第16章 4. 出発準備のドタバタ
翌朝、センターの庭には荷物が山のように積み上がっていた。
ロープ、保存食、予備の布、浄化用の水瓶。
まるで小さな商隊のようだ。
「ふふん、これで準備万端ですわ!」
ティティが腰に手を当てて胸を張る。
その直後――
「わぁぁっ!?」
ルーンの叫び声。
見ると、彼のしっぽにロープの束が絡まって、逆さに吊り上げられていた。
「おいおい! なんでオイラが荷物にされてんだよ!」
「うふふ……神さまが“猫は荷物に含まれません”って笑っておられます〜」
ミーナはにこにこと手を合わせている。
「助けろよーーっ!」
ルーンが暴れるたび、ニャンフレア号の天井にぶらぶらとぶつかっていた。
ライクは腕を組み、ため息をつきながらその様子を見ていた。
「……おまえら、本当に調査に行く気あるのか?」
「もちろんですわ! わたくしは旅先で素敵なお宝を発見する準備までできてますの♡」
ティティは自分用に詰め込んだ宝石箱(※中身はお菓子)を抱きしめている。
ライクが額を押さえていると、無言のグレンが黙々と荷物を整え始めた。
すると――
ガシャーン!
荷物の下から大きな鍋が転がり出てきた。
ティティの「秘密のおやつ鍋」だったらしい。
「こら! それは出発してからのサプライズ用ですわ!」
「……サプライズしすぎなんだよ」
ルーンがしっぽを振って突っ込む。
ドタバタの中でも、準備は着々と進んでいく。
ロープは巻かれ、荷物は固定され、ニャンフレア号はゆっくりと出発の形を整えていった。
ライクは最後に剣の柄を軽く叩き、空を見上げる。
「……よし。浮遊大陸へ向かうぞ」




