第17章 1. 大陸への道
翌朝。
“元・勇者引っ越しセンター”の面々は、王都の北方に設けられた転移陣の広場に立っていた。
大地に刻まれた魔法陣は、古代の術式の残り香を漂わせ、淡い光を脈打っている。
兵士や学者が周囲を取り囲み、魔力の安定を必死に確認していた。
「これが……浮遊大陸への橋ですの?」
ティティが目を輝かせて陣をのぞき込む。
「正確には、人間専用の転移術の名残だ」
ライクが説明書きの板を見ながら答える。
「大陸が降下してきたおかげで、今は距離が縮まり、最低限の転送なら可能になってるらしい。ただし――」
「ニャンフレア号ごとは無理ってわけだな」
ルーンがしっぽを揺らしながら肩をすくめた。
「せっかくの新車、留守番かよ」
「馬車は地上で待機ですわね。……代わりに、わたくしの魔法バッグにおやつを詰め込んできましたわ♡」
ティティは胸を張って小さな鞄を掲げる。
「……真っ先に減りそうだな」
ライクはため息をつきながら、転移陣へと足を向けた。
一行は最小限の荷物を背負い、光の輪の中へと進み出る。
「準備はいいか?」
ライクの問いに、仲間たちはうなずいた。
次の瞬間、転移陣が輝きを増し、地上の景色が揺らめいて消えていった。




