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第2話

 そして気付くと僕は眠っていたのだった。その間にパパが帰って来た。そしてパパとママはこんな会話をしていた。

「ねぇ、あなた…」

「どうした?」

「奈音がね、幼稚園で友達と遊ばずに絵本ばかり読んでいるらしいのよ。」

「そう…」

「心配じゃない?」

「確かにそれは少し心配だな。」

「少しじゃないわよ。大丈夫かしら。」

「先生に相談してみたら?」

「そうね。明日話してみるわ。」

そうすると会話は終わり、パパとママも眠りについたようだった。


 そして翌朝、僕はママに連れられて幼稚園に行った。今日はどの絵本を読もうかと僕はずっと考えていた。そして幼稚園に着いた。

「それでは奈音をよろしくお願いしますね。」

「はい。」

「あの…少し相談があるのですが…」

「はい、何でしょうか?」

「今、お時間は大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ。」


 そうするとママと先生は僕に聞こえないように話し始めた。僕に聞こえない理由は当然僕が絵本に夢中になるからだ。

「奈音なんですが、いつも絵本ばかり読んでいるみたいで…」

「ええ。奈音くんはいつも絵本を読んでいますよ。」

「お友達がいないのかなって…最近ものすごく不安で…」

「そうですねぇ…お友達とはたまに遊んではいますよ。」

「やっぱりたまになんですね…」

「ええ。」

「このままで大丈夫なのかなと思いまして…」

「奈音くんはみんなと仲良しですよ。」

「はぁ…」

「絵本が好きでいつも絵本ばかり読んでいる子も中にはいますよ?」

「そうですか…」

「絵を描くことが好きな子は、いつもお絵描きばかりしていますし。」

「そうなんですね…」

「少しは安心されましたか?」

「いえ…」

「でもうちの幼稚園ではそれでいじめにあったりすることはありませんよ?」

「それでもやっぱり心配なんです。」

「親御さんからしたらそうですよね…」

「はい…」

「では奈音くんに、お友達とも遊んでみたら?と勧めてみますね。」

「はい。是非よろしくお願いします。」

「あとは何か?」

「いいえ。あとは大丈夫です。どうもありがとうございます。」

「いいえ。それでは気を付けてお帰りください。」

「はい。よろしくお願いします。」

そうするとママは帰っていった。そして先生が僕のところへ来た。きっと僕が友達と遊ぶように勧めに来たのだ。


 「ねぇ、奈音くん。」

「なぁに?」

「たまにはお友達と遊ばない?」

先生はストレートに質問をしてきた。。僕の思った通り、ママと先生の会話は僕が絵本に夢中だったからだ。それを心配してのことだったのだと幼い僕でもわかった。何より絵本が好きなことはそんなにいけないことなのかと思った。友達と遊ぶことが、友達といることが何よりも大切なことなのか、僕は疑問に思っていた。そして僕はこう答えた。

「今日も絵本を読んでいたい。」

「そっかぁ…」

「だめ?」

「お天気もいいし、たまにはお外で遊ぼうよ。」

「うん…」

僕は渋々と絵本を棚にしまい、外で遊ぶことにした。正直、僕はつまらないと思っていた。どうせなら読み飽きた絵本の方が良いと思っていた。そして言われるがまま、僕は外で遊ぶことにした。この日は天気が良く、仲良しの望くんも外で遊んでいた。それ以外の子も外で遊んでいる子が多かった。


 「奈音くん!」

僕を呼ぶ声がした。仲の良い望くんだった。

「一緒に遊ぼうよ。」

「うん。」

僕と望くんはブランコで遊んだ。

「久しぶりだね、一緒に遊ぶの。」

「うん。」

僕は絵本を読んでいたかった。望くんと遊ぶのがつまらない訳ではなかったが、何より絵本が好きだったからだ。

「ほら僕の方が上手にこげるよ!」

望くんはそう言った。

「望くんはブランコ好き?」

「うん。奈音くんは?」

「僕も好きだよ。でも絵本の方が好きなんだ。」

「そうだよね。いつも絵本を読んでいるもんね。」

「うん。」

「そんなに絵本が好きなの?」

「うん。何をするより楽しいよ。」

「僕と遊ぶことよりも?」

「それはまた別の話だよ。」

「別の話?」

「うん。絵本を読むことと望くんと遊ぶのは別でしょ?」

「確かにそうだね。」

そしてその日の幼稚園が終わる頃、ママが迎えに来た。いつもとは違い、どこか不安げな表情を浮かべていた。


 「奈音!」

「ママ!」

「先生、今日もどうもありがとうございました。」

「いいえ。今日は望くんと外で遊んでいましたよ。」

「そうですか…良かった…」

「それではまた明日…」

「はい。気を付けてお帰りください。」

「あ、あの…」

「これからも奈音を出来るだけお友達と遊ぶように言ってもらえますか?」

「ええ。なるべく声をかけるようにはしてみます。」

「すみません。よろしくお願いします。」

「あとは何かありますか?」

「あとは特に…」

「そうですか?心配ごとがあるならご遠慮なく言ってくださいね。」

「はい。どうもありがとうございます。それではこれで…」

「はい。お気を付けて。」

そう言うと僕とママは帰っていった。先生の話を聞いたママはいつもより安心した表情を浮かべ、少し嬉しそうだった。


  いつもの帰り道で僕は帰り際にこう言った。

「ママ…」

「なぁに?」

「新しい絵本が欲しいな。」

「そういえばもうすぐ誕生日ね。」

「じゃあさ、プレゼントで買ってよ。」

「いいわよ。」

そう言うと僕とママは絵本を買いに本屋さんへ行った。


 本屋さんへ着くと僕は真っ先に絵本のコーナーへ行った。しかし、どれもが見たことのあるような表紙ばかりだった。それだけ絵本はたくさん読んだからだ。幼稚園にある絵本や、僕の家にある絵本ばかりだった。僕が色々と見ているとある一冊の絵本を見つけた。それを手に取り、立ち読みをしてみた。



 タイトル「月夜に恋ひとつ」


絵本の中のあの子に僕は恋をした


そしたら世界はその子を三日月にした


絵本の中のあの子に僕は恋をした


そしたら世界はその子を青色にした


灯りが眠る頃 僕は君に会いに行くよ


時計を止めたなら 草臥れたギターと旅に出るよ


星ひとつない空を 君と手を繋いで見下ろしていたら


あっという間に意地悪なお日様が おやすみと言って僕を眠らせた


また…ね


絵本の中のあの子に僕は恋をした


そしたら世界はその子をまん丸にした


絵本の中のあの子に僕は恋をした


そしたら世界はその子を赤色にした


光が項垂れた真夜中 待ち合わせ


右手の薬指でラブレターをそっと海に書いた


星ひとつない空を 君と手を繋いで見下ろしていたら


あっという間に意地悪なお日様が おやすみと言って僕を眠らせた


また…ね


絵本の中のあの子に僕は恋をした


星ひとつない夜に…




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