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04 お散歩なう!

 どうもこんにちは。私です。今日も元気に甘い台詞大全読んでます。なーんていうとおもったか!!


 実は今日は”彼女”の目を盗んで屋敷からのお出かけですよ!屋敷からちょっとはなれたところにある町にいっちゃうんだから。ふふん私だって一人で歩けるんだからね!



 とかなんとかいってた自分ほんと馬鹿。現在私桂木アヤメはエクソシストに追われています。

 ほんと馬鹿。



 というかなぜばれたし。その辺のひととなんら私って変わりがないんだけど。でもいま追ってきている二人組みは私をみたとたんに目の色をかえて追いかけてきたのである。真っ白な服に身を包みいかにも厳粛なかんじなふたりをみて私も直感したのだ。こいつらがきっとエクソシストってやつらだって。ちらっと見た感じではどちらも男にみえた。”彼女”のパターンがあるから男と断定してしまうのは恐ろしいけどあれはきっと男だ(希望)はっ!そうか男ならば私の日ごろの練習の成果を見せつけてやればいいんじゃん。あれこれ勝ちゲー?むしろぬるゲーよ!!


 そう決まれば行動あるのみ。バッと華麗に振り向いて男どもをみる。一人は20代って感じのちょっとなよっとした優男。もう一人は50代くらいの渋めなおじさま。あれか。刑事みたいに二人一組で行動するとかなんとかっていう制度なのかもしれんな。うむむこれからきっと対峙することになるだろうから”彼女”にエクソシストの情報をもっと聞いておこっと。この前説明受けた時にはトップである王子様にしか目がいかなかったもんね。それよりも今は目の前の二人。この世界にきてから妙に足が速くなった私と二人組みとは知らず知らずのあいだにだいぶ差ができていた。もしかしてこれ逃げ切れた?まあいいやせっかくなんだから私の奴隷一号&二号になってもらいましょうかね!


「ふははははは私の奴隷となるがいいわ」


 まだ距離のある二人にえらそうな態度でふんぞりかえってみた。一回やってみたかったんだよね。


「私の訓練の成果をみよ!ええっとこういうピンチなときにはどんな台詞がよかったんだっけか。僕に毎朝味噌汁をつくってください。あれこれはプロポーズ台詞大全にのってたやつだし、この泥棒猫!!は昼ドラ大全だし、あ!私甘い台詞大全の台詞一個もまだ覚えてないわ!いやいやだってあの本みてると目がすべるんだもん。こう全身を駆け巡る悪寒っていうかなんていうか……」


 自分の馬鹿を再確認していると目の前のエクソシストが懐から本をとりだしなにやら唱えだしている。やばい気がする。なにがやばいのか明確にはわからないけどこれはやばい。うん。


「うひぃぃぃぃごめんなさぁぁぁぁい殺さないでくださぁぁぁぁい!!」


 くるりと半回転しやはり逃げるが勝ちでしょ!なに立ち向かおうとかそんな無謀なこと考えちゃったわけよ己の頭と相談しなさいよ。馬鹿は馬鹿なりに


「にぃぃぃげるがぁぁぁ勝ちぃぃぃぃ」


 両太ももを懸命に振り上げ全力疾走。目指す先はお屋敷……っていやいやそんなところにこの二人を連れてったら”彼女”に絶対つるし上げられる!よかった!馬鹿でもそれは気がついたよ!とにかく逃げよう!逃げたら大丈夫!これでかつる!!


 私はとにかく走った。もうタイソンさんばりの速さで走ったよ。まったくの土地勘のない場所であたりはどんどん暗くなってくるし、後ろからよくわからない光の光線が飛んできたり上から槍が降ってきたりしたけどこれってエクソシストが使える対魔の術ってやつ?光線が軽く左手に当たったとき焼けただれ体の芯から力を奪うような感覚がしたからたぶん間違いはないと思う。あんなのもろに食らったらそれこそ浄化されちゃうわ。あーどうしよはじめは二人組みとのあいだに距離があったんだけど体力の違いからなのか徐々にその差は縮まってきている。攻撃は激しくなるし、追いつかれそうだし、やっぱここで死んじゃうのかなぁ。とくに未練はないけどね。でもここで死んだらきっと、


 とうとう光は貫いた。体の中心を貫いたそれは内部から私を焼いていく。


「っつ、こんな小娘吸血鬼にここまで手間取る、とは、な」


「え、ええほんとうにまだだれの血も吸ったことのない子のようですよ」


 若い方の男の手が私の頭に触れる。気色が悪い。こいつら手からもなんか出ていやがるのか?いや違う。


「ふれ、る、な」


 残った力で男の手を弾く。男はびっくりしたように私をみた。その目はどこかおびえたようで気分がいい。ああ、そんな目は心地がいいな。もっとその目を!


