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東方剣雷録~Another I~  作者: ksr123
第一章 度重なる再会と死闘
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第三話 ~7年目の出会い~

その時、背後からそいつが襲いかかってきた。


「くっ!」


紙一重でそれを躱し、すれ違いざまに首筋を斬る。受け身もとれず落ちたそれは、あっけなく息絶える。


「あ~面倒くさい。もう能力使っちゃおっかな・・・」


などと呑気に独り言を言いながら無尽蔵に襲い掛かる妖をひたすら斬り続ける。

最初は様子見のつもりだったが、敵にそんなつもりはなく、エルミーは休む暇さえ与えてもらえなかった。


「・・・スペカ一枚くらいならいいよね。」


そう言うとエルミーは懐からカードを取り出し高らかに宣言する。


「靭符『サブライトスピード』!」


すると彼女の体はほのかに雷を纏い、静かに輝き始めた。

しかし、それだけだった。

動きが止まった彼女を見てチャンスと思ったのか、無数の妖が一斉に飛びかかる。

そしてその中の一匹がエルミーの首筋に噛み付こうとした瞬間、


「せやああああっ!」


須臾の間エルミーの姿が消え、再び現れた瞬間、周囲の妖は一瞬にして八つ裂きになった。


それを見た妖共は一瞬たじろぐが、またすぐに臨戦態勢へと戻る。

さっきから何匹も仕留めているのに、一向に数が減らない。


「何なのよ、これ・・・」


そう言ってまた躱しては斬っての繰り返しに戻る。妖の数は、全く減っていない。むしろ増えている?と彼女は感じていた。


「はぁ、ふぅ・・・」


気づけばさっきから息が乱れっぱなしだ。休む暇もなく動き続けた上に、さっきのスペルで体力を消耗しているからだ。


「ああ、しんどい・・・。やっぱり7年間のブランクは大きい・・・」


などと呑気に言ってたのが仇となり、彼女は後ろから飛びかかる妖に気付くのが遅れた。


「しまっ―――――!」


気づいて咄嗟に防御する。が、その鋭い爪は容易くエルミーの腕を切り裂く。


「くあっ!」


モロに食らったせいで負傷が激しい。1~2分以内に止血しないと危ない。

しかも、その一撃に気を取られ次の攻撃への対応が遅れる。


「うっ!」


しかし紙一重で避ける、いや、完全には避けきれずに肩口をかする。そして次の一撃も対応できずにかする。


何度もそうしている内に、エルミーの体は裂傷だらけになっていた。


「ううっ・・・」


出血が酷く、目眩がし、まともに立っていられない。そんな中でも妖の数は増えていく。


「もう少し押し込んでおきたかったけど・・・」


そう言うと、エルミーは高らかに2枚目のカードを宣言する。


「磁符『マグネインダクション』!」


その瞬間、彼女の出血が止まる。いや、止まるだけでなく傷口から出た血がまた体内に戻ってゆく。


「これで少しはましになる・・・」


だが、今のスペルでさらに体力を消耗した彼女に妖達を倒すのは難しかった。


いや、里を破壊せずに(・・・・・・・)倒すのは。


つまり、彼女はまだ奥の手を出してはいない。それも、里を壊滅させる程の物を、だ。


「どうしたものか・・・」


このまま命の危険を冒してまで里を守るか、自分の身の安全を考慮して里ごと吹っ飛ばすか・・・、悩ましいところだ。。

その時、ある知り合いの言葉を思い出す。


「ここで死ぬよりはマシ、か・・・」


その知り合いは、どんな時でも必ず最善の判断を下す。時には残酷な結果にもなるが、それでも、最悪の事態は必ず避けていた。


エルミーも、そんなキレ者のことを見習おうと思ったのだ。


「一気に決める!」


そして懐から取り出したるは、彼女の最凶にして最恐のカード。


「電界『我王雷』!」


全身の力をかき集め、そして解放する――――――


いや、開放しようとした(・・・・・・)


