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ワンダー7  作者: 二月三月
光子体を追え

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光の矢(1)

 

「で、パラレスケルに来たが、どうするつもりだ?」

 ミーティングルームの片隅に置かれたソファ、ジムドナルドは腹ばいで寝そべりながら、右足に巻き付こうとするヒューリューリーを左足でいなしている。

第一光子体(ピスリーニア)の情報が欲しいんだが」

 タケルヒノは浮かない顔だ。

「いくらパラレスケルと言っても、そのへんを飛んでいる光子体(リーニア)を捕まえて聞くわけにもいかないしなあ」

「ここは資源採掘できるほど大きな惑星もないし」

 ジルフーコもあまり乗り気ではなさそうだ。

「資源については、ダーの立ち上げ機(ピスアール)で十分補充できたから、ここで探す必要はないんだよね」

「ダーのほうはどうですか、()はありそう?」

「探索中です」

 タケルヒノの問いにダーは答えた。

「既知の()については、わたしが抜けられるものでないことは確認しています。現在、未知の胞宇宙(セルベル)への()も含めて探索中ですが、しばらく時間がかかります」

「うーん」タケルヒノは大きく伸びをした「ダーの探索が終わったら、ダーの行ける所か、こっちの行きたい所に移動する、ってことで、じっとしてるのが無難かな」

「いいな、それ」

「つまらんぞ、それは」

 同時に発言したビルワンジルとジムドナルドだが、瞬時に分が悪いと悟ったジムドナルドが笑いながらつけたした。

「退屈なのは、いまにはじまったことじゃないからな、ま、俺は紐と遊んでるから、あとは適当にやってくれ」

 ジムドナルドはそう言ってヒューリューリーを蹴飛ばしたのだが、ヒューリューリーは難なくかわした。

 

「おかしいなあ」

 さっきからジルフーコがしきりに首をひねっている。

「どうかした?」

 タケルヒノに聞かれたジルフーコは、コンソールに宇宙船(ボード)のモデルを表示する。

「このビオトープゾーンの上あたりなんだけど、一瞬、プラズマシールドが切られた形跡がある。シールド自体はすぐ復旧してるんだけどね。調べても外壁には以上がないし、隕石がぶつかったとかいうことでもなさそうだ」

「装置の故障ではないんだな?」

「シールド発生装置は問題なく作動してるし、その後もすぐ穴は塞がってるから、強力なエネルギーがぶち当たったとしか思えないんだが」

「攻撃かい?」

「うーん、何とも。それで、ビオトープゾーンの中に、かすかだがエネルギー反応がある」

「ふむ」

 タケルヒノと目があったビルワンジルは、無言で槍をとって、くるりと一回転させた。

「じゃあ、僕とビルワンジルで見てくるから、向こうについたら位置を教えてくれ」

「わかった」

 ヒューリューリーはジムドナルドの足にまとわりつくのをやめて、頭の方にまわった。

「行かなくていいんですか?」ヒューリューリーは体をひゅんひゅん回した「何か起きたみたいですよ」

「俺の出番じゃないよ」ジムドナルドは片目をつぶった「そもそも探しものなんか得意じゃないしな。お前、暇なら一緒に行ってみれば」

「そうですね。行ってみます」

 ヒューリューリーが、するすると2人の後を追う。

 やっと邪魔が入らなくなったジムドナルドは、目を閉じて昼寝をはじめた。

 

 ビオトープゾーンに出た3人は、小川の端にそって歩き出した。

「何を探せばいいんですか?」

 くねるヒューリューリーに笑いながらタケルヒノが答える。

「それが、よくわからないんですよ。ジルフーコは、このあたりだって言うんだけどね」

「見当もつかないんですか?」

「エネルギー体みたいだから、光ってるんじゃないかなあ」

「光ってるんですか?」

「いや、微弱らしいから、あんまり光ってないかもしれない」

「…困りましたね」

「そうですね」

 小川のせせらぎに照明が反射して、きらきらとはぜる。こんな中でかすかに光るものを探すのは難しい。

「ジルフーコに言って、照明を落としてもらうか」

「真っ暗じゃ困るが、もう少し暗いほうが良さそうだな。あ、ちょっと待て」

 ビルワンジルはわずかに揺れる草むらに分け入ると、声を上げた。

「何だ。ザワディか。どうしたうずくまって? 具合でも悪いのか?」

 ザワディは前足をそろえ、いわゆるお座りの姿勢で、鼻をフンフンと突き出している。

 タケルヒノはザワディの鼻先に、淡い光を放つ小さなかけらを見つけた。

「ザワディ、偉いぞ。見つけてくれたんだな」

 タケルヒノはかけらを拾い上げた。

「何ですか? それは?」

情報核(リーンファニム)ですよ」

 タケルヒノは、ヒューリューリーに言った。

「見るのは初めてですか? 僕はこれで2度めだけど。このままじゃ、話を聞くわけにもいかないから、再生してみるしかないんだろうな」

「再生、ですか?」

「エネルギーが極端に不足している状態の光子体(リーニア)なんです。プラズマシールドを突破するのにほとんどの力を使ってしまったんでしょう」

「再生したりして、大丈夫なんですか?」

 ヒューリューリーの体の回転はぶれぶれで、ビルワンジルから見ても、かなり怯えている様子がわかる。

「怖い人じゃないといいですね」

 タケルヒノは笑ったが、ヒューリューリーは返事はしなかった。

 面白いヤツラだな、と、ビルワンジルはあらためて思った。

 

 

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