『その目が欲しい』


 私の出した命令に男はびくりとするとその目は焦点を失った。


 すると男は指をそのささくれの目立つ細長い指を躊躇なく自身の両目に突き刺すと一周ぐるりと円を描いた。そうしてとりだした二つの球体をわたしにささげた。気分がいい。これは気分がいいぞ。体を起こしその目玉を握りつぶした。ぐしゃりという音が耳に残る。


「な、おい!ルイ!おま、おまえどうしちまったんだ!」


 ようやくそこで固まったまま動かなかった老いぼれのほうが自我をとりもどしたようだった。こいつはあまりおもしろそうではないな。


「お、おまえ吸血鬼なんかじゃない、な。血の盟約もなしに……い、いいいったいおまえはおまえは」

「お前名は?」


 老いぼれは無視しあかい涙を流し続ける男のほうに私は優しくたずねた。この男は子飼いにしてやってもいい。わたしをきっと楽しませてくれる。ああゾクゾクしてくる。


「ルートヴィヒ・ランブルと申します。マスター」


「なかなか気品を感じる名前じゃないか。ますます気に入った。私の最初の奴隷にしてやる。光栄だろう?」


「光栄至極でございます」


 両目からながれる血に口をつける。すると男は一気に霧散した。まるでそこには何もなかったかのようである。そして私には力がながれてきた。これが奴隷化か。脳内には彼が生きてきた生活、思い出考え方といった情報が、そして体には彼の魔力が感じられる。おもしろい。


「る、るるるるい!!」


「老いぼれ、貴様こいつの叔父のようだな。でこいつはふむ次期伯爵だったのか。でいまはそのための地盤作りや社会経験のためにエクソシストをやっていたというわけか。なかなか優秀だったみたいじゃないか」


 奴隷化したこいつのことはすべてがわかる。


「でもこいつはお前のことを心底嫌っていたみたいだなぁ。ふふふ実の父親だっていうのに」


「る、るいはししししって……」


「ああ。お前が姉に手を出してその結果自分が生まれたのだと知っているみたいだぞ。そんな自分のことも嫌いだと。うむ私はよい主君だからな、おまえに特別褒美をやろう」


 ルートヴィヒの力を寄せ集める。もう私との融合を図ろうとしていたものたちも無理やりに引き剥がし具現化させた。


「マスター。これは……」


「うむ。戸惑っている姿も愛らしいな。なにただ私のなかにあった情報を再構築してやっただけだ。さあその手で討つがいい。憎いのだろう?」


 にっこり笑ってやるとルートヴィヒは顔を真っ赤にしてもじもじしながらも腰の剣を抜いた。私たち魔のものには効かないが人間であるこいつには効くであろう。その構えは素人の私がみても隙がないのがよくわかった。


 愛する奴隷が地面を蹴ると息子が本気だとわかった父親は向かえうってでた。さすが父親だけあってこちらも互角に打ち返してくる。一進一退は続く。どちらも譲らぬ剣さばきにほれぼれするが私の心を動かすのはルートヴィヒだけである。あとでほめておこう。それにルートヴィヒでは長いからこれからはルーイと呼んでやろうと決めた。さてどちらが勝つだろうか。当然ルーイであろうが。


 地面にすわりのほほんと見ていると勝負が決まった。ルーイの剣が父親の体を貫いたのだ。ん?貫いた?なにか忘れているような気がするが……


「こ、の裏切りものが!気高い魔払い師からそのような化け物の下僕になりさがる、と、は!一族の恥ぞ!」


「実の姉を孕ませるのは恥ではないのですね」


 ルーイのつぶやきとともに老いぼれの体は腹から一気に切り上げられぱっくりと死んだ。


「お待たせいたしました。マスター」


「おもしろかったからいいわ」

 

 まるで子犬のようだ。後ろにしっぽまでみえてくる。ご褒美に頭をなでてやるとうれしそうに笑った。愛いやつめ。

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