しかし、彼女は途中でスペルを中断した。そして咄嗟に別のスペルを宣言する。その表情には焦りの色が濃い。


「靭符『サブライトスピード』!」


そうして、またしても一瞬で敵の包囲網を駆け抜ける。


「やばいやばいやばいっ!」


全力で疾走する。次の瞬間、


「マスタァァァァァァァスパァァァァァァァクッ!」


先ほどエルミーが焦っていた理由はこれだった。魔法の森から小さな光が見えたのだ。その時点でもうすでに彼女は全てを理解していた。


―――――逃げなきゃマズイっ!―――――


その光は瞬く間に大きくなり、里を埋め尽くす。

あまりの衝撃に軽く吹っ飛ばされる。


「あぶなっ!」


咄嗟に受け身を取る。幸い彼女に怪我はなかった。


「ふう・・・って危ないなあ、もう!」


そう言って辺りを見回してみると、里は一瞬で消し炭となり、ただの焼け野原となっていた。

エルミーが呆然とそれを見ていると、森の方から何かが飛んでくる。

それを見てエルミーは「やっぱりか」と思った。


「おおー、これは凄いな。跡形も残ってないぜ」


と他人事のように言って地上に降り立つ。

まず目を引くのは、いかにも魔法使いといった白黒の服。そして同じく白黒の帽子には黄色いリボンがついていた。長い金髪に小柄な体格。それを見てエルミーは叫ぶ。


「危ないでしょっ!魔理沙!」


「うおっ!?」


まさか人がいるとは思っていなかったのだろう。真っ黒に酸化した血に身を包んだ彼女は、完全に夜の闇に紛れていた。


「んあ?誰だお前?見ない顔だが・・・」


「っていうか顔見えるの?この状態で」


「そういやそうだな」


「全く・・・あんたも相変わらずね・・・」


「そもそもお前誰だよ?私のこと知ってるのか?」


「はあ、あんたも忘れてるのね・・・」


そう言って顔の血を拭うと、あらわになった顔を見て魔理沙は驚愕する。


たっぷり5秒は沈黙が続いただろうか。そして魔理沙がようやく口を開く。


「エルミー!?」


「当たり」


「マジか!!」


エルミーと魔理沙が初めに会ったのは香霖堂での事だった。エルミーが外の世界の道具があると聞いてやって来たのだが、魔理沙と霊夢という先客がいた。結局買い物はしなかったが、その日は4人で夕食となった。霖之助の薀蓄を聞きながら、談笑を楽しんだ。ふいに魔理沙が、


「お前、弾幕勝負はするのか?」


と聞いてきた。エルミーは弾幕勝負には自信があり、早速魔理沙と対決となった。結果は1勝2敗。

若干の悔しさを感じながらも、その日はお開きとなった。


それから、2人は友人(ライバル)となった。


エルミーは2人にだけは自分の能力を明かした。

その能力は、「雷を操る程度の能力」。


エルミーは魔理沙には全力を出した。魔理沙も全力を持って応えた。2人が2人、お互いの事が手放せない存在となった。


その矢先、エルミーが「逆」神隠しにあった。


魔理沙は最初は寂しがっていたが、それでも直ぐに立ち直った。けれど、人知れずエルミーのことを思い起こしては涙する日もあった。魔理沙はエルミーの事を忘れようと今まで以上に熱心に魔法の研究に打ち込み、見違える程に強くなっていった。


それから7年。待ち望んでいた再開は、意外な形で訪れた。

魔理沙からすれば、この出来事はただの異変としか感じていなかっただろう。

エルミーも、まさか魔理沙にこの修羅場で出会うとは思っていなかった。


だからこそ、2人とも、念願の再会に心底驚いていたのだ。


「お前、その傷は・・・」


「ごめん、ちょっと休ませて。このケガじゃ喋るのも辛いの」


「お、おう。そうか・・・ってそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?まだ奴等が片付いて・・・」


そう言いかけた瞬間、妖共は火に焼かれた様に灰と変す。


「・・・奴等がどうしたって?」


余裕綽々の笑顔のエルミーに、魔理沙は唖然とする。これほどの実力を持っているのになぜこんな怪我を負ったのだろうか。


「さて、と・・・じゃあ私は休ませてもらうわ・・・」


そう言ってエルミーは気絶する。慌てて魔理沙が抱き抱える。早く手当しないとまずい。


魔理沙は全速力で魔法の森の自分の家へ向かった。

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