「あなたが…」

「顔写真付で手配書が回ってるわけじゃ無さそうだな」

 ジムドナルドが笑いながら言った。

「名前と顔ぐらいは一致したほうがいいだろう。俺はジムドナルド、さすがにこいつは知ってるだろ? タケルヒノだ」

「よろしく」

 おまけで紹介されたタケルヒノが、困った顔で短く挨拶すると、順に皆が名乗りを上げる。

「あたし、イリナイワノフ」

「サイカーラクラです」

「ビルワンジル、よろしくな」

「さすがにヒューリューリーには見えないよね。ボクはジルフーコ」

「私がヒューリューリーです」

 ヒューリューリーは、力いっぱい体を振り回した。

「ダーです」

 ダー? と目の前のサポートロボットに少年は困ったような顔をした。

「ああ、あなたの聞いているのは、そのあたりまでなのですね」

 ダーは言った。

「どう言ったらいいでしょう。第2類量子コンピュータはご存知?」

「はい。もちろん」

「それが、わたしです」

「え? でも」光子体(リーニア)は戸惑いを隠せない「星より大きなコンピュータではないんですか?」

「よくご存知ですね。ちょっと前までそうでしたが、いまは小さいのです」

 光子体(リーニア)の少年は、何か言いかけたが、頭を振って押しとどめた。また、何かを言いたそうにするが、うまく言葉にならないようだ。

「落ち着け」

 たまりかねてボゥシューが諌める。

「ゆっくり、話せばいいんだ。誰も逃げない」

 少年は大きく深呼吸した。光子体(リーニア)には不要な動作だが、生体だったころの名残だろう。

「ぼくはリーボゥディルといいます」

 それは彼のいちばん言いたいことではなかったが、何か、そう言うのがいちばんふさわしい気がして、自然と口をついて出た。

光の矢(リーボゥ)ですか」

 タケルヒノが言った。

「とても良いお名前ですね」

 本当はもっと言いたいことがあったのだ。

 父のこと、母のこと、そしてほかの光子体(リーニア)、そして、そして…。

 もっとよくわからない、いろいろなこと。

 でも、自分の名を言ったときに、それらすべてがタケルヒノに通じたような気がした。

 そして、それは。

 気のせいなんかではなかった。

「とりあえず、自己紹介もすんだことですし、こう人数がいたのでは話もしづらいでしょう」

 タケルヒノは言って、リーボゥディルのとなりに進み出た。

「疲れてませんか?」

「いいえ、全然」

 リーボゥディルには、他の答えをまったく思いつくことができなかった。

「じゃあ、もう少しがんばりましょう。ジムドナルド」

 おう、と答えて、ジムドナルドはソファから立ち上がった。

「僕とジムドナルドでもう少し詳しく話を聞きたい。もちろん、あなたのお父さんやお母さんのことを含めての話です」

 リーボゥディルは、このときやっと、自分の企てが成功したという確信を得た。それをより確かなものにするべく、彼は短く、はい(丶丶)、と答えた。

 

 

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