俺の初失恋
寒い…。
今年の2月はほんとに寒く感じる。
「なあ…。なんでこんなに寒いんだ。」
俺は教室で机にうつ伏せになりながら
勇太に問いかけた。
「なあ…。なんでなんだ。」
「……龍磨。色男がなんてざまだ。」
先日、俺は勇太に城内さんのことを
好きな事を暴露した。
勇太はすごい驚いていた。
俺が人を好きになる事に対してだ。
勇太は俺が一生恋をしないんじゃないかって心配してくれていたらしい。
恋は出来たな。
……失恋も出来たな。
聞けば城内さんは凄い人らしい。
転校初日に先輩3人、後輩2人に
呼び出され告白されたそうだ。
さすがですね。
まったく知らなかったぜ。
「龍磨ならどんな女でも落とせると思ったんだけどなー。てかお前も男版城内さんみたいなもんだぞ。今年のバレンタイン龍磨チョコ何個もらえんだろーな~。去年はまじでいっぱい貰ってたよな。特にケバい女からはめちゃ多かったよな!」
「なんでかねー。俺勇太みたいに茶髪でもねーのになあ。ピアスのせいかチャラく見えんのかもな。」
「存在がチャラいんじゃね?」
「ひでーな。」
俺はまた机にへばりついていた。
城内さんが楽しそうにあの帽子の
彼氏に話しかけている光景が蘇る。
2人はお似合いだった。
彼氏の方は俺と同じくらいの身長。
して多分かっこよかった気がする…。
城内さんが男に話しかけてるなんて
相当そいつの事が好きなんだな。
……俺にも笑いかけて欲しかったな。
とかまだ思っちゃうのは重症かな。
諦めなきゃいけないのはわかってる。
けど、何度言い聞かせても
知らぬ間に城内さんを探しちゃってるんだ。
そうそう。
城内さんってあんな声なんだな…。
始めて聞いた声が、
彼氏に話しかけてる声だなんて…。
俺はついてないな。
でも…。
城内さんって声もかわいいんだなあ。
って、考えてちゃいけないよな。
「勇太ー…。さみーよ~。心も体もさみーよ~。」
「…んじゃ合コンいこーぜ?」
「行かない。」
「……はあ~。龍磨!失恋なんて誰でもするもんなんだ!俺なんか何回してると思う!?……10回だぞ?!」
勇太は泣きそうな顔をしながら
俺の事をゆさゆさと揺さぶってくる。
勇太はモテないわけじゃない。
見た目も整っていると思う。
……だが勇太が狙う女はいつも
俺を狙ってるらしく、
勇太はふられるらしい。
勇太の事を狙ってる女も
いっぱいいるんだけどな。
たとえばあいつとか、あの子も。
勇太も相当ついてないな。
「りょーま!!おはよ!何話してんの?」
「勇太もおはよ~♪」
「今日も2人ともイケメンだわ~」
すると他クラスの女たちが
俺の席の周りに集まって来た。
なんて名前かも分からない。
毎日話しかけてくる女は違うため、
顔なんて覚えられない。
しかも俺は全然話さないからな。
覚えられるわけがない。
「おっはよー。3人こそ今日も可愛いよ。」
「……はよ。」
勇太は優しく答えているが、
俺はほんとに素っ気ない。
優しく答えるといつまでもいるし、
毎日話しかけてくるようになる。
……それはほんと勘弁だ。
「……あ。」
ふと廊下を見ると、
城内さんが歩いていた。
……。
なぜか城内さんが泣きそうな顔を
している。
男共は気づいてないのか、
わいわいと城内さんを見つめていた。
【……城内さん。なんか嫌な事でもあったのかな。それともなんかされたとか?!城内さんほんと可愛いからよく女子がなんか言ってるんだよな。女子たちにいじめられてないといいんだけど…。】
「おい、龍磨!」
「……へ?あれ?さっきの子たちいないな。」
「さっき帰ってったよ。お前まーた城内さんの事見ちゃってよ。違う子見ないと諦めらんねーぞ?」
「……うるせーな。でも城内さんがなんか、泣きそうな顔してたんだよ…。」
「まじで!!……でも龍磨。女が悲しい事とかあった時、まず誰に相談する?」
「………彼氏。」
「だろ?お前の出る幕じゃねーって。」
「……………だな。」
でも仕方ないんだ。
彼氏がいたとしても、
俺に眼中になくても、
俺はやっぱり好きなんだ。
城内さんの幸せを願えないわけじゃない。
城内さんが、
あの彼氏と幸せならそれでいい。
ただ…。
まだ、好きでいさせてくれ…。