表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2人の初恋  作者: 夕陽
2人の初恋
9/21

恋は片想いした方が負けver瑠衣





2月13日。

バレンタイン前日、

街はバレンタイン一色だ。

スーパーにしても雑貨屋にしても、

女の子がわんさかしている。

彼が喜ぶ姿を想像しながら

女の子達はチョコの材料にしても、ラッピングにしても真剣だ。






だが、皆が楽しいバレンタインに

なるとも限らない。

彼氏にチョコをあげる子達は

さぞ楽しい日になるだろう。

…だが、

バレンタインにチョコを渡して

告白する子達は前日から

緊張で心が持たないはず。

なかにはチョコを貰ってももらえない子もいる。

悲しい思いをする子も多いだろう。

そう。

チョコレートを作っても、

渡せる事すら危うい瑠衣も

悲しい人の1人だ。






【芦屋くん…。明日チョコいっぱい貰うんだろうなあ。私なんかがあげても。告白なんて私なんか相手にもしてもらえないよね。わざわざふられに行くのは辛い…。………でも芦屋くんに喜んでもらえるように頑張って作ったブラウニー、食べて欲しいな…。】






瑠衣は気持ちを込めて作った

ブラウニーを両手に抱えてとても

悩んでいた。






【…決めた。手紙も何にも書かないで芦屋くんの机の中に入れとこ。そうしたら私があげたってことはバレないよね。】






瑠衣はとにかくブラウニーを

龍磨に渡したかった。

告白にはならないが、

気持ちが少しでも伝わる気がした。

大好きって気持ちを込めて作ったので、

食べてもらえるだけで充分嬉しい。





そうと決まれば明日は早起きだ!

皆がくる前に芦屋くんの机の中に

入れなきゃ!

