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ガラスの破片  作者: 絋羽
4/6

―心の傷跡、甘い痛み―


「こんにちは。桐生 春さん」

 本を片手に、廊下を歩いていると、ご丁寧に苗字と名前で呼び止められた。

 声のした方を振り向くと、僕が狂ってしまう原因を作った、屋上で会ったあの少年が、僕を見つめていた。


「……この前は、どうも。で、何か?」

 伏せ目がちに、訊ねる。目を合わせることなんて、出来ない。


「いや……大丈夫だったのかなって」

 苦笑する姿が、雅人と重なる。

 ――この人は、嫌だ。

 雅人を思い出し、重ねてしまう。

 頭を右手で掻きながら、照れたように彼は微笑む。



「……ご心配、どうも。では、失礼しま――」

「――待って!」

 僕の言葉をを遮って、彼は声を先程より大きくした。

 廊下を通っている生徒や先生までもが、僕と目の前に居る彼に視線を送っていく。


「……何か?」

 苛立ちを全身で表現するように、僕は腕を組み、上になった右手を小刻みに揺らす。

 僕と彼の間には、軽薄で静粛な空気が流れていた。


「質問を、答えてもらってないから」

 申し訳なさそうに、彼は言う。

 あの“雅人を知っているか?”って質問?


「知っているよ。僕の、好きな人だから」

 手を伸ばしても、届かない彼。

 届かないもどかしさばかりが、僕の心を埋める。


「今俺が、君の事好きだと言ったら君はどうする?」

 ――雅人、見ていますか?

 どんな想いで、君は僕の姿を見ているんですか?

「――それは」



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