俺が好きになったのは
三ヶ月前…。
俺はいつものように
清々しい朝をむかえていた。
「おれ!おれがちょこだぞ!いちばんえらいおれがちょこたべるんだ!」
「ちーがーうーよー!!うみもちょこたべたいもん!りょーまだってちょこすきなんだから!りくなんかこうだっ!」
ベシッと小さい女の子は
小さい女の子そっくりな
小さい男の子に手をあげた。
「ぴ…ぴぎゃぁぁぁぁあ!!!!うみが、あ、あたまたたいたああああ!」
「ふんっ!りくがひとりじめしよーとするからだもん!…あー!りょーまおきたあー!」
すると小さい女の子は俺に
抱きついてきた。
訂正する。
今日もいつものように
騒がしい朝を迎えていた…。
そう。
こいつらは俺の妹と弟だ。
そして双子。
弟の陸、
妹の海。
昨日5歳の誕生日をむかえたばっかで
昨日の残りのケーキで喧嘩を
していたみたいだ。
「ほんと朝から喧嘩すんなよ頼むからー…。しかも俺そんなチョコ好きじゃねーよ…。」
ふーっと俺はため息をつくと、
「陸。海に叩かれて痛かったな。でもさ~、今陸がやったみたいに海にケーキ取られてみ?お前どう思う?」
「……。うみむかつくっておもう…。」
「だろ?お前は自分がされて嫌な事を海にしたんだ。じゃあ。次はどうする?」
俺はニヤッと笑うと陸は
海の方を向いた。
「お、おれさ!んーと、あのさ!…めんね。」
「え?なんつった??」
「うぅ…。うみ!ごめんね!!」
陸は顔を真っ赤にしながら
海に謝った。
「どうだ海。許してやるよな?」
「うん!うみね、うみやさしいこだからりくゆるすっ!」
海は俺にむけて頭を出している。
こいつ…。
よしよししてほしいんだな。
「海。海は優しい子なんだよな?でも優しい子は人を叩いたりしないんだよなー。あれー?じゃあ叩いといて謝らない海は何だろー。悪い子ー?」
俺は棒読みで演技感丸出しだったけど
海に言った。
「りく!!たたいてごめんね!!」
海はすぐさま陸に謝った。
海はほんと扱いやすいなって
日々思う。
そして喧嘩の後には頭を
撫でてやると機嫌がいつも治る。
ほんと単純だ。
「ほーんと見た目とは裏腹に案外優しい龍磨お兄ちゃんさすがだわ~。私の育て方が良かったのね~。うふふ。」
朝食を作っていた母親が
俺に話しかけてきた。
「見た目とは裏腹ってのは余計だろ。母さんの育て方が良かったっつーなら、こいつらの世話も母さんがやってくれ…。」
「あら!龍磨は私より育て方上手いわよ!それより龍磨!今日は絶対人の役にたちなさい!これからの人生にとてもいいみたいよ!」
「了解~。んじゃ行ってくるわ。」
母は占いが得意なのだ。
うさんくさいよな。
でもこれがほんと母さんの
占いは当たるんだ。
当たりすぎるから普段は
占いの結果を教えてはこない。
いや。
当たりすぎるから俺が教えんなって
言ったのだ。
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
俺がいつも乗っている車両は
1番後ろなのであまり高校生が
乗ってこない。
皆駅に着く時に改札に近い車両に
乗るのだ。
俺としてはジロジロ見られる事が
多いので、改札から遠くても
皆がいない後ろの車両が1番好きだ。
プシュー…。
次の駅でサラリーマン、OL、
様々な人達が乗り込んできた。
そこに俺の前の席が空いていたため、
龍聖高校の制服を着た女の子が座った。
【うわ。何この可愛い人。この世の生き物じゃないだろ。】
するといつの間にか学校の
最寄り駅に着いていた。
俺は立ち上がり電車をあとにした。
「今日は何食うかなー。パン?いやいや今日は白米がいいな。」
俺は昼ご飯を買うためにコンビニに
寄った。
コンビニは駅の真ん前で、
出ようとするとさっきの彼女が
あたふたしている。
【…。あの子学校までの道わかんないのか?あんな子見た事ないし、転校生なのかもしんないな。】
俺は、俺に着いてこいと言わんばかりに彼女の前をスタスタと歩いた。
これで着いてきてくれれば、
道案内出来る。
チラッと後ろを見ると彼女は
案の定着いてきている。
たったった………。
たったった………。
後ろから走っては歩いて、
走っては歩いて、の足音が
聞こえてくる。
やばい。俺歩くの早いか…。
そう思うと俺は彼女の歩幅に
合わせて歩いた。
彼女は静かに着いてきてくれている。
それが何故かとても可愛く思えた。
この子、海と陸みたい。
なんかほっとけないな。
そうして龍聖高校へと
辿り着いた。
彼女はキョロキョロと学校を
見回している。
良かった。と俺は思いながら俺は
校内へと入って行った。
これが城内さんとの始めての出逢いだ。
【そういえば、あの子何年生だろ…。】
俺はその日の帰り、
人の役に立つ事を忘れていた事に
気がついた。
やばいと思い、帰り道困ってる人を
探しては徹底的に助けて行った。
瑠衣の道案内をした事を、
人助けだとは気づきもせず…。
そして毎日同じ電車に乗り、
一週間が経った。
学校の中では彼女に会った事はなかった。
俺は出来るだけ廊下や一年の階、
三年の階も歩いたりした。
だがあの子はどこにもいなかった。
そして彼女を学校内で見かける事を
諦めかけていたその時、
俺は彼女を見かけたんだ。
この日、俺の初恋がはじまった…。
放課後、俺は勇太と理科室へ寄った。
生物の課題を出すためだ。
「おい龍磨!今日俺んちこいよ!母ちゃんがさ、お前呼べってうっせんだよ~!」
「まじかー!行くよ行く。俺ってば勇太の母ちゃんに惚れられちゃったかあ!わりーな勇太くん!いや!お父様と呼んでいいんだぜ!」
俺たちは理科室を出るとともに
騒ぎ出した。
勇太が声でかいから俺まで
つられるんだよな~。
とゆう言い訳だ。
たたっ
足音がする方を見ると
可愛い女の子が図書室に
走って入って行った。
彼女はにこやかに微笑んでいた。
あの子だ。
毎日同じ電車に乗っているあの子が、
笑い顔を見た事もないあの子が、
今俺の前で笑っている。
その時、彼女の笑顔を見たら自分の鼓動が
聞こえてきた。
彼女の笑顔を見れて嬉しくなり、
俺は知らぬ間に笑顔になっていた。
あぁ。
俺はこの子に恋をしてる。
こうして龍磨の初恋がはじまった。