そう思い、

瑠衣は早めに就寝した。








そして朝の6時。

瑠衣は急いで支度をし、

学校へ向かった。






「えへへ。まだ全然人いない。なんか朝早くの誰もいない校舎って楽しいな。」






瑠衣はC組へと急いだ。

瑠衣はよく芦屋くんを

見てしまっているので

芦屋くんの席を覚えている。

よくこんなにチラチラ見ているのに

目が合わないなあと不思議に思う。






【私、ほんとにストーカーみたい…。席を覚えちゃうなんて。】






そう思いながら龍磨の机の中に

チョコを入れようとすると、

そこにはもうすでに可愛くラッピングされたチョコレートが何個か入っていた。






【…ほんとに人気者だなあ。昨日の放課後とかにでも入れといたんだろうな。】






そして瑠衣は自分の

チョコを入れようとすると、

教室の外からかすかな声が聞こえてきた。

階段を上がっている足音も聞こえる。

もうすぐにこの階に来てしまう。

瑠衣は焦ってC組を出てA組の教室へと

急いだ。


瑠衣は自分の席に着くと

はあーーっと大きなため息をついた。


結果、

瑠衣はチョコを

机の中に入れることが出来なかったのだ。







それからというもの、

瑠衣は机の中に入れるチャンスを狙っていたが、

時間が立つほどに人がどんどん

集まって来てしまった。


授業が始まっても、

休み時間のたびにC組の廊下を歩いた。

だがC組には人が溢れて

入ることも出来ない。

そもそも芦屋くんが机から

全く動かないため、

入れることは完全に出来ない。


下駄箱の中は食べ物だから

ダメだよね…。


そうして放課後になってしまった。

もはや絶望的だ。







【……こうなる運命なのかな。芦屋くんとは縁が無いのかもしれないね。……帰ろう。】






瑠衣は1人、オレンジ色になった夕日を

見て自分の惨めさに情けなくなった。

いつもマイナス思考しか出来ない私。

これじゃ友達も出来ないよね。

はあ…。







学校の最寄り駅に着き、

私は電車に乗った。


すると、ドアが閉まるギリギリで

男の子が飛び込んで来た。

ぜえぜえと息切れしている。

彼は電車に乗るために走って来たみたいだ。

息を整えると彼は前を向いた。

その瞬間、

彼とばっちり目があったのだ。


彼は芦屋くんだった。

ほんの数秒しか目が合ってないのに、

私には時が止まったように感じた。


始めて芦屋くんと目が合えた…。

すごい、嬉しい…。

顔が赤いのがバレないように、

私はずっとうつむいていた。



【うあ~…。嬉しいよおおお。正面から芦屋くんを見れた。芦屋くんの視界に私が入った。う~~芦屋くんかっこいいいい……///】



私は足をジタバタとする衝動を

必死で抑えた。


するといつの間にか私の家の

最寄り駅に着いていた。

私は急いで降りた。

そしてうきうきで家に帰ろうと、

家に続く橋を渡っている時だった。


ガシッ


私の腕を誰かが優しく掴んだのだ。

振り返ると、

そこには、





「はぁ…はぁ…。城内さん、これ。落としてったよ。」





「……へ?」





私の腕を掴んだ人は、

私の大好きな芦屋くんだったのだ。

芦屋くんは、

私が持っていた紙袋を

走って届けに来てくれたみたいだ。

芦屋くんの最寄りの駅じゃないのに。

………優しい…。

うぅ…。好き…。






「……あ。わた、私の名前…。」


知ってくれてたんだ。

私の事を知っててくれてたんだ。

名前なんて、絶対知らないと思ってた





「…うん。城内、城内瑠衣さん。でしょ?知ってるよ…。ずっと前から…。」

「……え?」

「あ!あのさ!えっとそのー…これ。この紙袋城内さんのだよね。はい。」





芦屋くんが私のために

届けてくれた紙袋は、

その紙袋の中には、

芦屋くんに食べてもらいたかった

チョコが入っている。

私は思い切った。





「それ…。好きな人にあげたかったチョコなの。私は意気地なしだから渡せなかったんだ…。でも、でもやっぱり!気持ちを込めて作ったから食べて欲しいんだ…。芦屋くん…。貰ってくれない、かな…?」

「…………。」




芦屋くんが黙り込んでしまった…。

やっぱ迷惑だよね。

だって芦屋くんは好きな人いるんだもんね。

やっぱあの子なのかな…。

でも芦屋くんと話してる女の子は

いっぱいいるし、あの子とは限らないのかな…。





「…あ。ご、ごめんね!いらな…」

「いや…。いる。ありがとう。……城内さんがあげたらどんな男でも嬉しがると思うよ。…好きなやつと、うまくいくといいな。」





芦屋くんはにこやかに、

でもなんだか悲しそうに私に言った。



……私の言い方、間違えちゃったね。

芦屋くんにあげるため作ったって、

芦屋くんが好きだって、

ちゃんと言わなかったから

芦屋くん勘違いしちゃってる…。

きっと他の人にあげたかった

チョコを、渡せないから

貰ったんだと思ってるんだ。

誤解解かなきゃ…。





「…あ、の。芦屋くん。……私の好きな人は…」

「あ!ごめん…。俺電車戻んなきゃだわ。じゃ、俺行くな。…また。」

「あ………。」





芦屋くんは駅へと帰って行ったしまった。

「………ばいばい。」





誤解。

解けなかったな…。

でも、

解いたところで芦屋くんには

想いは伝わらないんだろうね。





こんなに好きなのに。

好きって伝えられない。

うまく話せない…。

ちゃんと話せるようになりたいな。






でも。

芦屋くんにチョコは渡せた。

どんな形でも、

芦屋くんの為に作ったブラウニー、

芦屋くんにあげれて良かった。






今日はいい日だ。

誤解されちゃったけど、

チョコは渡せたし、

目も始めて合ったし、

何より少しでも話せた。





それだけでもほんと、

……嬉しいな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